![]() | 降りてくる思考法 世界一クレイジーでクリエイティブな問題解決スキル |
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・江上隆夫
タイトルからは、若干アブナそうなものを思ってしまいそうだが、要するに、何かについて考えた後は、一度そこから離れて、無意識領域のなかで熟成させろということだ。そうすれば、素晴らしいアイデアが「降りてくる」というのである。つまりは、無意識の活用ということだ。
なにしろ人間は、意識の領域よりは、無意識の領域の方がはるかに広い。ある問題が、意識から離れても、意識の中で徹底的に考えられたものは、無意識領域の中で更に考え続けらていくのである。これは特に目新しい考えかたではなく、かなり前から言われていることだ。
本書は以下の3つのパートに分かれている。
Part1.あなたの可能性を最大化する思考法
Part2.脳を小さく使う48のスキル
Part3.降りてきたアイデアを育てて世に出すコツ
まずPart1で述べられているのは、考える際にはこれまでの「ワク組み」を外すことが重要で、考え抜いた後は、無意識を活用せよということだ。Part2は、そのための具体的な考え方の視点が示されている。そしてPart3は、考えたアイデアを、どのようにして世に出していくかということだ。ただし、内容の大部分はPart2で占められているため、本書は、アイデアを考えるための視点を纏めたものといった観がある。
発想法の世界では、古くからオズボーンのチェックリストというのがある。詳細は各自で調べて欲しいが、要するにアイデア出しをする場合には、①転用、②応用、③変更、④拡大、⑤縮小、⑥代用、⑦再編成、⑧逆転、⑨結合といった9つの視点から考えると良い。というものだ。
ところで、本書の副題には「世界一クレイジーでクリエイティブな問題解決スキル」とあるが、Part2の前半の「1.変える」、「2.なくす」、「3.くっつける」、「4.盗む」で解説される24のスキルは、オズボーンのチェックリストの中の項目と対応可能なので、特に「クレージー」という訳でもない。各項目を具体的にどのように使ったら良いかについて解説したものだと思えば良いだろう。
後半の5項目、24のスキルは、前半とは少しフェーズが違うように思える。「5.~だとすると」は、アイデアを考えるための心構え、「6.見えるようにする」は、アイデアを考えるに当たっての方法、「7.調べる」は、アイデアを考えるための調査の方法、「8.捨てる」は、アイデアに行き詰ったときに打開する方法、「9.ちょっとだけをちょっとだけ」は、スモールステップで行きなさいということだろう。
本書の内容が画期的かと問われれば、「否」と言わざるを得ない。アイディアを寝かせることや本書に記されたアイディア出しの視点も、これまで色々な場所で聞いたようなことだからである。ただ、それらを一冊に纏めたハンドブックのようにしたことには価値があると思う。ブレーンストーミングを行う際などには、本書に書かれた視点を使ってやれば、やりやすくなるのではないかと思う。
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※本記事は、「風竜胆の書評」に掲載したものです。