![]() | 地理 2016年11月増刊:シーボルトが日本で集めた地図 |
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古今書院 |
・小野寺淳ほか編
フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトはドイツの人だが、日本とも非常に関係の深い人だ。来日して、日本に関する研究を行う一方で、長崎で鳴滝塾を開き、多くの弟子たちを育成した。
その子孫も、日本にしっかりと根を下ろしている。これには、2つの系列があり、そのひとつは有名な「オランダお稲」こと楠本イネの子孫。イネの娘である楠本高子は、現代の基準に照らしても、とても美しい人で、「銀河鉄道999」(松本零士)のメーテルのモデルとも言われている。
そしてもう一つがフィリップの次男であるハインリヒの子孫だ。彼は日本人と結婚して、その子孫が今に続いているのである。この間テレビを視ていると、たまたまハインリッヒの子孫に当たる方が出ていたので、「日本に子孫がいたんだ!?」とちょっと驚いたことは余談。
ところで、フィリップと地図とは、とても因縁が深い。いわゆる「シーボルト事件」のことだ。この「シーボルト事件」というのは、彼が帰国する際に、国外へ持ち出し禁止の日本地図などが所持品に含まれているのが見つかったというものである。これにより、彼は国外追放、関係者も処分された。日本地図というのは国防に関係するので、国外への持ち出しが禁止されていたのだ。
もっとも、それまでに既に色々と持ち出されていたようで、伊能忠敬が測量した日本地図の写しが、ドイツにあるシーボルトの子孫宅で発見されたという記事を、この夏頃に新聞で読んだ覚えがある。
さて本書であるが、大きく「国絵図」、「世界図・日本図・蝦夷図」、「地域図:都市図」の3つのパートに別れ、地図とその解説を掲載しているというのが基本パターンだ。その後に、「シーボルトが日本で収集した地図」、「シーボルト第一次来日時の収集地図資料」など、全体的な「解説」が収められている。
国絵図などは、今見ると、とても実用的なものとは思えないが、どこか素朴な感じがして、見ているとなかなか楽しい。果たしてこの絵図がどこまで正確なのか、ちょっとネットで比べてみた。昔の国は、必ずしも今の県と対応している訳ではないので、隠岐、淡路、佐渡の3つの島を見比べてみると、全体的な形はまあまあ合っているかなという感じだろうか。
それにしてもこの絵図、何に使ったんだろう、図の中には、村の名前と場所が記されているようなので、年貢を取り立てる時にでも使ったのだろうか。
また、江戸城内の見取り図が入っていたのにはびっくり。フィリップの書いた「日本」第3巻によると、彼が将軍に謁見した際に、城番の家来を買収して手に入れたらしい。発覚すれば、いくら外国人でも只では済まなかったのだろう。何が彼にここまでさせたのかを想像するのもなかなか楽しい。
一つ残念なのは、収められている地図に書かれている文字が小さくてよく分からないことだが、本のサイズを考えると仕方がないのかもしれない。一部分でも拡大図をつけるという方法もあるとは思うのだが。
☆☆☆
※本記事は、「本が好き!」に投稿したものです。