![]() | ディズニー・USJで学んだ 現場を強くするリーダーの原理原則 |
クリエーター情報なし | |
内外出版社 |
・今井千尋
実は私はいただきものということでもなければ、ビジネス書の中でも人材開発に関するものはまず読まない。なぜなら、どうしても精神論になりがちだし、言葉遊びが好きだといったような面が目立つからだ。(戦略や情報通信関係などは割と好きだが)
本書についても人「材」をわざわざ人「財」と言い換えたり、本当の仕事とは「志事」だとか、なんだかよく分からないことが書かれている。
そもそも本書は誰に読ませるために書かれているのだろう。どう読んでも、経営層などのトップリーダーが対象になっているとは思えない。
例えば本書にはこう書いてある。<その理念(経営理念)は、経営幹部から管理職へ、管理職から現場のリーダー、現場のリーダーからスタッフへ伝えられていくはずです>(p79:( )は評者による)これを読むと、リーダーとは管理職より下の職位だということになる。係長というのは、普通は管理職と呼ばれているが、労基法上の管理職にはならないから、結局ここでいうリーダーとは、係長、主任、作業班長、職長クラスということになるのだろうか。ところが、136頁には、「現場管理職のリーダー」という表現がある。「えっ、管理職って本書でいうリーダーに入るの?」と、ちょっと戸惑う。138頁には、経営層、リーダー層、スタッフ層と3段階になっており、79頁の管理職はどこに行ってしまったのだろう。言いたいことは分からないでもないが、どうにも言葉の使い方に一貫性が感じられない。(ちなみに私は、言葉の定義をはっきりしないままに議論を進めるというのが嫌いだ。)
また、6頁には、こんなことが書かれている。<私は「ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンでできていることは、誰でも、どんな企業でも、どんな職場でも再現可能だ」と考えています>
これは、明らかに書きすぎだと思う。例えば工事現場やものつくりの現場で、見学に来たお客様に、テーマパークのスタッフのように明るく大きな声であいさつをしても、私などは、「危ないから、ちゃんと前見て仕事しろよ!」なんて思ってしまう。
また、時給の高い求人が出るとスタッフが辞めてしまうことについては、「共に働く価値」をリーダーが発信することを勧め、「金になびく人はより高い時給の仕事を見つけたら、辞めていく」から引き留めるのは無意味だと言っている。(p221)しかし、人には色々な事情があるものだ。それを「金になびく」と貶めるような表現を使うのはどうだろうか。そんなことを言うのなら、バイトの子にも正社員と同じ待遇を与えればいいじゃないかと思うのだが。結局、やりがいとかいったような精神論で煙に巻いて安いバイト料で人件費を浮かそうということじゃないのかな。
ただ、「伝え方」、「捉え方」によって問題が生じることがあるのは賛成だ。私も、現役時代にこんな経験がある。A4の書類をB5でコピーすることを依頼した。もちろんB5に縮小コピーして欲しいということだ。ところが、返って来たのは、書類の一部だけを等倍のまま、本当にB5でコピーしたもの。この時から、人によっては、「サルでもわかる」ような指示の仕方をしなければいけないというのは実感した。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。