地理 2017年 12 月号 [雑誌] | |
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古今書院 |
最初に断わっておくが、この号はかなり「テツ分」が濃い。テツとはもちろん「鉄道マニア」を表した言葉である。なにしろ特集が「車窓景観の魅力」なのだ。ここで「車窓」というのは、バスや自家用車の車窓ではなく、鉄道列車の車窓のことである。
おっと、一言言っておきたいが、レールの上を走る車両を全て電車というのは都会人の悪い癖だ。なにしろ私の田舎などは電化などされていない。「ええジーゼルですよ。それが何か?」。
ということで、この特集では、色々な人がそれぞれ列車の車窓から見る景観の魅力について語っている。本書を読めば、鈍行列車でゆったりと旅をしてみたい人がかなり増えるのではないかと思う。 最初に「テツ分」が濃いと言ったが、非テツの人にも十分楽しめると思う内容だろう。
こんな一文も紹介されている。寄稿者の一人である中俣均さんが大学生になった年に発刊された本にあったらしいが、<地理学者は列車の客となった場合も、車内で本を読むような態度をとることは望ましくない。移り変わる車窓の景観に地理学者が求めなければならない多くの問題がある>。(p22) 木内信蔵という人の言葉のようだが、地理学者になると、列車でのんびり駅弁を食べながら旅を楽しむという訳にもいかないようだ(笑)。
「アウトリーチのための接点」という記事には、ちょっと気になることが書かれていた。<「理系の生徒は地理を選択しなさい!」とは、よく聞く話です。>、<高等学校でも、文系の生徒はそもそも地理が選択できないカリキュラムとなっていて、理系の生徒だけがセンター試験対策用に地理Bを学ぶケースが多いと聞きます。>(どちらもp86)。私が受験をしたころは、文理に関係なく1年の時に地理を履修させられ、理系の生徒(私も含めて)は地理など受験科目としては完全にアウトオブ眼中だったと思うのだが、時代は変わったということか。
「第14回国際地理オリンピックベオグラード大会報告」の記事もなかなか興味深かった。運動の方のオリンピックの何分の一かでも、マスコミは、頭脳に関係したものについて報道して欲しいと思うのだが。
☆☆☆☆
※初出は、「本が好き!」です。