![]() | 絞首台の謎【新訳版】 (創元推理文庫) |
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東京創元社 |
・ジョン・ディクスン・カー、 (訳)和爾桃子
本書は、カーによるバンコランシリーズの一冊のようだ。バンコランというのは、カーが産んだ名探偵で、登場人物の一覧を見ると、パリ警視庁の魔王という説明がある。「魔王っていったいなんなの?」と思わなくもないのだが、この巻を読んだだけでは、その魔王ぶりがよく分からない。
パリ警視庁の魔王というくらいだから、普段はパリ周辺を縄張りにしているようだが、今回はなぜかロンドンに来ており、そこで発生した奇妙な事件をロンドン警視庁に手を貸して解決している。
その事件とは、ムルクというエジプト人が、ジャック・ケッチに狙われるというもの。彼に絞首台の模型が送られてきたり、彼の運転手が殺されたまま、ロンドンの街を車で失踪したり。おまけに、警察には、ムルクがルイネーション(破滅)街で吊るされたという通報が入る。そのルイネーション街というのはロンドンには存在しない街だ。
ところで、ジャック・ケッチとは、イギリスの処刑人の代名詞。きっと、子供たちが悪いことをしたら、お母さんが「ジャック・ケッチが来るよ」なんて脅かしていたんだろう。某番組の影響で西日本では有名な「ガオーさん」と同じような位置づけだろうか?でも調べてみたら、初代のジャック・ケッチは首を斬るのがあまりにへたくそなので大ブーイングを受けたようだ。でもこれは処刑される方にしたら、かなりの恐怖だろう。何しろ一発で決めてくれないから、何度もやり直しになってしまうので、その分恐怖や痛みを味わうことになる。
ただ、文化の違いのためか、読んでいてもそれほど不気味さは感じなかった。これがたぶんイギリス人ならかなり不気味なんだろう。
それにしてもイギリスは、「ジャック」という名前のついた怪人が多い。本書に登場する「ジャック・ケッチ」もそうだけど、「ジャック・ザ・リッパ―(切裂きジャック)」なんてのもそうだ。そういえば、「バネ足ジャック」なんてのもいた。
まあ、ジャックというのは、イギリスでは男の名前の代表のような扱いだから仕方がないのかもしれない。日本でも変な怪人が出てきたら、太郎とか花子とか呼んでもいいのではと思ってしまう(笑)。例えば、「なまはげ太郎」とか、「口裂け花子」なんて。あっ、そういえば、「トイレの花子さん」というのがいたか。
とまあ、こんな与太話を書いてるくらいだから、私には、寝るのも忘れて貪り読むというようなものではなかった。少し読んでは、退屈で中断し、また読み始めたときは最初の方を忘れているので、また初めからという感じだ。クライマックスに近づいたら、多少は面白くなってきたのだが。
☆☆
※初出は、「本が好き!」です。