文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:世界は変形菌でいっぱいだ

2018-03-13 10:18:44 | 書評:学術教養(科学・工学)
世界は変形菌でいっぱいだ
クリエーター情報なし
朝日出版社

・増井真那

 本書は変形菌について多くの写真とエッセイ風の解説で語ったものだ。一般には、「変形菌」というより、「粘菌」といった方が通りが良いかもしれないが、実は「粘菌」と呼ばれるものには他にも種類があって、変形菌というのはそのうちの真正粘菌のことだそうだ。

 この変形菌というのは面白い性質があり、アメーバーのような変形体と繁殖のための子実体の二つの形態を持っている。本書にも多くの写真が掲載されているが、子実体の場合は胞子をバラまくために、無数のプチプチを形成するのだが、これは苦手な人だと鳥肌が立つよう眺めかもしれない。

 面白いのは、アメーバー状の変形体の方で、まるで動物のように動き回って微生物などの餌を摂取するのである。要するに植物だか動物だかよく分からないもので、そこが面白いという訳だ。ちなみに著者は、変形菌を育てるのに「飼育」という言葉を使っているが、アメーバーの時には動物を育てているような感覚なんだろう。餌としてはオートミルがいいらしい。しかし何でもいいという訳ではないらしいので、結構なグルメである(笑)。

 著者は中等教育学校の4年だそうだ。中学校ではない。5年制の旧制中学ならまだしも、今の中学校は3年制である。中等教育学校とは、中学校と高校を合わせた教育機関のことだ。つまり中高一貫教育を行う教育機関のことである。私立の中高なら昔から事実上はそのような運用をしていたところも多いのであるが、それを正式に制度化したもののようだ。要するに高校1年生ということなのだが、この中等教育学校というネーミング、教育に関するお役人のセンスの悪さを端的に示しているような気がするのは気のせいか。

 それはさておき、この年代でなにか一つのことに興味を持ってつきつめていくというのは素晴らしい。周りもそれに理解を示して応援している。そういった取り組みの積み重ねこそが、理系離れが進んでいるように思える我が国にとって大切なのではないだろうか。

☆☆☆☆

※初出は、「本が好き!」です。

コメント
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