文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:凜と咲きて: 花の剣士 凜

2018-03-03 20:08:43 | 書評:小説(その他)
凜と咲きて: 花の剣士 凜 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

・矢野隆

 「ドブ板長屋」に住む芸妓・凛は、女ながらに剣士としてもかなりの腕だ。持っている三味線は仕込みになっているし、撥といっしょに二刀流を使う。

 しかし、凛の本当の強さはそこではない。仕込みを使うときの彼女は強いことは強いのだが、相手が腕利きだと苦戦する程度のレベルである。ところが彼女に父親の形見の斬馬刀を持たせるともう天下無敵。それまで苦戦していた相手でもあっという間にまっ二つ。

 斬馬刀というのは、とある漫画にも出ていたのでご存じの方もいるだろうが、馬でも切れそうな大型の刀剣である(実際にはそこまで威力はなかったようだが)。とにかく長くて重い。普通の刀が拳銃だとしたら、斬馬刀の威力は大砲のようなものだ。凜は、そんなものを軽々と振り乱して敵と戦うのである。

 彼女の元に転がり込んできた十三郎という浪人。実は筑前の神林藩のお家騒動で父や兄を殺され、彼の命もそこの筆頭家老から狙われていた。その手足となっているのが、本間というドS侍。彼は善人の顔をして凜に近づく。

 凜も、父親が盗賊の親分で、剣術道場を隠れ蓑にしていたようだが、彼女が幼いころに奉行所に捕まってしまった。以後は父の元部下で今は長屋の差配をしている藤兵衛に育てられた。凜は彼のことを父親も同然と慕っている。しかし、凜の父親が隠した金を昔の仲間が狙っており、本間とも手を組んでいる。

 藤兵衛が本間たちに捕まった時に受けた、なんとも残忍な仕打ち。凜は藤兵衛を救いに本間達のもとに乗り込む。凜を助けるため、十三郎も後を追うのだが。

 これは表紙イラストに魅かれて買ってしまった。凜のような美女がその容姿にまったく似つかわしくない斬馬刀を振り回して大活躍。いいですねえ。絵になりますなあ。

 ところで、筆頭家老の子分の本間。凜のような芸妓をしばしば呼べるほど金回りがいいようだが、神林藩というのは1万石の小藩という設定だ。1万石しかなかったら、相当の貧乏藩のはずである。どうしてそんなに金回りがいい?

 また凜の斬馬刀の技は父親から教わったということだが、その父親は彼女が幼いころに奉行所に捕まっている。ということは、凜がまだ幼いころに教わったのか。よく斬馬刀なんて持てたな。

☆☆☆☆

初出は、「風竜胆の書評」です。
コメント
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