江戸は神楽坂を舞台に、名奉行根岸肥前守と大泥棒品川左衛門の知恵比べ。風野真知雄の「耳袋秘帖 神楽坂迷い道殺人事件」(文春文庫)である。
神楽坂では、七福神めぐりが流行していた。といっても、神楽坂にある本来の七福神は、善國寺にある毘沙門天だけなのだが、後の6つは色々な店が七福神の役を務めていて、買い物をして7種類の判子を集めると、最後の店で割引が受けられるという。今でいうスタンプラリーのようなものだと思えば良い。
物語は、それぞれ七福神の名を織り込んだ7つの章から成り立っており、それぞれ七福神の役を務める人物に関する出来事が描かれているのだが、最後まで読んでいくと、品川左衛門のなんとも遠大な計画が明かになる。なんと、この大泥棒は、毘沙門天の宝を狙っていたのだ。この宝というのが意外や意外・・・。
もちろん最後には、品川左衛門は、我らがお奉行根岸さまに完敗するのだが、この盗みのために、これでもかというくらいの色々な布石を打っているのがすごい。一つ一つの出来事に、果たしてどんな意味があるのかを想像しながら読めば、一層この話を楽しめるだろう。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。