文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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半七捕物帳 26 女行者

2022-02-11 08:53:47 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

天一坊事件と言えば、江戸時代の中頃、天一坊と言う山伏が徳川吉宗のご落胤を称して、処刑されたというものである。有名なのはこの事件だが、半七によれば、実は類似の事件は結構あったらしい。

「天一坊のことはどなたも御承知ですが、江戸時代には女天一坊というのも随分あったもんですよ」と、老人は云った。「尤ももそこは女だけに、将軍家の御落胤というほどの大きな触れ込みをしないで、男の天一坊ほどの評判にはなりませんでしたが、小さい女天一坊は幾らもありましたよ。そのなかで、まず有名なのは日野家のお姫様一件でしょう。



 この話も、そのような女天一坊事件を扱ったものである。半七が八丁堀同心・岡崎長四郎からの迎えを受けて行ってみると、茅場町に、京の公家・冷泉為清卿の娘と言う触れ込みの美しい女行者がいて信者が増えているという。しかし、冷泉為清という公家はいないらしい。

 岡崎長四郎や半七が心配しているのは、京の勤王倒幕の勢力と結びついていること。しかし、そんな高尚な話ではなかった。

 そして、葺屋町にある紙屋の炭団伊勢屋の息子・久次郎が、この女行者に夢中になり、行方不明になったあげく、死体で発見される。この女行者の家来と言う触れ込みで、式部と言う男がいるのだが、実はこいつが一番悪い奴だった。しかし、昔は刑罰が厳しいなあ。まあ、今でも少し見習えばいいと思うようなときもあるのだが。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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