本書は、スパイに必要な記憶をどのように強化すればいいのかを記したものだ。モスクワ大学の哲学部長秘書のアンドレイ・ニコラエビッチ・シモノフは、旧ソ連の諜報機関KGBにスカウトされる。本書は、このシモノフのスパイとしてのお仕事を、機密文書とシモノフの日記などにより描いたものだ。そして、合間合間にスパイとして必要な記憶力を養うためのトレーニング方法が挿入される。
本書を読むと、スパイってこんな仕事をしているんだということが分かり、なかなか興味深い。しかし、このストーリーと記憶力トレーニングの関連性はよく分からない。まあ、スパイに記憶力が必要なのは想像できるので、記憶力トレーニングの部分はどこかに纏めても良かったかもしれない。
ただ、記憶すべきものを場所などと関連付けて覚えるというのは、記憶術の芸を披露するには役立つかもしれないが、普通の人にはどれだけ役立つかとなると疑問だ。短期的なことならともかく、長期的に記憶しそれを役立てようとするのは難しいだろうから。でも、一度見た書類の情報をしばらくの間は、なるべく記憶しておきたい向きには役に立つものと思う。
ともあれ、それほど難しいトレーニング法はないので、記憶力が減退したことに悩んでいるような人には記憶力回復法としていいだろう。
☆☆☆