文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:大鴉の啼く冬

2015-11-25 08:16:00 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社


 イギリス本土の遥か北方沖、北海に浮かぶ島々・シェトランド諸島を舞台にした、アン・クリーブスの連作ミステリー、「シェトランド四重奏」。その開幕となるのが、本作、「大鴉の啼く冬」(創元推理文庫)である。

 島の女子高生、キャサリン・ロスが絞殺死体で発見された。美しかった彼女だが、見つかった時には、大鴉たちに顔をつつかれ、片方の目はなくなっているという、なんとも無残な姿だ。いかにも、北のこの島で起きた事件の幕開けにふさわしい設定ではないか。

 犯人と疑われたのは、マグナス・テイトという、軽い知的障がいを持った孤独な老人。彼は8年前に、カトリアナ・ブルースという少女が失踪した際にも容疑をかけられていた。起訴こそされなかったが、閉鎖的な島のこと。それ以来、まるで村八分のような扱いを受けていたのだ。そして、キャサリンは、ある目的から、彼の家に出入りしていた。

 事件を捜査するのは、地元シェットランド署のジミー・ペレス警部と、その上司となる、本土インヴァネス署のロイ・テイラー警部のコンビ。やがて、ペレスの婚約者となるフラン・ハンターは、この巻では、キャサリンとカトリアナの死体の発見者として登場するのだが、彼女の娘キャシーも行方が分からなくなってしまうのだ。3人の少女たちに共通するのは、いずれも名前が”C”で始まること。これらの3つの事件にどのような関係があるのか。

 この作品を読んでいると、障がいのある人に対する偏見の根深さや、一見仲がよさそうに見える女同士の関係の危うさといったようなことを感じてしまう。巻末の解説によれば、シェトランド諸島は、荒涼たる最果ての地であるかのように書かれている。この事件も、そんな場所にふさわしいかのような冷え冷えとしたものであった。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ、「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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