文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:ワンチャンス

2014-04-14 22:01:23 | 書評:小説(その他)
ワン チャンス
クリエーター情報なし
アチーブメント出版


 イギリスのスター発掘のためのオーディション番組、「ブリテンズ・ゴット・タレント」に彗星のように現れたオペラ歌手、ポール・ボッツ。本書は、彼の半生を描いた自伝である。

 オーディション番組をきっかけに成功したと聞くと、いかにも彼が幸運な男のように思ってしまうだろう。しかし、彼の人生は、不運と挫折の連続だった。

 子供の頃、自転車で地下道の壁に激突し、前歯が割れたのを皮切りに、家族全員が乗っていた車が、居眠り運転の車に追突されたりと、これは怪我自慢かと思ってしまうくらい、彼が怪我をしたという話にはことかかない。彼がオーディションを受けた際に、携帯電話ショップの店長をやっていたのも、交通事故による高額な怪我の治療費を払うためだった。

 学校も彼が安らげる場所ではなかった。深刻ないじめを受け、教師たちの中には、彼にいわれのない濡れ衣を着せる者もいた。

 しかし、彼には歌があった。小さいころから聖歌隊に所属し、就職してからは、アマチュアのオペラ劇団で活動を続けた。オペラのトレーニングとイタリア語の勉強のために、休職をしてまでイタリア留学をしたこともある。そんな彼が、人生の中でたったひとつ掴んだ「ワンチャンス」。

 彼がワンチャンスを掴んだのも、それまでの努力があったからだろう。努力しない人間には、幸運の女神は、決して微笑まないのだ。彼の物語は、夢を信じて、一生懸命やっている人にとって、大きな励みになるだろう。

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書評:新薬に挑んだ日本人科学者たち

2014-04-13 08:45:30 | 書評:学術教養(科学・工学)
新薬に挑んだ日本人科学者たち (ブルーバックス)
クリエーター情報なし
講談社


 本書は、「メディカル朝日」(朝日新聞社)に、2011年9月号から2012年3月号にかけて連載した記事を纏めたものだそうだ。タイトルの通り、15種類の薬を例に、日本人研究者が、創薬にいかに貢献してきたかが描かれている。

 新薬の開発というのは、当たるも八卦の世界だ。山師の仕事に似ているところもある。何しろ、どこに創薬の種があるかも分からない。しかしそれでけではない。とてつもない忍耐も必要なのだ。

 例えば、コレステロールを下げるスタチンの開発には、6000種類のカビやキノコを調べたというし、細菌の増殖を抑える抗菌薬のクラビットを創り出すために、1000単位で化合物を合成したというのだから。そんな仕事を、黙々と続けて来た、研究者たちの努力には頭が下がる。彼らの地道な仕事があってこそ、医学の発達があったのだ。本書には、この他、難病、生活習慣病、がん、事故免疫性疾患などの創薬のために、日本人研究者がいかにの努力してきたが語られている。

 しかし、この世界は綺麗事ばかりではないようだ。本書に紹介されているのは、エイズウイルスの増殖を抑えるレトロビルの特許権を巡る応酬の話。共同研究先だった製薬会社は、特許を独占して、薬に高額な価格をつけるという暴挙にでたという。事前の契約がどうだったかは分からないが、欧米式の契約文化には、充分に注意を払わないといけないという教訓だろう。欧米の企業を相手にする場合には、日本式のいい加減な契約書では、絶対にだめなのである。

 ともあれ、どの創薬物語を読んでも、そこには、一遍のドラマになりそうな「物語」がある。本書を読んで、自分もこの道に進みたい若者が増えてほしいものだ。

☆☆☆☆

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書評:野武士のグルメ

2014-04-12 23:05:06 | 書評:その他
漫画版 野武士のグルメ
クリエーター情報なし
幻冬舎


 停年を迎えたおじさんが覚えた、「ひとり飯」の楽しみ、「野武士のグルメ」(久住昌之/土山しげる:幻冬舎)。タイトルや表紙イラストからつい連想してしまう、野武士が食べるような山賊料理を紹介するといったようなものではない。あくまで主人公は普通のおじさんである。

 それでは、なぜ「野武士」なのか。主人公は、定年を迎えて無職である。しかし、同じ無職でも浪人では、傘はり内職などを連想して、どうも格好が悪い。これならかっこいいだろうと、自分を野武士に見立てて、「ひとり飯」の食べ歩きを満喫するのだ。

 彼は、おしゃれなレストランなどには興味がない。お好みは、ちょっとうらぶれたような感じの「食堂」や「居酒屋」。なにしろ野武士だから。

 だから、通常のグルメ漫画のように、いかにも高そうな贅を尽くしたような料理などはでてこない。紹介されているのは、焼きそばやタンメン、アジのひらきといったような庶民的なものが多い。食べた時の反応もいたってクールだ。けっして、周りに天使が舞って、この世の幸福が全部自分のものになったような極端な幸せ顔なんてしない。静かに美味しさを噛みしめるのある。だって、野武士だから。

 この作品は、私のような、少しくたびれたサラリーマン(昔は美少年だったんですが・・・汗)には共感をよぶだろう。しかし、若い女の子などには合わないかもしれない。なにしろ、彼女たちが好みそうな、おしゃれな感じはまったくないのだ。だが、そんなことは問題ではない。おじさんは、誰にも気兼ねすることなく、自分の思うように堂々と食べたいものを食べていくのだ。野武士だから・・・。

☆☆☆☆

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放送大学の新学生証受領

2014-04-11 19:57:06 | 放送大学関係
 仕事帰りに、新しい放送大学の学生証を受け取ってきた。前の学生証が2年経ったので、期限切れということらしい。写真は、以前のままなので、あまり変わり映えはないが、この学生証の期限が切れるまでには、4度目の卒業かな。

 名誉学生を目指そうと思ったこともあったが、新しいコースができたりするので、卒業しても、卒業しても、まだまだ全コース制覇できそうもない。いずれにしても、もう興味があるコースも少なくなってきたし、今のコースが終わったら、どこかほかの大学の通信教育も検討しようか・・・。
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放送大学の桜(広島市を歩く128)

2014-04-10 19:26:37 | 旅行:広島県



 写真は、月曜日に放送大学広島学習センターに寄った際に撮影した桜。もう散り始めていたが、なかなか綺麗だ。




 寄ったついでに、設置されている自販機で、「生茶」を買ったが、なぜかキャップが青い。初めて見たが、ご当地版なのだろうか。いっしょに移っているのは、「とらや餅」というお店で買った桜餅。桜の季節に桜餅というのも、なかなか風流なものである。上品な甘さで、病みつきになりそう。



 もう一つついでに、放送大学近くにある松屋に寄って食べた「筍牛めし」。旗が立っていたので、つい誘われて注文してしまった。



○関連過去記事
タンポポの花(広島市を歩く127)
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書評:スキマの植物図鑑

2014-04-09 22:31:24 | 書評:学術教養(科学・工学)
カラー版 - スキマの植物図鑑 (中公新書)
クリエーター情報なし
中央公論新社


 以前、テレビなどで、「ど根性野菜」というものがよく話題になった。その野菜は大根だったり、人参だったりと色々な種類があるが、要はコンクリートの割れ目やアスファルトの隙間から芽を出して逞しく育っている野菜たちである。

 野菜だったから目を引いたのだろうが、これを植物一般に広げるとそう珍しいことではない。その気になれば、自分の身の回りでも、結構見つけることができるだろう。この「スキマの植物図鑑」(塚谷裕一:中公新書)は、そんな植物の写真を110も集めたものだ。

 上に、結構見つけることができると書いたがこれを110種類集めるとなると、さすがに大変である・写真には、そんな環境にも関わらず、綺麗な花を咲かせているものも多く、見ていていじらしくなっている。

 面白かったのは、トラックの荷台から生えていたアメリカフウロ。なぜ、こんなところにと思うのだが、ほんの僅かでも、生育できる条件が整えば、植物は立派に育つことができるのだ。だから決して彼らは「ど根性」を出している訳ではない。本来植物とは逞しいものなのである。

 眺めていると、彼らの逞しさに元気をもらえるような気がする。これを持って、ちょっとその当たりを歩いてみただけで、色々な発見がありそうだ。

☆☆☆☆☆

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小郡桜

2014-04-08 19:12:55 | 旅行:山口県


 これは、新山口駅、旧名小郡駅の在来線口に咲いている小郡桜。ヤマザクラの変種だそうで、綺麗な八重咲きの花が咲いている。山口市指定天然記念物のようだ。まだ樹は小さいが、このまま大きく育てば、さぞかし見事な風景になるだろう。




 これは新山口駅の売店で買った、ご当地茶の「小野茶」。山口県宇部市の小野というところで栽培されているお茶だ。あまり知られていないが、山口県はお茶の産地でもある。




 最後に、新山口駅の新幹線のホームの待合の窓から在来側を眺めた風景。
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書評:海外で働こう 25人のアブローダーズ

2014-04-07 08:00:00 | 書評:ビジネス
海外で働こう 世界へ飛び出した日本のビジネスパーソン
クリエーター情報なし
幻冬舎


 アジアを中心に海外ビジネスを積極的に進めている25人の若き経営者の物語、「海外で働こう」(西澤亮一:幻冬舎)。

 我が国は、長い不況に苦しみ、少子高齢化でマーケットは萎無一方。最近は、アベノミクスの影響で、見かけ上経済が上向きになっているように見えるが、その実情は、エネルギー政策に腰が定まらないため、膨大な量の国富を海外に垂れ流し、政府財政も多赤字。苦し紛れに消費税を上げてはみたものの、所詮は付焼刃的療法。逆に経済に与える影響の方が心配される。

 こんな我が国の情勢ではあるが、その一方で世界はますますグローバル化していく。これからビジネスにおける活路を見出すとしたら、もう海外しかないだろう。特にアジアはこれからの成長を考えると、極めて有望なマーケットである。

 当然のことながら、海外進出に当たっては、その国とWin-Winの関係を目指す事が必要である。本書に登場する人々の語る、ビジネスを通じて、その国にも貢献したい、その国との架け橋になりたいといった志は素晴らしい。

 ただ、若干気になったのは、アジアでの人件費の安さについて触れていた人が何人かいたことだ。コストは経営において重要なものではあるが、いまアジアの国は伸び盛りである。将来人件費が安くなくなったら撤退するのだろうか。そうあからさまな言い方ではないものの、衣の下から鎧が覗いているような気もする。

 もちろん、経営とは二律背反、すなわち白か黒かで決められるようなものではない。しかし、進出先に貢献しようと言うのなら、ここまで考えた長期的な戦略があっても良いのではないだろうか。事業進出を通じて、その国が発展するお手伝いをする、それこそが、本来のWin-Winだろう。

 ともあれ、アジアは今元気である。アジア諸国とビジネスを通じて、架け橋になりたいという志のある方には、大いに参考になるだろう。

☆☆☆☆

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書評:沼地のある森を抜けて

2014-04-05 09:07:23 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
沼地のある森を抜けて (新潮文庫)
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新潮社


 梨木香歩の「沼地のある森を抜けて」(新潮文庫)。本書は、以前放送大学の面接授業「微生物学の基礎と応用」を受講した際に、講師の方が発酵に関する参考文献として紹介されていたたので、興味を持ったという訳である。

 確かに、発酵のことや粘菌のことなど、興味深いモチーフが織り込まれて、微生物学的な目で見れば、なかなかためになる内容だろう。しかし、小説として読んだ場合は、なかなか奇妙な話である。いわゆる「ヘンな本」に分類しても違和感はないだろう。

 この物語の中心となるのは「ぬか床」だ。それもただの「ぬか床」ではない。主人公の久美の家に先祖代々伝わる「ぬか床」なのだ。久美の母親の死後、下の叔母が引きとっていたが、その叔母の死により、久美が「ぬか床」を管理する事になってしまった。

 ヘンなのは、その「ぬか床」からが人間が湧いてくるということだ。いつの間にか「ぬか床」の中に、卵のようなものができて、それが人になるらしい。久美の両親も、「ぬか床」を預かっていた叔母も、どうも「ぬか床」のせいで死んだようだ。正に呪いの「ぬか床」。こんなものが実際に家にあったらいやだろうな。しかし、全体を流れる雰囲気は、恐怖感など微塵もなく、むしろコミカルでさえある。

 最後は、この「ぬか床」のルーツである島に、「ぬか床」を返しに行くことになるのだが、このあたりは、生殖ということに関する哲学的な雰囲気さえ感じさせてくれる。

 それにしても、作者は、「ぬか床」ひとつで、よくこんな珍妙な話を作り上げたものである。その想像力には脱帽だ。

☆☆☆☆

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書評:サラリーマンの本質

2014-04-02 18:45:20 | 書評:ビジネス
サラリーマンの本質
クリエーター情報なし
文芸社


 著者は、常々次の3つのことを不思議に思っていたという。「①サラリーマン向けの本は、時代と共に著者は変わっても、その内容、構成がほとんど変わっていない」、「「ああしなさい」、「こうしなさい」方式の指導が本当に機能しているのか」、「③なぜ「営業そのもののやり方・考え方」を記述した本がないのか」

 本書「サラリーマンの本質」(綾小路亜也:文芸社)は、著者のそんな問題意識から生まれたものである。3つめ疑問については、タイトルからは、少し異質な感じを受けるが、著者がずっと営業畑を歩いてきたことによる。

 植木等が、「サラリーマンは気楽な稼業」と歌っていたのはもう半世紀も前のこと。今の職場には、どこにもそんな牧歌的雰囲気はなく、現実のサラリーマンは、悩み苦しんでいる。本書は、そんなサラリーマンや組織が救われるように、現実的な「解」を探しに行こうとする。

 確かに、読んでみると色々と示唆に富むことが書かれている。例えば、トラブルが多いのは、「問題並列解決型」の組織だというのだ。このような組織だと、抱えている問題が片付かないままに、次から次に新たな問題が増えていく。普通なら、重要な問題から片付けろといいそうなところだが、著者は。まず簡単な問題から解決して、身軽になることを勧めている。この辺りも通常のビジネス書とは一味違うところだろう。人間の特性として、あまり多くの問題を抱え込むことはできない。まず数を減らせというのは理にかなっていると思う。さらに、現場の指導は3つだけで良いとか、サラリーマンは「Aグループ」、「Bグループ」、「Cグループ」に分けられるといったような興味深い話が続いていく。

 私はあまり、経営者やコンサルタントが書いたようなビジネス書は読まない。面白くないうえに精神論的なものも多いからだ。朝は一番に会社に行って静かなうちに仕事を始めようとか、夜は一番最後に帰れなどと書かれていると、もうこいつはだめだなと思ってしまう。本書は、サラリーマンとしては成功した部類に入るだろう著者が、サラリーマン目線で書いた、そんなビジネス書とは一線を画するものである。サラリーマン諸君は一読しておいて損はないだろう。

☆☆☆☆

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