文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:虚構推理

2017-11-11 09:49:02 | 書評:その他
虚構推理 コミック1-6巻 セット
クリエーター情報なし
メーカー情報なし

・(漫画)片瀬茶柴、(原作)城平京

 本書は、城平京による同名小説のコミカライズ版にあたる。ヒロインは、「ひとつ目いっぽん足のおひいさま」と妖や幽霊たちからアイドルのように人気の、岩永琴子という少女だ。その名の通り、右目は義眼、左足は義足である。彼女は、11歳の時に妖たちに攫われて、彼らの知恵の神になってくれと頼まれた。知恵の神になるためには、ひとつ目一本足でなければならない。琴子は妖たちの知恵の神になったために、右目と左足を失ったのだ。

 かってこれほどの異形を抱えたヒロインがあっただろうか。でもその姿は、とっても可愛らしい美少女なのだ。義眼も義足も彼女にはまったくハンデにはなっていないし、知恵の神というくらいだから頭も切れる。ただし、ヘタをすれば中学生扱いされるくらいにちっこいことだけは、コンプレックスになっているようである。でも、正真正銘のお嬢様で、結婚すれば、もれなく土地家屋などの資産付、就職の世話もできるらしい。

 そんな彼女が定期的に通っている病院で出会ったのが、桜川九郎という青年。琴子は、九郎に一目ぼれするのだが、残念なことに、彼には年上の同じ大学に通う弓原 紗季という彼女がいた。ところが、ある事件がきっかけで九郎は、紗季と別れてしまう。それを知った琴子は、見境なしに主人公に求愛するようになるのだが、それがなんとも面白いのだ。

 実は、九郎は、未来視のできる「くだん」という妖怪と、不老不死になる「人魚」の肉を食べさせられたために、この二つの能力を備えている。ただし、未来を視るためには、一度死ななくてはならないというちょっと厄介な力だ。妖怪の肉を食べたために、九郎は妖たちの目には、とても恐ろしい姿に映るようである。でも琴子にとってはイケメンの部類に入るらしい。この作品は、九郎と琴子の二人が怪異に挑むというものである。

 1~6巻までで二人が挑むのが「鋼人七瀬」という怪異。鉄骨の直撃事故で、顔がつぶされて死んだアイドル七瀬かりんが、顔のない亡霊となって現れ、手にした鉄骨で人を襲うというのだ。二人は、警察官になった九郎の元カノの紗季といっしょに、この事件に挑むのだが、タイトルの「虚構推理」というのは、この「鋼人七瀬」との対決のやり方から来ているのだろう。この場面は、まさに作品のクライマックスといってもいいのだが、本当にすごい。

 エピローグでの、九郎のセリフがなんともいい。

「不死身の僕とともにいるのはコノハナサクヤヒメじゃなくてイワナガヒメじゃないといけないと」と言う九郎に、「イワナガヒメはぶさいくだったから家に返されたんですよ」とちょっとおかんむりの琴子。これに対して九郎は、「でもお前は花より綺麗だから僕はどこにも返していないだろう」だって。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:ペンギン・ハイウェイ

2017-11-07 11:45:06 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA / 角川書店

・森見登美彦

 主人公のアオヤマ君は、とってもヘンな小学4年生だ。何しろ、いつもノートを持ち歩き、何でも研究の対象にしてしまうのである。小学生の割にいつもヘンに冷静で、いじめっ子たちにひどいことをされても、まったく動じない。おまけに「相対性理論」の本まで読んじゃうというすごい子供なのだ。

 ストーリーは、アオヤマ君と同級生のハマモトさん、ウチダ君が、彼らが住む街に突然現れたペンギンの秘密に迫るというもの。ちなみに、ハマモトさんも「相対性理論」の本を読んだらしい。彼女もやっぱりすごい子供である。

 そして重要人物は、アオヤマ君が通っている歯科医院のお姉さん。彼女は、ペンギンを作り出す不思議な力を持っていた。アオヤマ君たちは、お姉さんの研究を始めるのだが、アオヤマ君、お姉さんの力だけではなく、おっぱいの方も気になっているようだ。何しろ、おっぱいが気になる年ごろである。

 ところで、アオヤマ君が父親から教わったという問題を解くときの三つの考え方というのがなかなか興味深い。この考え方は、色々な問題を解決する際に汎用的に使えるものだと思う。小説の内容自体はモリミーの作品らしく、そこかしこで笑えるユーモラスなものだが、どんなものからでも学べるものがあるというのが私の持論。皆さんも参考にされると良いだろう。

□問題を分けて小さくする
□問題を視る角度を変える
□似ている問題を探す

 作者は、農学部で大学院修士までを京大で過ごしているので、理系的な思考が強いと思われる。アオヤマ君のやっていることって、完全に理系研究者なんだよな。果たしてアオヤマ君は、ペンギンの謎を解き明かすことができるのか。乞うご期待(笑)。

※初出は、「風竜胆の書評」です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:世界一ハードルが低い! 1日1時間らくらく起業術

2017-11-05 11:16:06 | 書評:ビジネス
世界一ハードルが低い! 1日1時間らくらく起業術
クリエーター情報なし
ぱる出版

・清水和希

 「1日1時間で年収2000万」。そんないい商売があるのかと思ったら、要するに情報商材を売るというもの。その内容は、「プチサク経験」だそうだ。「プチサク」というのは、ちょっとした(プチ)、成功(サクセス)のようである。「彼女をつくる方法」でも「ダイエット正攻法」でも「競馬必勝法」でもいいらしい。

 しかし、どんなやり方でも売れる商品が作れるわけではない。本書には、こうやったらいいというノウハウが沢山詰まっているように思える。

 気になったのは、プチサク経験というのは、あくまでその人個人の体験である。そこには、「まぐれ」だとか「たまたま」といった要素が入り込んでいる可能性もあるので、他の人が同じやり方でやっても、必ずしもうまくいくとは限らない。だから同じやり方を試す場合でも、あくまで自己責任でというのが大原則だろう。

 それにしても、まさかこんなものが売り物になるとは思わなかったのだが、最近はマニュアル全盛文化。こんなところにも、自分の頭で考えるより、人に考えてもらった方が、楽だという風潮が出ているのかもしれない。

 私なら「情報商材」など、まず買わないだろうと思うが、買う人もいるんだと、その驚きがかえって新鮮だった。この内容は、自分にはまったくない視点ということでなかなか興味深い。

☆☆

※初出は、「本が好き!」です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:カテゴリーキング

2017-11-03 10:15:18 | 書評:ビジネス
カテゴリーキング Airbnb、Google、Uberはなぜ世界のトップに立てたのか
クリエーター情報なし
集英社

・アル・ラマダン、 デイヴ・ピーターソン、 クリストファー・ロックヘッド、 ケビン・メイニー、 (訳)長谷川 圭

 「カテゴリーキング」とはなんだろう。本書によれば、ビジネスにおいて「それまでにない新しいカテゴリーを創り」、「そのカテゴリーの中でトップに立ち」、「その座を維持し続ける」ことのようだ。本書は、「カテゴリーキング」になるにはどのようにすればよいのかが説かれている。

 「カテゴリーキング」になることこそ、そのビジネスを大きく発展させるための秘訣だ。確かに、どのようにカテゴリーを創りだすのかということは、その事業の発展性に大きな影響を与えられるだろう。

 このカテゴリー創造に失敗した例として、すぐ頭に浮かぶのが、電力会社がかって参入したアステルというPHS事業だ。PHSは簡易型携帯と呼ばれて、携帯電話のカテゴリーに入っていたのだが、「簡易型」では普通の携帯に勝てる訳はない。いかにも商売のヘタな電力会社らしいが、結局どこも撤退という羽目になってしまった。要は、カテゴリーをうまく設計するということがいかに重要かということだろう。

 しかし、カテゴリーをつくって安心していてはいけない。次にPOV(ポイント・オブ・ビュー)をつくるという作業が待っている。POVとはカテゴリーに関する物語であり、事業を進めていくための戦略ともなるものだ。

 その次に行うのが、モビライゼーション文書の作成ということだが、実は、このモビライゼーション文書というのがよく分からない。なんとなく想像はつくのだが、本書を読んでいても、ググってみてももうひとつはっきりしないのである。この辺りは翻訳書の限界と言えるかもしれない。この辺りは、もっと訳注という形で解説を入れて欲しかったと思う。
 
 ともあれ、本書の通りにすれば絶対にうまくいくという保証はないが、それでも成功の確率はかなり高くなるのではないかと思う。もちろん、成功しても、社会の変化や技術の進歩に合わせて、カテゴリーの中身は変えていく必要があるのは言うまでもないだろう。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:伝説の天才柔道家 西郷四郎の生涯

2017-11-01 09:23:50 | 書評:小説(その他)
伝説の天才柔道家 西郷四郎の生涯 (平凡社新書)
クリエーター情報なし
平凡社

・星亮一

 尾道で寺巡りをしていると、浄土寺からそう遠くないところに西郷四郎の像があるのに気付く。西郷四郎は講道館創成期の四天王の一人で、小説姿三四郎のモデルになった人物でもある。「西郷の前に山嵐なく、西郷の後に山嵐なし」と言われた必殺技「山嵐」の使い手として、数々の伝説を作り上げてきた。

 西郷四郎は、会津の出身だ。元々の名前は志田四郎だが、元会津藩筆頭家老の西郷頼母の養子になったことから西郷姓を名乗るようになる(もっとも四郎は頼母の実子であるという説もあるようだが)。西郷家は、会津で藩主に継ぐ名門だったが、四郎の生まれた時代が悪かった。

 時は明治。会津は戊辰戦争の敗者であり、朝敵という扱いで、会津出身の西郷には色々な苦労があったようだ。本書はそんな西郷の生涯を、当時の時代背景、関連する人物の話なども織り込んで描いたものだ。あれだけ有名な人物でありながらも、彼に関する書はそれほど多いとは言えない。そんな四郎の生涯を表した本書は、それだけで価値があると言えよう。

 ただ、残念なことに、あまり文章がうまいとはいえない気がする。もし私に校閲させてくれれば、かなり指摘したいところがあるのだが。

 ところで、西郷得意の「山嵐」だが、片方の袖と襟を掴んで背負い投げのように投げると同時に、相手の足を刈るという技のようだ。四郎の身長は、わずかに5尺すなわち154㎝(身長は本書による。153㎝説もあるが、人間は朝晩で身長が変わるので、あまりこの辺りは気にしても仕方がないと思う。要するに小柄な人物だったということだ。)しかなかったが、必殺の山嵐で大男をポンポンと投げ飛ばす。正に「柔よく剛を制す」だ。今の服を着た相撲とあまり変わりばえしない柔道とは大きな違いだろう。また今の柔道のルールでは、片襟状態を6秒以上続けると反則になるらしいから、山嵐が実戦で見られることもほぼないだろうと思う。

 西郷四郎の人生は、正に波瀾万丈と言っても良いが、晩年は持病の悪性リウマチに苦しめられたようだ。尾道に像があるのも、彼が病気療養をしていた地で、終焉の場所でもあるからだ。

 彼のような豪傑も、病には勝てなかった。彼の墓は、晩年を過ごした長崎市にある。また師であった加納治五郎は、四郎に講道館六段の段位を追贈したという。


☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする