正しい本の読み方 (講談社現代新書) | |
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講談社 |
・橋爪大三郎
昔からたくさんの本を読んできたが、こういったタイトルの本を見つけるとつい手を出してしまう。読んでみると、賛成できる部分と、ちょっと自分とは違うなというところがあるのはいつものことだ。
本書に書かれているのは、本の選び方、本の読み方など。まずどういった本を選ぶかについてだが、本はネットワークを作っているので、その構造が分かれば、読むべき本、読まなくても良い本が分かるという。しかし、これは本を読むことを商売にしているいわゆる学者とか研究者と呼ばれる人の読み方だろう。私のように、興味の向くままに、あらゆる分野の本に手を出している者にとっては、本の作っているネットワークなんて全然興味がない。
本の読み方だが、印をつけたり線を引いたり、書き込みをしたりといったようなアクションを行いながら読むことを勧めている。著者が故小室直樹氏の本を借りた時、その本は色々な色で塗りつぶされて総天然色になっていたという。私も同じようにマーカーで色を塗ったり、付箋を貼ったり書き込みをしたりといったアクションをしながら読んでいるのだが、確かにただ読むだけの時よりは、内容が頭に入りやすくなるような気がする。また、著者は、あんまり腹が立った時には欄外に「アホ」と書いたりするとのことだが、実は私も似たようなことを・・・(笑)。
ところで、本書には特別付録として「必ず読むべき「大著者一〇〇人」リスト」というのが付いているのだが、人文・社会系に偏っているので、これについては大いに異論がある。例えばアインシュタインの「相対性理論」などは岩波から出ているのだが、リストには入っていないのである(もっともあれは必ずしも読みやすくないので、通常の相対性理論の教科書を読んだ方がいいかもしれない)。
もうひとつ気に食わないのが、どうもマルクスに対して好意的な印象を受けるところだ。ただ、マルクスが資本論を書くにあたってのモデル構築で、どのような考えで書き、何を捨てたかということが書かれているので、それがそのままマルクスなんて読まなくてもいい理由になっていると思えるのはある意味皮肉か。人文社会系の人間には、未だに未練がましく、マルクスに対して一定の評価をしている人が多い(かっての学生運動の残り火?)ようだが、私は理工系なので、まったく評価してない。むしろ世界の現実をみれば、害毒しかたれ流していない気がする。
笑ったのは、入門書の効用を謳ったところ。講談社現代新書には入門書がごっそり入っているというので、高校生や大学生の本棚には、講談社現代新書がずらっと並んでいなければならないと書いてあったところだ。ちょっと出版社に対するリップサービスが過ぎる?まあ、最近は学生が本を読まなくなっているので、そういった本棚が増えるのは悪いことではないだろうが。
☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。