文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:理科系の読書術 -インプットからアウトプットまでの28のヒント

2019-04-10 12:17:17 | 書評:その他
  本書は、京都大学で地球科学を教えている鎌田さんによる読書術。読書術に理系や文系があるのかとも思ったが、どうもアウトプットに重点をおいた読書術のようだ。鎌田さんによれば、京大でも本の読み方を知らないと悩んでいる学生がいるようだ。

 「大学受験を終えたばかりの彼らは、本の読み方をこれまでどこでも教わっていない。」(pⅲ)というのだが、なんでも教わらないとできないというのは、小さなころから塾や予備校でお受験に励んで来た弊害だろうか?

 本書は大きく二部に分けられ、第Ⅰ部は「苦手な人のための読書術」、第Ⅱ部は、「仕事を効率よく進めるための読書術」となっている。アウトプットを重視しているのは主に第Ⅱ部である。

 本を隅から隅まで読む必要はないといったり、入門書などを活用するというようなことは良く聞くのだが、特に面白いと思ったのは「2:7:1の法則」だ。二割の本は人生の幸福への切符を手に入れたことになり、七割は、丁寧に読めばそれなりのものを与えてくれる。そして、どうしても、自分に合わない本が1割はあるというのだ。もし不幸にして友人から貸されたような場合が1割に入る本であった場合には、内容には一切触れず、「いやぁ、こういう世界もあるんだね」と言って返せばいいらしい(p31)。

 ビジネス書を読むような場合には、読む必要がないところをどんどん省いていけばいいという(p33)。だとするとビジネス書には中身がスカスカのものがあるので、読むところが残らないものも出てくるだろう(笑)。ああ、この場合は1割の方に入れればいいのか。

 著者は理系的な考え方の特徴は何かと問われて、それは分からないことはひとまず棚上げしてブラックボックスとして扱うというやり方だと述べている。しかし、文系でもよく知らないことはこうなりがちだ。文系が科学に関することを述べる時は無意識にこれになることが多いのではないだろうか。

 そして、「多読と速読」の違いについて「速読には目的があり、多読には目的がない」(p76)と述べているが、私の考えは違う。速読とは手段であり、多読とは結果なのである。だからこの二つを並べて語るのは論理的におかしいと思う。

 ともあれ、本を沢山読まないといけない人には参考になることも多いと思う。でも、小説なんかを楽しみながらたくさん読みたいという人には向いていないかもしれない。 
 
☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評;ヒトでなし

2019-04-08 09:24:37 | 書評:小説(その他)
 <俺は、ヒトでなしなんだそうだ。>(p10他)


 主人公は尾田慎吾という男。下の娘を亡くしたことがきっかけで、妻には離婚され、職場は頸になり、住むところも無くなった。一時景気が良かったのだが、今は借金塗れの高校時代の同級生・荻野常雄の持つマンションに転がりこんだことが、ドラマの幕開けとなる。ある日、荻野のところに闇金の取り立てがやってくる。ところが鍋屋というチンピラが兄貴分の江木を刺殺したことから、ストーリーは意外な方向に進んでいくのだ。


 なぜか、荻野は、自分の祖父・湛宥が住職をしている山寺に死体を捨てに行く。行動を共にするのは、尾田と、彼が跨線橋で出会った塚本祐子という女性。そして鍋屋。


 ところがこの寺というのが、色々訳アリの人物の集まる場所であり、住職の湛宥というのがとんでもない破戒坊主なのだ。


<とんだー破戒僧だ> と呆れる尾田に、


<破戒してない僧がおるなら会ってみたいものだわ。>(p391)


と答え、こんなことも言う。


<俺はな、出家して、この寺で、もう何十年も、人でなしになるための修行をしている>(p416)


 迷いがあるから人間なのだ。迷いを脱して、悟りの域に入る。それは人を超えた境地。つまりは「ヒトでなし」になるということなのだ。解脱ということは、こうなのかもしれない。しかし尾田の場合はもとから「ヒトでなし」なのである。娘の死はそれを自覚するきっかけになっただけのようだ。そんな彼に、湛宥は、<これで伝法灌頂は済ませたことにする。・・・(中略)・・・今からお前が阿闍梨だ。>(p771)と告げる。


 実は尾田の娘の死に関しても大きな出来事があるのだが、ネタバレになるので、どんなことかは本書を読んで確認して欲しい。


 京極夏彦さんの作品には仏教を取り扱ったものが結構ある。この作品はそんな京極さんの宗教観が現れているようで、極めて興味深い。

☆☆☆☆

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

美祢駅の駅舎カードゲット

2019-04-07 09:54:57 | 旅行:山口県

 写真は昨日寄ったJR美祢駅。厚狭駅と長門市駅を繋ぐJR美祢線の真ん中あたりにある駅だ。

 そして、駅行内には、「MINEにぎわいステーション」というものがある。ここでは美祢ダムのダムカードと美祢線の駅舎カードというものを配っている。もらうには、そこに行ったという写真を提示する必要があるので、ダムカードは無理だったが、美祢駅の駅舎カードをもらった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

みね桜まつり

2019-04-06 17:15:27 | 旅行:山口県

 今日は、「みね桜まつり」の日なので、市の中心部に買い出しに行ってきた。昨年は行ったときはもう桜は散っていたが、今年は少し桜が遅いためか、満開でとてもきれいだった。

 

   出店も沢山出ており、結構な人出だった。ちょうど昼時だったので、近くにあるザ・ビッグに行って、そこにあるREDKING BURGERで長州バーガーセットを食べる。ここは以前たしかBGCという名前だったと思うが、名前が変わったようだ。この長州バーガーにはさらに上があり、KING長州バーガーという。店で何が違うのかと聞いたら、長州バーガーは合いびき肉を使っているのに対して、KING長州バーガーはBeef100%ということらしい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:マンガでわかる 伝説の新人 20代でチャンスをつかみ突き抜ける人はここが違う!

2019-04-06 09:48:46 | 書評:ビジネス
  本書は、新人時代にチャンスをつかんで突き抜ける人となるための心構えを漫画とそれを補足する文章で示したものだ。

 この本の主人公は野口美由希という新人女性。希望に燃えて、株式会社ウェルマーケに入社したにだが、現実はなかなかうまくいかない。そんな彼女にアドバイスを与えるのが叔父で一流ビジネスマンの三木功一。そして新人たちに課せられた第一の登竜門である「新人対決プロジェクト」。果たして、美由希たちのチームは、対決プロジェクトを制すことができるのか。

 漫画化されているので、それほど時間をかけずに、ささっっとポイントを掴むことができる。学びには4つの段階があり、その最終段階は、「意識しなくてもいつでもできる」、たった1%でも相手の期待値を超えれば強い印象を与えることができるという101%の法則など参考になることも多い。

 しかし、ちょっと気になる箇所もある。これは多くのビジネス書にもあるのだが早朝出社を勧めている場面がある(p74)。出社したら普通は仕事に手をつけるだろう。要請されていないのに、朝早く出てサービス残業をしろということだろうか。それとも早朝出勤するだけで、全く仕事はしないというのだろうか。

 また同じ部の先輩社員なる杉谷美和子に、書類をドサッと渡され、明日までに商品名のダブりがないかチェックしてくれと仕事を押し付けられている。ちょっとした頼み事ならいいと思うのだが、書類をドサッと渡されるような仕事の割り振りは本来は管理職の役目だ。これでは人事評価もまともにつけられない。この会社の管理職は仕事をしていないのだろうか。

 上述のように、気になる部分もあるが、是々非々として読めば、新人の参考になることも多いのではないかと思う。 
 
※初出は、「風竜胆の書評」です。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

故郷の桜

2019-04-05 10:11:49 | 旅行:山口県

 これは、故郷の川沿いに植えてある桜だ。去年は帰省した時にはもう桜が散ってしまっていて、見ることができなかったのだが、今年はちょうど満開の桜を見ることができた。種類は一般的なソメイヨシノだ。

 こちらは、近くにある桜。葉が先に出ていたのでソメイヨシノではない。桜は自家不和合成が強く、同じ遺伝子の花粉では結実しない。ソメイヨシノはある意味みんなクローンのようなものなので、ソメイヨシノの花粉がいくらついても実はならない。でも近くに別の種類の桜があれば、花粉さえもらえばソメイヨシノでも実がなるはずだ。しかし、実がついているのをあまり見たことがないということは、花粉を運んでくれる虫がいなくなったということだろう。現に鳥は見かけたが、桜の蜜を求めてくるような昆虫は見かけなかった。昔は普通の桜でも実が沢山なっているのを見たものだが。(ただし、さくらんぼのように食べられないし、大きくもない。)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:”文学少女”と美味しい噺(レシピ) 1、2

2019-04-04 13:44:41 | 書評:その他
“文学少女”と美味しい噺(レシピ)  (あすかコミックスDX)
(絵)日吉丸晃、(原作)野村美月、(キャラクター原案)竹岡美穂
角川書店(角川グループパブリッシング)
 

 野村美月の代表作ともいえる”文学少女”シリーズからいくつかのエピソードを拾い出してコミカライズしたもの。本編の方を先に読んでおくと、このエピソードはあそこにあったとかが分かるので、作品を一層楽しめると思う。

 内容は、中学生のとき、覆面美少女作家としてデビューした井上心葉(♂です)と、本を食べちゃうくらい文学が好きな文学少女天野遠子の物語。本編の方はかなり重い話も多いのだが、こちらの方は、二人のラブコメ的な要素の強いものとなっている。

 特に笑ったのは、折り鶴の話(1巻Recipe2)。赤い紙で折り鶴を折って名前をつけている遠子に、悩みがあるのかなと同情した心葉だが、実は赤点の数学のテストだったというオチ。「赤点と友達になってどうするんですか そんなんだから永遠に赤点のままなんですよ」の心葉の科白に思わず吹き出す。

 紹介される作品は、読んだことがないのがほとんどだが、本書を読む限りとても面白そうに見える。また、時間のある時(いつだ!?)に読んでみようかな。

☆☆☆☆☆

初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:・皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。

2019-04-02 09:27:25 | 書評:その他
 


 作家の三浦しをんさんと、政治学者にして「鉄」学者の原武史さんの対談集。三浦さんが作家だというのは、知らない人は少ないだろう。一方の原さんだが、本業は政治学者で近現代の天皇制について研究している。もう一つの「鉄学者」の肩書だが、「哲」学者の間違いではない。「鉄」学者である。要は鉄道ヲタクということだ。大の鉄道好きの団地好き。だから対談の本筋は明治以降の皇室についてだが、時々鉄道の話に脱線する。

 例えば三浦さんが「『シン・ゴジラ』を観ましたか?」と問いかけると、原さんは、「はい、観ましたが、鉄道的には見るところがなかったですね」(p108)と答える。原さんによると新幹線は電車ではないらしい。「だって、新幹線車中では、寝てるか仕事してるかだけですよ。景色もろくろく見えないじゃないですか」(p165)ということのようだ。

 ゆるゆるとした雰囲気の対談がメインだが、所々に対談を纏めたと思われる編集部の書き込みが面白い。一例として、松本清張の小説「神々の乱心」に出てくる女官の世界について「究極の女性社会である「女官の世界」。三浦は震え、原は興奮した」(p032)という具合である。

 しかし、単にゆるゆる対談を繰り広げているばかりではない。なかなか三浦さんのツッコミ具合がいいのだ。女性の神様アマテラスの子孫である天皇家はなぜ女系を採用しなかったのかとか、女性皇族の結婚問題において、なぜ男性側の職業や稼ぎだけが問題になるのかなどと疑問を呈する。

 この他にもなかなか興味深いことがいっぱい。近現代の皇室に関する話題に興味がある人は一読してみるといいだろう。

☆☆☆☆

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする