「大学受験を終えたばかりの彼らは、本の読み方をこれまでどこでも教わっていない。」(pⅲ)というのだが、なんでも教わらないとできないというのは、小さなころから塾や予備校でお受験に励んで来た弊害だろうか?
本書は大きく二部に分けられ、第Ⅰ部は「苦手な人のための読書術」、第Ⅱ部は、「仕事を効率よく進めるための読書術」となっている。アウトプットを重視しているのは主に第Ⅱ部である。
本を隅から隅まで読む必要はないといったり、入門書などを活用するというようなことは良く聞くのだが、特に面白いと思ったのは「2:7:1の法則」だ。二割の本は人生の幸福への切符を手に入れたことになり、七割は、丁寧に読めばそれなりのものを与えてくれる。そして、どうしても、自分に合わない本が1割はあるというのだ。もし不幸にして友人から貸されたような場合が1割に入る本であった場合には、内容には一切触れず、「いやぁ、こういう世界もあるんだね」と言って返せばいいらしい(p31)。
ビジネス書を読むような場合には、読む必要がないところをどんどん省いていけばいいという(p33)。だとするとビジネス書には中身がスカスカのものがあるので、読むところが残らないものも出てくるだろう(笑)。ああ、この場合は1割の方に入れればいいのか。
著者は理系的な考え方の特徴は何かと問われて、それは分からないことはひとまず棚上げしてブラックボックスとして扱うというやり方だと述べている。しかし、文系でもよく知らないことはこうなりがちだ。文系が科学に関することを述べる時は無意識にこれになることが多いのではないだろうか。
そして、「多読と速読」の違いについて「速読には目的があり、多読には目的がない」(p76)と述べているが、私の考えは違う。速読とは手段であり、多読とは結果なのである。だからこの二つを並べて語るのは論理的におかしいと思う。
ともあれ、本を沢山読まないといけない人には参考になることも多いと思う。でも、小説なんかを楽しみながらたくさん読みたいという人には向いていないかもしれない。