文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

E=mc2のからくり エネルギーと質量はなぜ「等しい」のか

2020-03-14 09:39:34 | 書評:学術教養(科学・工学)

 

 

 

 

 

 

 

 みなさんは、E=mc^2という数式をご存じだろうか。アインシュタインの特殊相対性理論から導かれる質量とエネルギーが等価であることを主張する数式である。あのホーキング博士も、「ホーキング、宇宙を語る」(早川書房)の中で、数式を一つ入れるたびに本の売れ行きが半減すると教えてくれた人があるが、この式だけは入れたという趣旨のことを書いていた(同書p6)。

 本書の目的は、次のように書かれている。

「本書は、物理学の詳しい知識を持たない人を前提に、初歩の初歩から「E=mc^2のからくり」を解き明かしていきます。」(p6)



 この本に書かれていることを列挙すれば、ニュートン力学、エネルギー保存則、電磁力、4つの力、E=mc^2そして真空のエネルギーなど。基本的には数式を使わずに(もちろんE=mc^2は使われているが)、これらについて説明されている。

 物理学の詳しい知識を持たない人は、このような本に書かれていることを読むだけでも相対性理論や量子力学の基礎的な概念は分かるだろう。ただ物理学の知識がある程度ある人には、数式を使わないというのは、却って分かりにくいかもしれない。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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美味しい! 可愛い! 大人の台湾めぐり

2020-03-12 10:36:38 | 書評:その他

 

 本書は、台湾のガイドブックである。タイトルの通り、美味しいものや可愛いものが沢山紹介されている。絵も著者が描いたようだが、ほのぼのとした絵柄で台湾の魅力が描かれている。色使いもなかなかいい感じだ。

 次のような一文がある。

<台湾を旅行したくなる理由の一つに、台湾の皆さんが親切ということがあります。台湾で嫌な思いをしたことはほとんどなく、困った時に助けてもらえることが多くあります。>(p57)



 これは分かるような気がする。私は仕事で台湾から来られた人たちの対応をしたことがあるが、皆さん礼儀正しくて、台湾に対する好感度アップだった。

 笑ったのは、十分(シーフェン)のランタン屋さんでの話だ。ランタンに願い事を書くのだが、若い日本人の女性が書いたという言葉が、「彼氏ほしい」(p48)だそうだ(笑)。ちなみに、著者は、「お金に困らない生活がおくれますように」(p48)らしい。

 巻末には、家族旅行や弾丸台湾取材のスケジュールや、個人手配旅行のコツなどが紹介されており、小冊子ながらまさにいたれりつくせり。今は新型コロナが世間を騒がせているが、これが落ち着いたら、台湾旅行を考えている人には参考にしたいことがいっぱいだ。

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2020年度1学期の授業料支払い

2020-03-11 11:29:06 | 放送大学関係

 昨日実家から帰ると放送大学から2020年度1学期の振込用紙が来ていたので、近くのコンビニから支払ってきた。結局選択したのは以下の通り。

(放送授業)

・経営情報学入門

・解析入門

・数値の処理と数値解析

 

(面接授業)

・天文学への招待

 

 この単位が全部そろえば、2学期は2単位取れば6回目の放送大学卒業ということになる。卒業するとあと1コースしか残っていない。この後どうするかはゆっくり考えようと思う。

 

 

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ニューロダイバーシティと発達障害

2020-03-10 08:28:37 | 書評:学術・教養(人文・社会他)

 

 本書での主張は、「発達障害と才能は表裏一体」ということだろう。しかし、悪い教師にかかると、障害の方ばかりに目がいき、その才能の方を見ない。これまで天才と呼ばれた人を見ると、小さいころは劣等生だったというものが多い。要するに、教師にその子の才能を見抜く目が無かったということだろう。

 偉人の多くはハンデをかかえていた。しかし彼らはハンデを克服して偉人になったのではない。ハンデがあったからこそ偉人になったのである。タイトルにあるニューロダイバーシティというのは脳神経系の多様性と思えばいいようである。これに対していわゆる健常者、つまり多数派は、NT(定型脳)を持っていると言われる。要するに、多数派の中で、少数派は障害というレッテルを張られるのである。しかし、それにはっきりした基準があるわけではない。

 道尾秀介さんの小説に「片眼の猿」というものがある。元々はヨーロッパの民話のようだが、片眼の猿の国では両眼の猿の方が異常に見えるのである。発達障害というのは多数派とは違うということだ。

 本書で紹介されるのはエジソン、坂田三吉、アインシュタイン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アンデルセン、ベル、ディズニー、モーツアルトといった8人の天才たち。どれも障害を持っていた可能性が高い。例えば、エジソンは注意欠陥障害を疑われるし、坂田三吉は明らかな読み書き障害(ディスレクシア)を持っていた。アインシュタインの場合は脳が保存されていたということだが、大脳の前頭葉に障害が発見されている。その他の人物も障害のあることが推測されるらしい。 

 ちょっとこの部分は異論がある。昔はクラスの中に一人ふたりは「けったいな」子がおり、著者の同級生にも小学1年のころ、水飲み場でいきなりおしっこを始めた子がいたという。その子は、科目の成績が良くなかったが数学だけはでき、大学まで同じところに通うようになったという。しかし、著者が通ったのは大阪大学だ。いくら数学が良くできたとしても旧帝大にはそれだけでは入れない。他の科目も人並み以上にはできたと考えるのが妥当だろう。あまり良い例とは言えないのではないか。

 そして、これは、教育を担当しているお役人に聞かせたい言葉だ。

「この本の原稿を書きつつ、今まで紹介してきた天才と呼ばれる人の人生を改めて振り返ってみると、一つの共通した特徴に気がつく。それは、成功を遂げるにあたり、学校教育が何らかの貢献をしたケースが、どれ一つとして見当たらないということである。」(p221)



これは分かりそうな気がする。学校の教師は、凡人なのだろう。だから、後に天才と呼ばれる人たちの、今できないことばかりに注意が行き、彼らの才能に目を向けることはなかったのだ。これまで幾人の天才が学校教育によりつぶされてきたのだろう。

 残念なのは、表紙がイロモノのようなことだ。おそらくこれはモーツアルトなんだろうが、内容までイロモノに見えるのではないか。本自体は、人間とは多様性があり、人と違っていてもいいじゃないかということがよく分かる。金子みすゞさんではないが、「みんな違ってみんないい」なのだ。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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機巧のイヴ 帝都浪漫篇

2020-03-08 16:45:23 | 書評:小説(SF/ファンタジー)

 

 本書が「機巧のイヴ」シリーズのおそらく最終巻。いや最終巻とは書いてないが、あの終わり方をみれば、おそらくこれが最終巻になるのだろう。

 舞台は、もう一つの日本。要するに異世界ものである。もっともここでは日本とは言わず日下国と呼ばれているが。 そして、ある程度日本史を知っているものなら、モデルになった事件が何なのかは検討がつくだろう。関東大震災、甘粕事件、満州国の建国、李香蘭など。

 物語のヒロインは、イヴと呼ばれた機巧人形。この作品では、轟伊武として、女学校に通っている。伊武は馬離衝(バリツ)の師範である轟八十吉の養女として登場する。馬離衝というのは、シャーロックホームズが使った、あの架空の日本武術である。ところが大震災の混乱で、伊武の友人のナオミが、彼女の思い人である林田といっしょに憲兵につれていかれ行方不明になる。

 この作品では機巧人形にオートマタというルビがふられている。オートマタと言えば、週刊少年サンデーに連載されていた藤田和日郎さんの「からくりサーカス」に出てくるようなものをつい連想してしまうのだが、この作品では特別な能力を持っているわけではない。人と同じように、喜怒哀楽が表情に出るし、恋もするのである。伊武にしても馬離衝の黒帯を持っているはずだが、人間相手にあっさりやられるくらいの能力なのだ。

 この表紙イラストを見て、もしかすると伊武が最後に、人ならざる力を見せるのかと思ったが、それもなかったのは残念。

 この作品のテーマは二つあると思う。一つは、魂とはなんなのかということ。どうして機巧人形に喜怒哀楽があるのか。機巧人形に宿っているのは果たして魂なのか。

 もう一つは軍部の暴走の恐ろしさ、いやらしさ。彼らが林田やナオミにした非人道的な行為は目を覆いたくなる。でもこのシリーズ、興味がわいたので、時間が許せば遡って読んでみようかな。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

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かんばん娘 居酒屋ともえ繁盛記

2020-03-06 15:52:47 | 書評:小説(その他)

 

 

 なずなは、江戸時代の居酒屋ともえのかんばん娘である。歳は14(もっとも4つ目の作品で、客から歳を聞かれて15と答えているので、作中で歳をひとつとったようだ。)。昔は数えで歳を表すから、今の満年齢の数え方に直せば、12歳か13歳というところだろう。要するに今だったら中学に進んだかどうかという年頃である。そんな年齢で居酒屋で働いてもいいのかと突っ込む人もいるかもしれないが、昔はこんなものだ。年齢に関係なく、働いている人はいくらでもいたのである。

 なずなの場合は、菱垣廻船の水主であった父の左馬次の乗った船が難破し、病弱な母の具合も良くないことから、伯母にあたるお蔦のやっているともえで働くことになったのである。ちなみに、お蔦の夫が父の兄であり、直接の血の繋がりはない。

 さて、本書は、居酒屋ともえを舞台にした連作短編集である。収録されているのは、鮟鱇、看板娘、出世魚、ふるさと、二十六夜待ちの5編。

 面白かったのは、このかんばん娘についてだ。なずなは、なんとかともえの戦力になろうと、酒も飲めないのに、お燗を最適の温度で出す工夫をする。燗の番をするから、「かんばん娘」(p104)ということらしい。

 もっともなずなは、自分の容貌にコンプレックスを持っている。お蔦は美貌の狐顔なのに、自分は狸顔で美人ではないと。でも、周りの人はみななずなのことを可愛がっているようなので、そのうち押しも押されもしない「かんばん娘」になることだろう。

 気に入ったのは、次の言葉。ともえの板前である勘助を逆恨みした矢惣次という男に、なずなはかどわかされた。責任を感じて辞めるという勘助にお蔦が言った言葉だ。

「ねえ、勘助さん。オボコとかスバシリみたいに、人も生きる場所や付き合う人を違えながら、世の中を一段ずつ上がっていくんじゃないかしら」(p155)



ちなみに、オボコとかスバシリというのは出世魚であるボラの途中段階の呼び方である。そうなのだ。あまり過去のことを後悔しても仕方がない。大事なのはそれを踏まえて、人生の階段を一段一段上がっていくことだろう。

 なずながかどわかされたことが、一番の大事件と言えば言えるが、全体的には江戸の人情に溢れたお話というところか。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

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さよならセキュリティ

2020-03-04 08:30:45 | 書評:学術教養(科学・工学)

 

 実は私、情報処理技術者試験のうち、情報セキュリティアドミニストレータ試験に合格している。情報処理技術者試験とは法律に基づき経産大臣が実施するものだが、別にこの資格がなければ情報処理の仕事ができない訳ではない。おまけに情報セキュリティアドミニストレータという名称は、旧制度のもので、今は試験区分にはない。しかし、情報セキュリティということには、結構詳しいのである。ということで、セキュリティという言葉に脊髄反射するように、本書を読んでみたというわけだ。

 私のところにもよく詐欺メールが来る。不思議なことによく使っているアドレスには嫌と言うほど来るのに、殆ど使っていないアドレスには来ないのである。メールアドレスが流出しているのである。ひどいのになると「あんたのパスワードこれやろ」と昔使っていたパスワードが書かれていることがある。

 現在使っているものは入っていないのだが、流出事件ということで、パスワードを設定したサイトを運営している会社(複数)にパスワードが流出していると連絡すると、そんなことはないと否定する。昔はセキュリティが甘いものが多かった。特定の企業でしか使わないパスワードが書かれていたら、そこから漏れたことはまず間違いないと思う。今はセキュリティというのはweb上で何かをやる時はまず考えないといけない。

 さて本書を読んでみると、技術的なことは出てこず、セキュリティを切り口に書かれたエッセイ集と言うような感じだ。その理由は「はじめに」に書かれている。

「一冊を通じて、今のセキュリティを取り巻く環境を網羅的に取り扱うことに注力した。一方で技術的な内容に踏み込んでいない理由は、本書の内容をより多くの方々に知っていただきたいからである。」(p3)



 昔はパソコンと言えば、自分でプログラムを組めるのが当たり前といった時代がある。今はまったく技術的なことを知らなくてもパソコンやスマホを使える。しかしセキュリティということを常に意識しておかないと、あとで困るかもしれない。

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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明治開化 安吾捕物 その二 密室大犯罪

2020-03-02 21:49:34 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)



 このタイトルにある「大犯罪」という言い方に時代を感じてしまうのだが、「舞踏会殺人事件」に続く第二弾。

 人形町で小間物屋をやっている藤兵衛が殺される。この藤兵衛、小間物屋の主人だが、土蔵に暮らしていたという変わり者。なんでも土蔵もちになったのがうれしかったらしい。そして犯行現場はこの土蔵。現場はタイトルの通り「密室」になっていた。

 この事件を調査するのは前回と同じメンバーで、結城新十郎と花廼屋(はなのや)因果そして、泉山虎之介の3名。但し名探偵の役は結城新十郎。ただし、花廼屋因果は推理の才はないが、腕っぷしは強いので犯人を捕まえる役。泉山虎之介は、前回と同様勝海舟のところに出向いて、勝の迷推理を聞く役である。

 このシリーズに出てくる勝海舟は、悪血を採ると称して、ナイフで自分の体を切り刻む変態だ。そして自分の推理が間違っていた言い訳をするのもいつもの通り。それにしても、泉山虎之介、勝の迷推理を聞いて、

「虎之介は海舟の読みのひろさに益々敬服の念をかため、その心眼の鋭さに舌をまいて、謹聴しているのである。」



ということらしい。どうしてそうなる!

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。







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