小雨、17度、81%
柴田是真、江戸末期から明治にかけて活躍した蒔絵師だそうです。私は、今回根津美術館を訪れるまで、是真に付いてはほとんど知識を持ち合わせていませんでした。ただ以前より松田権六の「うるしの話」などを読み漆芸には興味がありました。ここ香港にも中国の漆器が見られます。旅先のタイやベトナムにも、漆のものが見られます。その中でも、やはり、日本の漆器の質や細工の良さは、水準が高いように思われます。
蒔絵が施された漆器は、見事です。それだけの手仕事、手がかかった分だけ際立ちます。今回、是真のたくさんの印籠を見ました。あの小さいものにここまでという細工です。大きな文箱や火鉢の細工と、根付け、印籠の細工になんだか違いがあるように見られます。是真の遊び心というか、小さいものの細工には、粋を感じます。
漆絵もかなりの数です。おひな様のお軸があり、その表装の部分に、ひな道具がミッシリと描き込まれていました。なんとしゃれていることか。
業平の顔が描かれた硯箱がふたつ並んでいます。はて?一方は、尾形光琳の描いたといわれる本歌。もう一方は、それを是真が写したものです。パッと見には、そっくりなのですが、よく見ると細部にわたって是真の方が手が込んでいます。本歌と写し、いろいろな意味合いから甲乙付け難いものです。こんなことをするのも、是真の遊びではないかしらと思います。
漆絵ばかりでなく、絵画として屏風などもあり全作品、140点ほどもありました。
最後の展示室は、茶道具の部屋です。11月、茶人の正月ともいわれる口切りの月です。確か、この部屋の展示物は全て、根津美術館所蔵のものばかりです。