小雨、20度、96%
中学から高校にかけてのことです。夏目漱石が大好きでしたので、小説はもちろんのこと、漱石の人となりを書いたものをたくさん読んでいました。その中で漱石の留学時代のことを書いた記事に出会いました。イギリス留学でやや神経衰弱を煩った漱石は、下宿の部屋の閉じこもって、英文学の研究をしたそうです。そのとき食べていたのが、マーマレードと紅茶。マーマーレードをそのまま食べていたと書いてありました。それが原因で生涯の持病となる胃潰瘍を患ったとか。漱石に傾倒していますから、胃潰瘍も何のその、と言うか中学か高校の頃ですから胃潰瘍なんて頭にありません。以来、もう何十年も私は、マーマレードならずジャムイーターになりました。
パンにジャムは塗りません。ジャムがのっていることはありますが、たいていは、パンとは別にマーマレードやジャムだけを食べています。ジャムと違って皮まで入っているマーマレード、あのほろ苦さがなんとも言えません。私が中学の頃、福岡にもイギリスのフランククーパーのマーマレードが売られていました。パンに塗らないので、その消費量たるやかなりです。大きな瓶のジャムやマーマレードは4回ほどで食べてしまいます。
こんなこと、我が家の者しかご存知ありません。先日、オーストラリアの友人が、お土産にブラッドオレンジのマーマレードを持って来たくださいました。シチリア島が原産だと聞く、ブラッドオレンジ。何かで読んで、一度は食べてみたい果物のひとつでした。世界中から果物が入って来るここ香港、私が行く市場や普通のスーパーでは、まだ、ブラッドオレンジは見かけません。
早速、 普通のマーマレードより赤みを帯びています。蓋を取ったときの香りから、普通のオレンジのものより優しい香りです。味も香りと同じく、マーマレード特有の苦みが無く、なんと美味しいことか。彼女曰く、ほんとに血のような色だそうです。
考えてみれば、フレッシュなオレンジを食べたのは、マーマレードを食べてから随分後のことでした。ブラッドオレンジもフレッシュなものを口にするのが、マーマレードより後になりました。いつもはあっという間に空き瓶になるのですが、今回は嗜んで。