晴れ、26度、89%
私が生まれて育ったのは九州の福岡です。豚骨ラーメン、辛子明太で有名な福岡です。その福岡、よそから見えた方がビックリされるのが、夕方からずらっと並ぶ屋台です。中洲というどちらかというと夜の街の川沿いに、屋台は並びます。赤い提灯が遠目にもきれいに見えたのは子供の頃の記憶です。今では、天神の地下鉄の出口の周りにも並んでいます。実は私、この屋台にほとんど行ったことがありません。ですから、何処そかのラーメンが美味しいとか、どこの焼き鳥はなどと食べ物談義ではありません。女一人で入るには憚られそうですが、のれんの隙間から見える後ろ姿、若い女性のお客も見られます。暑い季節の食べ物の匂いは、頂けないこともありますが、寒くなると屋台から出る湯気混じりの匂いにつられて、近寄って行くこともしばしばです。人から聞いた話ですが、屋台だと思って安いかというと、どっこい、いい値段で食べ物を出しているそうです。最近ではイタリアンだのフレンチの屋台もあるというから、これまたビックリです。
私がいう福岡の街は、主に西側、中洲から西はいくらかは地名も解ります。ところが南、東になると皆目トンチンカン。高校を出て福岡を離れて、出来るだけ福岡を顧みないでこの年になりました。それでも、主人の実家も私の実家も福岡です。帰ると、福岡の西半分を忙しく動き回ります。不思議なものでこの西半分なら、裏道もある程度覚えています。ただでさえ裏道が好きな私は、裏道でいろんな発見をします。
ずらっと並ぶ屋台は大型のリヤカーの上に、調理台やカウンターを設えたものです。昼間は、中洲の川端にも天神にもどこにも屋台の姿など見られません。夕方になると、屋台の主が引っ張って所定の場所にご出勤です。そう、昔は引っ張って連れてこられていた屋台ですが、先日、天神交差点で目にした風景、あれ!と思わず声を上げました。だって、屋台のご出勤、ライトバンに曵かれています。時代が変わったのねと、なんだか寂しそうな屋台の姿をカメラに収めました。
屋台の出勤の様子は以前から目にする機会がありましたが、仕事が終って、引き上げる時は車に引っ張られようが、おじさんが引っていようが、もっとお疲れの様子のはずです。
さて、この屋台、昼間はどこで休んでいるのでしょう。裏道をスタスタと歩く私は、屋台たちが集まって、ひっそりと休んでいる場所を幾つか知っています。路地裏にある小さなビルの一階やモルタル作りのアパートの一階に、幾台もの屋台が止まっています。昼間のお日様の明かりのもとで見る屋台は、なんとも惨めな様子です。お疲れさまね、と声をかけてやりたくなるほどです。クルマは新型なるものが年々出てくるのに、この屋台どう見ても私が小さい頃と姿が変わっていません。
福岡で一番大きな交差点を、車に曵かれて行く屋台を見ながら、不思議と自分の年齢を考えていました。いつか、主人に屋台に連れて行ってもらいましょう。