曇り、15度、81%
人からもらった言葉で、それからの私の生きて行く上での指針になった言葉が幾つかあります。そのひとつが、40年近くも前にタクシーの運転手さんからもらった言葉です。
40年近く前、まだ私二十歳になっていませんでした。10代の終わりごろ、家に帰るために福岡の市内でタクシーに乗りました。家まで20分ほどです。タクシーの運転手さんとたわいもない話をしました。何を話したかは忘れてしまいした。家が近くなって、「2つ目の信号を左に上がってすぐです。」と私が言うと、「いやあ、あんたを乗せた時、嫌な女だと思ったけど、見た目と違ったねえ。」とおっしゃいます。
そのタクシーの運転手さんの言葉をタクシーを降りたときから、今日までずっと心に刻み付けています。少なからず、ショックでした。「嫌な女」。ところが、確かに私のあの頃は「嫌な女」でした。「嫌な女」に見える人間でした。タクシーの運転手さんですから、沢山の人を見て来ているはずです。そんな職業感を持った人から、「嫌な女」と言われた事は、確かな事実です。60歳近くなった今なら、人間の垢も付けて少々「嫌な女」と言われても仕方ありませんが、まだ20歳前です。せめて、見た目だけでも「嫌な女」と思われないようにしないとと思います。
年齢には関係なく、その人の人となりは外面に滲み出てしまいます。あの頃は、確かに嫌な人間、「嫌な女」でした。そう見えてるよ、と教えてくれたあのタクシーのおじさんに感謝しています。あれから、せめて見た目だけでもと努力して来たつもりです。
親に言われたこと、先生に言われたこと、そんな言葉よりこのタクシーの運転手さんの一言は私に一生の指針を与えてくれました。