晴れ、17度、81%
去年の暮れのことでした。私が朝走りに行く道で大きな犬に出会いました。雑種ですが大きな犬です。しかも向こうからかなりの速さで走って来ます。サイクリングの人が連れている犬かと思いますが,犬好きの私でも大きな犬に突然出くわすと恐ろしいので立ち止まりました。連れの人はいないようです。私の側を駆け抜けた犬のその目は、まるで挙動不審です。怯えではありませんが,どうしていいのやら分からない,迷子犬か捨てられた犬だと思いました。この道,野良猫も野良犬もいます。現場を見たことはありませんが,飼えなくなった猫や犬をここに放しに来る人がいるようです。
その大きな犬の顔を見て,とっさに思い出したのが我が家が東京にる頃、拾って飼っていた「テツ」のことです。以前にも書きましたが,この「テツ」は静かな住宅街のあちらの家こちらの家でエサをもらいながら可愛がられていた野良犬でした。それがある日急に、保健所の犬の捕獲に追いかけられ始めました。野良犬でしたが、可愛がられてご飯にも不自由しないので穏やかな犬でした。ところが,捕獲の人や車に追いかけられ始めると,その目つきが険しくなりました。毎夕,我が家の夕飯時にやって来ていた「テツ」が来ない日もありました。かと思えば、夕日の当たる梅の木の下で体を休めて寝てることもあります。そんなことがどれくらい続いたか,主人といよいよ決心して「テツ」を飼うことにしました。
険しい目つきの「テツ」に首輪を付ける,鎖で繋ぐ,全て私の役目です。数日かけて,鎖に繋ぎました。怒りも抵抗もしませんでしたが、用心です。我が家の犬になった「テツ」は,朝晩の散歩はつないで歩きます。多摩川の土手だけは放してやりました。野良の頃を知る人たちが口を揃えて,「いい顔に戻って来たね。」と言ってくださいました。
写真右が「テツ」です。東京で3年ほどして福岡に連れて来た頃の写真です。左の「ケン」は,拾ってすぐの頃だと思います。車の後ろに二人を乗せて,今からキャンプに出発するときの写真です。
私は一番犬との接触が永いのでそう思うのですが,動物は感情を表情で表します。辛い時,悲しい時,不安な時,恐怖ももちろん嬉しい時も。この「テツ」は笑っているように見えます。「ケン」はこの後肉付きもよくなり,目元もふっくらとした犬になりました。
穏やかな表情にしてやるのも不安な表情にするのも、飼い主次第です。庭先の飼い犬を見るとお散歩に連れて行ってもらっている犬と繋がれっ放しの犬では,顔つきが違います。
家が分からない,飼い主の居場所が分からない,心の不安一杯を顔に表していたあの大きな犬は、どうなったのかしら。
今日も一番側にいるモモさんの目を見て,悲しい想い 辛い想いがないようにと願います。