曇り、16度、95%
小さい頃は食べ物に興味がありませんでした。お腹が空いた記憶もあまりありません。母が料理をしない人でしたので、すき焼きを食べるというと、博多中洲の川端にある「いろは」というすき焼き屋さん行きます。お座敷に通されると、しばらくして仲居さんがやって来て、すき焼きを作ってくれます。仲居さんがまずすることは、四角の真っ白な牛の脂身をお鍋に入れて脂を出すことです。あとは割り下を入れて、お肉やお野菜を各自が取ります。お肉が食べたいなんてその頃は思いもしませんでした。ぐつぐつと煮えているお鍋のいい香りが立ち始めると、仲居さんが初めに入れて行った脂身をお皿に取って食べます。私が食べるのはそれだけ。脂身だけで充分満足でした。父も脂身が好きだったのですが、一人娘に譲ってくれていました。
お肉お魚の脂身はおいしいと思います。それなの太るからとの思いで30年近く、脂身を外して食べていました。お箸でもフォークでもしっかりと脂身を外していたのは20代、30代、40代です。他所の方との食事の席ではしませんが、家では鳥の皮すら外していました。50代に入る頃でした、脂身を外すなんて牛や豚、鳥に申し訳ないと思うようになりました。細かく脂身を外している自分を姿を想像すると恥ずかしい気持ちにもなりました。命をもらって食べています。このお肉は美味しくないなんていうのも、牛や豚に罪はありません。ここ10年ほど、出された物はきれいに食べます。元々好きな脂身です。
そういえば、体にいいといわれる物も随分変わって来ています。動物性の脂は身体に良くないともいわれますが、取り過ぎがいけないのだと思います。バターよりマーガリンと言われていた時代もありました。それがトランスファットが心臓に良くないと、バターを勧める声も聞きます。一時期香港のスーパーマーケットからマーガリンが消えてしまったこともあった程です。
カレーやシチューに入っているお肉はゴロンと大きい方がいいと思うのですが、中華の炒めものなどに入っているブタ肉のこま切れの小さな切れ端、その小さな豚肉の脂身にすら、美味しさとありがたさを感じます。