曇り、27度、84%
大学生からのことですから40数年欲しいと思い続けているものがあります。学生にしては高すぎるものでしたから買えませんでした。結婚してからもお金がない生活が続きましたので買えませんでした。ちょっと奮発すれば買えるようになった現在では、別の理由で買えません。
ソファーです。アルフレックス というところから出されている「マレンコ」という名前のソファーです。世に出たのは1970年代の初めと聞きますから、発売されてすぐから欲しいと思い始めたことになります。大きなクッションを生成りの帆布で包んだようなソファーです。組み合わせると3人掛けだってもっと大きなソファーだって作れます。随分と足元の低いソファーです。見出し写真はイラストレーターの大橋歩さんが描いた一人掛けです。
シュールームにも何度も足を運んで見に行きました。「欲しい、欲しい。」と思いましたが狭い家、決して安い物ではありませんでした。香港のフラットは賃貸で家具付きがほとんどです。ソファーもついていますが、ありふれた普通のソファーでした。しかも香港にはアルフレックス のお店はありません。ずっといつかはこのソファーを欲しいと思い続けていました。日本に帰って住むようになったのは住み慣れた私の実家です。築80年は超えているかもしれない古い日本家屋です。この家に元々とあったのは松本の民芸家具ばかりでした。客間として使う座敷には座卓とお座布団、居間はウィンザーチェアーとテーブルでした。ソファーはありませんでした。座敷をフローリングに変えたのでソファーを買うことにしました。座敷の天井板を外したので吹き抜けて天井まで4,5メートル、しかも壁は漆喰の白壁です。マレンコを思い浮かべても全く似つかわしくない空間です。結局、松本家具のソファーを求めました。
金銭的に手が届くようになったのに、私にはそぐわないソファーなのかもしれません。なのにまだ「欲しい。」と思います。「マレンコが欲しい。」という思いを連れたまま死んで行くなあと一人笑います。