雨、25度、87%
私が小さい頃この家には2つの寝台がありました。大きな父母の寝台、寝相が悪いために横に折り畳みの滑り止めが付いた私の寝台、共に誂えた寝台でした。中学の時、父が癌で家で療養することになりました。父は大きな寝台を使い、母用に新しく寝台を買いました。50数年前のことです。この家の改築に伴って、7年前に家の整理をしました。残したものは松本の家具と大きな焼き物、少しの本と少しの食器そしてこの母の寝台でした。マットレスは捨てて、バックボードと土台だけを残しました。
今、私が毎日寝ている寝台は母の寝台です。この家に戻ってきて以来、新しいマットを置いて使っています。私は夜寝る時以外にも昼間はこの寝台の上でゴロゴロと本を読みます。滞在時間の長い寝台です。母の寝台だと改めて気付いたのは数日前、それまで無意識に使っていました。
父の療養中、父母の寝室には大きな父が寝ている寝台と母用に新しくした寝台と私の寝台を2階から下ろして、3つの寝台が置かれました。一家3人、一つの部屋で休みました。父が逝ったその朝も母はこの寝台で看病疲れで寝込んでいました。父の様子がおかしいのに気付いたのは私でした。
母がこの家で過ごした最後の2年ほどはパーキンソン氏病で足が不自由になりこの寝台ではなく介護用の寝台の上で過ごしました。母の寝台を改めて見るとバックボードが素敵です。母がこの寝台を使った40年近くの間、母は何を思ってこの寝台で寝ていたのかと想像します。
夜はココさんが向かって右の枕を使います。主人用の新しい寝台と並んでいます。 親の寝台を使うのは珍しいことかもしれません。この数日、寝台に愛着が湧いてきました。出来たらこの寝台の上で亡くなりたいと思います。母も同じ思いだったのではとふと思います。