不思議な味わいの小説でした。
熊がテーマの「8つの短編集」の様な作りですが、
つながった一つの文学世界です。
皮肉や風刺が利いた迫力のあるファンタジーのようでもあり、
叙事詩のようでもあり、
挿絵の雰囲気も相まって引き込まれました。
この小説と、訳者の「あとがき」によって、イギリスの動物虐待の歴史を知りました。
あとがきによれば、イギリスでは、11世紀には、娯楽としての狩猟によって、クマが絶滅。
(熊は絶滅してからも、闘熊が見世物として大人気だったので輸入し続けたそうです。)
続いて13世紀にはイノシシも絶滅し、
次に、オオカミも絶滅対象に、続いてオジカ、角をトロフィー代わりに乱獲、
しかしシカは繁殖力が強く絶滅には至らず、次はキツネ狩りがトレンドとなり、
キツネも絶滅しかけたので、輸入しては放して狩りまくって、
その結果ウサギが繁殖して草木が減っていった・・・
という歴史を辿っているそうです。
『こうして イギリスから 熊がいなく なりました』
ミック・ジャクソン 著
デイヴィット・ロバーツ 画
太内 志文 翻訳
2018年 東京創元社
牧草地や畑を作るために、あるいは製鉄のために、
さらには森や山につながる古い信仰を根絶するため、山を削り森を伐採していった事と
娯楽としての狩りが長く続き、
その結果、今では、イギリスには森も山もほとんどなく、獣や虫や植物の種類もとても少ないそうです。
植民地においても同じパターンで、森林を、動植物を、古い文化を破壊し、
更には原住民を狩り、売買した・・・
日本では、かつてさまざまな動物が神様になったり、
或いは仏様のお手伝いをしたリ。
人がすべての生き物を支配するとしたキリスト教との
大きな違いかもしれません。
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