小説の新作が仕上がったので、読んでほしいと知人に頼まれた。
が、まだ読んでいない。
はやく読んで、感想を書かねばならない・・・プレッシャー。
図書館で本を借りて、返却期間が気になるのと同じ。
「時間があるときに、読んでください」と、添えてあるが、時間があるようで、ないようで。
気合を入れて書き上げた力作らしいので、ご本人は、感想が気になるのだろうけれど。
さて、唐突に話が変わって・・・
何を書こうか・・・・
子供のこと、書いてみようかな。
いまいち、乗る気なし。
家族のことを書くと、なぜか(偶然かも知れないが)訪問数が減る。
で、突然・・・なんなんですが・・・
老人ホームでの、自分の過ごし方が、見えた。
ロッキングチェアにゆらり揺られ、居眠り。
美しいものを見て過ごす。
大切な大好きなものを眺め、うっとり。
が、「あ、ない。わたしのお気に入りの、コレクションの指輪がない!!
誰かに盗られた~」
大騒ぎするわたしに、スタッフのみなさんは、冷静そのもの。
「はいはい、スローさん。今、みんなで探してますからね。絶対に見つかりますよ」
やさしく、なだめてくれる。
このパターンは、お年寄りの典型的症状なので、スタッフにとっては、日常茶飯事のことだろう。
わたしは、必死の形相で、「わたしの、・・・わたしの、指輪・・・あれは、命よりも大事なのよ」
と、うわ言のように言う。
スタッフさんは、「はいはい、そうですね、すばらしい指輪なんでしょうね。明日、きっと出てきますよ」
と、始終にこやか。
翌朝、わたしは、またロッキングチェアーで、大好きなお気に入りのモノを愛しむ。
「このネックレスは・・・ね。
わたしが、嫁に行ったとき・・・大切に育ててくれた両親がくれたものなのよ」
ワンコインショップか、100円ショップで買い揃えたガラスのオモチャを
娘たちが、宝石箱に入れて、部屋に持ち込んでくれている。
「はい、おかあさん、今日は、紫色の宝石がちりばめてあるブックカバーをプレゼント!」
今日の包装紙は、IKEYA。
ありがとう・・・
わたしは、にこにこ。
で、またまた
「わたしの大事な娘たちがくれた宝石ブックカバーを、誰かが盗った~」
と大騒ぎ。
スタッフたちは、微笑を絶やさず、「はいはい、また、明日、出てきますよ」
わたしは、おそらく食べ物を食べてないだの、なんだのは、あまり騒がないと思うが、
間違いなく、500パーセント、「大事なモノを盗られた~」と騒ぎそうだ。
宝石色のアメ玉を、きれいなボンボン入れに入れて、テーブルに置いておこうか。
食べてない~。盗られた~。
そう言っている自分のほっぺは、ぽこっとアメ玉状のふくらみが、ぽっこり。
口からは、ぽたぽた。宝石のしずく。
甘い涎で、ぺたべた、クマのぷーさんみたいになっていることだろう。
・・・
わたしが、書きたいのは、こんなことなんかじゃなくて、・・・
違うテーマなのに、・・・勝手にキーを打ってしまった。
「誰かが、わたしの指を押さえつけて、勝手にキーを打たせる~」
そういうわたしに、スタッフは、にこにこ。
「大丈夫ですよ。明日になると、また、ピアノのキーを打ってますよ」
わたしの老後(末期)は、芸術的でなければならない。