『家族を想うとき』(原題:Sorry We Missed You)
監督:ケン・ローチ
出演:クリス・ヒッチェン,デビー・ハニーウッド,リス・ストーン,
ケイティ・プロクター,ロス・ブリュースター他
前述の『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』とハシゴ。
同じくシネ・リーブル梅田にて。
イギリス/フランス/ベルギー作品。
監督は社会派の名匠ケン・ローチ監督。
イギリス・ニューカッスルに暮らす4人家族。
夫のリッキー、その妻アビー、16歳の息子セブ、12歳の娘ライザ・ジェーン。
悲願のマイホームを手に入れようと、リッキーは転職を決意。
配達車をどうするか。借りるか自前で用意するか。
いま所有している車は1台のみで、介護福祉士のアビーが使っている。
もう1台買う余裕など当然なく、アビーを説得して車を売り、配達車を購入。
そのせいでアビーは介護先をバスで回るはめに。
意気揚々と新しい仕事を始めたリッキーだが、個人事業主とは名ばかり。
過酷なノルマに縛られ、思うように金は貯まらないどころか減ってゆく。
家族で過ごす時間がどんどん減り、ぎすぎすした空気が流れるのだが……。
ケン・ローチ監督の作品はたいていつらいものだけれど、
最後はほんの少し希望があるもの。でも、本作に希望はゼロ。
ここまでつらい物語は久しぶりに観ました。
昔お世話になっていたカメラ屋さんのことを思い出します。
長年勤め、円満に退社してフランチャイズの事業主へ。
開店当初は夢が叶って嬉しくてたまらないふうだったのに、
ほんと、独立なんて名ばかりだったようです。
その人についていた客を持って行ってはいけないし、
毎月払わなければいけない金額が大きすぎて、数年で畳まれました。
閉店のさいの絶望的な表情を思い出すとやるせない気持ちになります。
今も年賀状のやりとりだけはしていますが、
ひと言のコメントもないから、生きていることがわかるだけ。
どうしていらっしゃるのかなぁ。
自営っていったい何なのか。アビーの言葉に共感。
甘い甘いとリッキーが言うけれど、甘かったのはリッキーのほう。
自転車操業以外のなにものでもない。
何が大事なのか、考えさせられます。