『 朝な朝な ・ 万葉集の風景 』
朝な朝な わが見る柳 鶯の
来居て鳴くべき 森に早なれ
作者不明
( 巻10-1850 )
あさなあさな わがみるやなぎ うぐいすの
きゐてなくべき もりにはやなれ
意訳 「 朝な朝なに 私が見ている小さな柳たちよ 鶯が やって来て住みついて鳴くほどの 森に早くなっておくれ 」
* 万葉集の巻10は、ほとんどが作者不明です。
多くの歌を収集する段階で、作者がはっきりしない作品も当然あると思われますが、万葉集の場合、伝承の過程で作者名が分らなくなったという例は少ないような気がするのです。つまり、作者不明の多くは、意識的に記録されなかったような気がしてなりません。例えば、最初に収集に当たった人が、名前を記す必要がないと考えたとか、記録しても意味がないと考えたとかなどです。
あるいは、地方の農民などの場合、単なる呼び名しかなく、記録するほどのことはないと考えたのかもしれません。
* 掲題の歌も、どのような地域の、どのような生活を送っていた人物の作品かまったく分りません。
現代の私たちには、鶯と柳という組み合わせは、新鮮というか不自然というか微妙なところですが、作者の鶯や柳に対する温かな気持ちが込められているすばらしい作品と感じました。
この時代の庶民の生活がどのようなものであったのか知らないのですが、自然の流れをのびのびと受取っている様子を伝えてくれています。個人的に大変好きな歌です。
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