雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

栄光の輝き ・ 小さな小さな物語 ( 955 )

2017-04-22 08:53:57 | 小さな小さな物語 第十六部
春の甲子園は、史上初の大阪代表同士の決勝戦となりました。
かつては、東京代表同士ということもあったようですが、今年の近畿勢は総じて健闘していたようです。
いずれにしても、本日優勝チームが決まるわけですが、選抜大会とはいえ、それぞれの地区の代表校に選ばれるまでの苦難もあり、決勝戦まで勝ち進んでくることは大変なことだと思います。
栄冠を手にする者、惜しくも準優勝に終わる者、野球に限らずスポーツの勝敗の結果は厳格で、ある意味では残酷なものです。しかし、戦い終えたあとどちらの立場に立つとしても、その「栄光の輝き」は燦然たるものだと思うのです。

スポーツにおける栄光の輝きは分かり易く、拍手を送る側も何の躊躇もありません。それは団体競技であれ個人競技であれ、全国大会や日本代表として外国チームと戦うものばかりでなく、地方大会や、たとえ町内の大会のようなものであっても、勝者や健闘した者に拍手を送ることは実に気持ちのいいものです。「栄光の輝き」などと表現するのは少々オーバーかもしれませんが。

ところが、私たちの社会生活においては、「栄光の輝き」に手放しで拍手を送ることは、なかなか難しいようです。
社会的勝者に対して、ごくごく限られた身内はともかく、身内も含めた支援者はもちろん、競争相手となった人たちが心からの拍手を送っているなどというのは、そうそうあるものではないと思われます。
テレビなどで目にすることがある例を挙げてみますと、政党の党首を選出する選挙において、その結果を受けて、党首の座を争った人たちが壇上に上がって、手を握り合ったり振り上げたりして健闘を称え合う場面がありますが、あれほど白けた場面はそうそうあるものではないでしょう。
政治の世界に限らず、企業や学界や小さな団体などにおいても、おそらくあまり変わらない光景が展開されているのではないでしょうか。

こう書いてきますと、さすがに少々個人的なひがみ根性が出ている感がありますが、実は、隣国の元大統領が逮捕されたというニュースに、「栄光の輝き」というものには、揺らめきがあり、輝きが大きければ大きいほど影を生み出すのではないかと考えてしまったのです。
隣国の政治事件について語るだけの知識を私は持っておりませんが、その犯した罪がどのようなものだとしても、国民を率いた人が逮捕されるということは、他所事ながら残念な気がします。
今回は他国のニュースが切っ掛けとなったのですが、わが国においても、そう遠くない過去において、同様の事件がありました。そうした事件も含めて、国家主導者やその地位にあった人が逮捕という屈辱を受けることは避けるべきだというのが個人的な考えなのですが、そういう立場の人たちの犯罪や国民への裏切り行為が、闇に隠れ、あるいはもっと強引な手段で消し去られていることがある可能性もあり、そう考えれば、隣国のような法的手段は、民主国家には必要なのかもしれません。
「栄光の輝き」に心から拍手を送ることは、送る方にとっても幸せな事です。ぜひとも、栄光を受ける幸運の機会を得た人には、その輝きには揺らめきもあることを心して、大切にしてほしいものです。

( 2017.04.01 )

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