雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

商品に手を出すな ・ 小さな小さな物語 ( 907 )

2017-04-22 13:36:55 | 小さな小さな物語 第十六部
警察官が拳銃で同僚や市民をおどしたという事件を聞いたことが何度かあります。必要性があって用いたものではなく、面白半分であったようなことも伝えられていましたが、もっての外だと思われます。また、届けられた拾得物をくすねたらしいという事件もニュースになったことがありますし、捜査費用を他に流用したり、隠し資金を持っていたなどというニュースもありました。

最初に警察官の事を書いてしまいましたが、性格の似た犯罪や不祥事は少なくないようです。
例えば、弁護士が弁護人の資産をちょろまかしてしまったとか、消防関係者が放火犯人であったとか、教員が幼い子供にいたずらをしたとか、病院関係者が入院患者に犯罪まがいのことをしたり、殺してしまったというのさえあります。
選挙で選ばれたはずの議員が、公金を私物化するのに必死であるなどというのは、もうニュース価値さえなくなってきていますが、そのやり方や金額が、およそ天下国家や、国民・市民の為を論ずる人物とは到底考えられないのが選んだ側としては辛いところです。

「商品に手を出すな」ということを聞いたことがあります。どうも、あまり上品な言葉ではないようですし、差し障りのあるお方には勘弁いただきますようお願いします。
この言葉の最初の出所がどの辺りなのかは知らないのですが、私が聞いた限りでは、水商売において、黒服というのでしょうか、男性従業員はホステスに手を出してはいけないという厳格なルールがあるらしいのです。これは、何も水商売に限ったことではなく、どの程度守られているかどうかはともかく、教員が女生徒に対してもそうですし、医師が看護婦や患者に対しても同様の倫理観があったらしいのです。この「手を出す」というのは、あくまでも男女間の問題ですから、現代では死語かもしれませんが、かつては、老舗の商店などや、かなり規模の大きい企業においても社内恋愛禁止という不文律があったらしいのは、そう遠い昔のことではないと思われます。

いまさら、「商品に手を出すな」などということを声高に叫ぶのはピントがずれている感もありますが、恋愛関係はともかく、いやしくも職業人としてその分野のプロであれば、信頼を与えられている人・モノ・ルールなどを私物化するような行為は、恥ずべきことと認識すべきだと思うのです。ずっと以前に、アメリカのコメディ映画で、盗んで来た金を分配するにあたって、仲間の一人が「たとえ盗んで来た金だといっても申告しないのはとんでもない。納税は俺たちの義務だ」と言い出して仲間割れとなるシーンがありました。これと「商品に手を出すな」とを一緒にするのはどうかと思いますが、どのような職業であっても、プロであればプロとしての矜恃(キョウジ)があってしかるべきだと思うのです。
幼い女の子に、将来何になりたいかと尋ねますと、今でも「ケーキ屋さん」というのが上位に来るそうです。お店の雰囲気にあこがれるのでしょうが、いつでも食べられるという思いもかなりのウェイトを占めているようです。
どうも、残念ながら私たちの国には、政治家や特別な職業についている人ばかりでなく、この女の子のような気持が広く蔓延しているのではないでしょうか。

( 2016.11.02 )

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