雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

不足だらけ ・ 小さな小さな物語 ( 1205 )

2019-12-08 15:50:21 | 小さな小さな物語 第二十一部

『老後資金 2000万円』という言葉が、大手を振って走り回っています。
詳しい経緯を承知しているわけではないのですが、金融庁の金融審議会の市場ワーキンググループの報告書に盛り込まれていたらしい、「65歳から30年間生きるとした場合、年金の他に2000万円が必要」といった内容が、どういう経緯で漏れたのか、審議会のチェック前に広がってしまい、しかも、老後資金が2000万円不足という部分が一人歩きしてしまったようです。

その報告書たらは見ていませんので、あまり無責任な意見は控えたいと思うのですが、テレビなどで報道されている内容から推定すれば、いわゆるモデルケースとして示されたものが、「2000万円不足」という部分が切り取られて、報告書の本意とは違う形で報じられることになってしまったようです。
モデルケースというのは、平均でもなければ、具体的な階層を指しているわけではないので、多くの国民にとっては、ほとんど直接的には役に立たない資料なのです。審議会の要請を受けて作成されたものでしょうから、いわゆる有識者と称される方々によってまとめられたのでしょうが、その程度の内容は、ちょっとした雑誌や書物には溢れるほど示されているものです。現に今回示されているというモデルケースは、厚生省が2月に公表したものとほとんど同じですから、専門家と自称してる人が何を大騒ぎしているのかと首をひねってしまいます。

本来ならば、お上が大見え切って公表し、下々は冗談じゃないよ、と受け流してしまう種類の報告書のはずが、担当大臣や官邸や与党までがオタオタしているように見えるのは、実態を承知してきていなかった為なのでしょうか。
同時に、野党側は、まるで鬼の首でも取ったように大はしゃぎしているのも、どうかと思ってしまいます。年金制度云々と混同させてしまっている面も見えますが、与党側も野党側も選挙を控えているためとも報道されていますが、この程度のことで選挙民が右往左往すると見られているとすれば、私たち国民も軽く見られているものですねぇ。

年金が少ない、介護施設が少ない、保育所が少ない、すくない、すくない、・・・。
わが国の社会は、それほど不足だらけの社会なのでしょうか。
自分自身の生活を見つめている限り、不足多い生活だとも思うのですが、テレビなどで報じられる発展途上国や紛争地域の庶民の状態を考えれば、わが国の国民の多くは、公的支援+自助努力で生活設計は可能なのではないでしょうか。
「2000万円不足」といっても、何も調達するしか手段がないわけではなく、方法はあるはずでしょうし、もし無いとしても、すべての国民が全て公的支援で老後を生活することなど不可能なのですから、知恵を働かせるしか仕方ないのではないでしょうか。
少なくとも、「2000万円必要だ、2000万円必要だ」と大騒ぎするような愚は避けたいものです。

( 2019.06.14 )


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