常よりも 篠屋の軒ぞ 埋るる
今日は都に 初雪や降る
作者 贍西上人
( NO.658 巻第六 冬歌 )
つねよりも しのやののきぞ うづもるる
けふはみやこに はつゆきやふる
☆ 作者は、平安時代後期の僧。生没年とも不詳。一説には、没年は1127年で、行年は六十六歳位とも。
☆ 歌意は、「 いつもより 篠(細い竹)で葺いたわが家の粗末な軒は 深く雪に埋もっています この様子では 今日あたりは都にも 初雪が降ったのでしょうか 」といったものであろう。
☆ 作者の正確な伝承は少ないようである。出自についても、情報を入手することが出来なかった。
一般に伝えられているものによれば、もとは比叡山の僧で、後に雲居寺(ウンゴジ)に移り住んだとされる。中には、同時を創建したというものもある。
☆ この雲居寺というのは、京都東山の現在の高台寺の近くにあった寺院らしい。創建は、837年に桓武天皇の菩提を弔うために道場が造られたのが始めらしい。もし作者の瞻西上人(センサイショウニン)が創建したという伝承があるとすれば、衰退していた道場を彼が再建したのかもしれない。
同寺には、金色の八丈の弥勒菩薩像があったとされるが、応仁の乱で消失している。
また、東山の野の面に百丈の弥勒菩薩像を造ったという伝承もあるらしいが、百丈といえば約三百メートルなので、事実だとすればとんでもない造形物になる。もし事実だとしても、おそらく、地面に描いたものと考えられるが、それにしても大変な規模である。
☆ 掲題の和歌は、藤原基俊に贈ったものである。基俊は、従五位上左衛門佐と官職に恵まれなかったが、藤原道長の曾孫にあたる名門の出である。当時の社会構成を考えれば、瞻西上人も貴族の家に生まれたものと考えられる。また、説教の上手であったとも伝えられており、「上人」という敬称からも、相応の僧侶であったと推定される。
ただ、残念ながら、筆者の力では人物像を描くだけの消息を手にすることが出来なかった。
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