雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

鰐と鯉との戦い ・ 今昔物語 ( 31 - 36 )

2024-11-13 08:20:55 | 今昔物語拾い読み ・ その8

     『 鰐と鯉との戦い ・ 今昔物語 ( 31 - 36 ) 』


今は昔、
近江国の志賀郡古市の郷の東南に、心見の瀬(シンミノセ・石山寺付近の瀬田川の浅瀬、らしい。)がある。郷の南の辺りに勢多河(瀬田川のこと
)があり、その川の瀬である。

ある時、その瀬に大海の鰐が上ってきて、江(エ・琵琶湖)の鯉と戦った。
ところが、鰐は戦いに負けたので、引き返して山背国(山城国)で石になって留まった。鯉は戦いに勝ったので琵琶湖に返って行き、竹生島を取り巻いて住んだ。こんなわけで、心見の瀬というのである。
かの鰐が石になったというのは、今、山城国[ 欠字あるも不詳。]郡[ 欠字あるも不詳。]にあるのがそれである。かの鯉は今も竹生島を取り巻いていると語り伝えている。心見の瀬というのは、勢多河の[ 欠字あるも不詳。]の瀬である、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 天を衝く大木 ・ 今昔物語 ... | トップ | 元明天皇の御墓 ・ 今昔物... »

コメントを投稿

今昔物語拾い読み ・ その8」カテゴリの最新記事