マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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古文書閲覧

2009年01月02日 05時40分40秒 | メモしとこっ!
氏神さんには古文書が残っているんだ、前神主さんが文書を整理しているので拝見してみようと、村神主さんのご好意で同行閲覧させていただいた。

櫃の中には束になった古文書から一部を取り上げ開いてみた。

「座入名替畑(畠や畑門と記載されているものもある)年貢帳(覚記もある)」は読み取れる範囲で文書をめくれば文化九年(1812)、天保十一年(1840)が検出された。

昔は神主田や頭家田、竹藪田、寺田があったという村神主さん。

その田で畑作栽培したものを売った年貢で祭礼の費用だてとしていた年貢帳だ。

「座入」は生まれた男児を座入りとして登録したもの。

「名替」は元服のとき、幼名から成人名に名替えをしたものであろう。

古文書には「頭家神事入用覚」があり、八嶋大明神さま祭礼、正徳元年(1711)、二年(1712)、宝永三、四年(1706、7)、七年(1710)の年代が読み取れた。

年代によって異なるが神事に用立てしたものの名前と量が記載されている。

読み取れたものを列記すると、カワラケ六百、飛魚二百、米一石、箸二百膳、酒二斗、カマス八枚、サトイモ百、豆腐三丁、行木(へぎ)二枚、酢、なます、コンニャク、ゴボウ、タコ、大豆、味噌、竹箸、割木、松枝などなどが崇道様には頭屋納め、八王子大明神には神主納めとある。

この順が明治三十年の入用覚では氏神から崇道天皇様の順に替わっている。

どのような理由か定かでないが明らかに氏神さんのほうが先に書かれている。

かつての頭家祭礼は崇道様の祀りごとであったのが、八王子さんの祭礼が加わり近代になってから代表格が入れ替わったのであろう。

それにしても当時の量はものすごい量だ。

箸二百膳や飛魚二百の数量は集まってきた村人の人数分だけ用意したのであろう。

「座入り帳」では天保十四年(1843)、宝暦十二年(1762)、元文年(1736)、宝永元年(1704)、六年(1709)、七年(1710)、享保二年(1712)、元禄十四年(1701)、が確認できた。

宝永六年の記帳からは壱番頭、弐番頭、参番、四番の記載がある。(これ以前は印のみ)

このころから頭家四人は順番が定められたのであろう。

元禄時代の大火に見舞われた田中村。

その前の記録はすべて焼けてしまったと伝わっていものを検証することができた貴重な宮座記録だ。

他にも古文書が存在するので調査には相当時間を要することであろう。

時間が許す限り支援したいものだ。

(H20.10.26 Kiss Digtal N撮影)

終わっていた頭家祭

2009年01月02日 05時35分57秒 | 奈良市へ
村神主のHさんに今日が祭礼だと聞いていた奈良市田中町の頭家祭は都合で先週に終わっていた。

2年前は頭家主だった村神主さん。

当時の写真などを拝見させていただきながら祭礼のお話を伺った。

前日に「崇道さま」と呼ばれる崇道天皇の社を一番頭家子の門口に建てる。

向きは東、または南向き。

芝生を張り杉葉で覆い鳥居を立てる。

頭家祭当日に大きな桶に柳の箸二膳を添えて、素焼きの器に盛った洗米、開きのカマス二尾、サトイモ五個、新ショウガ2房、青豆五粒、お神酒を供える。

町内の氏神さんである八王子神社へは中くらいの桶に入れて供えられる。

柳生から宮司さんを迎えて、呼び使いを受けた七人衆、自治会長、神社係は一番頭家子の家に集まる。

ひといきつけたのち一番頭家児とともに並んだ父親の挨拶口上を受ける。

かつては生まれた順に座入り登録された一番頭家、二番頭家、三番頭家、四番頭家の四人だった。

制度改定で養子も座入りしていた昭和49年ころ、登録順なら生きている間に頭家に当たることが難しいと意見がだされて年齢順に替わったそうだ。

少子化で子どもが少なくなり、村神主さんが頭家を勤められたときは息子さんが一番頭家で、二番頭家はお孫さんが担った。

祟道さまの祭礼には一番頭家が御幣を左右に振る奉幣神事(結崎の糸井神社で見られる奉幣振り神事と同様な)が見られる。

そして、一行はふたりの頭家子が先頭に御幣を持って八王子神社へお渡りをする。

神殿での祭礼でも奉幣神事が執り行われたのちは会所に舞台を移す。

白衣を着用するのは七人衆の4番目にあたる村神主と頭家子。

他の者は礼服になっている。

決められた席に着座すると、頭家子の父親はお神酒を注ぎ、柳の箸でコンブとカマス切り身を紙皿に添えていく。

配膳が整えば父親が接待役となって直会の場となる。

数時間の宴の場を終えた頭家子と父親は太鼓をドンドンドンと打ち鳴らして「座 すんだ」と声をかけて町内を巡回する。

昔はトビウオを村中に配っていたという頭家祭は本来、崇道天皇さまの祭礼で、八王子神社へ参るのは頭家になったことを奉告することが加わったものと考えられる。

(H20.10.26 Kiss Digtal N撮影)