マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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滝本町のイノコ御供

2020年08月09日 09時20分59秒 | 楽しみにしておこうっと
数週間前、写真家SさんがFBに投稿した映像に思わずいいね!を入れた。

とびきりのいいね!である。

映像は5本の竹筒を笛のような形にして並べた何か、である。

他にも束ねる5本竹はあるが、2本組もある。

花を飾っている棚のように見えたそれはいったい何であろうか。

ぱっと頭に閃いたのは山の神である。

ほぼ同型と思われる2本仕立ての竹筒はお神酒入れ。

酒を注ぐ徳利みたいようなものだからお神酒どっくりの名で呼ぶ地域もあれば「ゴンゴ」と呼ぶ地域もある。

私の知る範囲でいえば、地域はいずれであっても該当する行事は山の神である。

ひとつは奈良市柳生町の山脇。

山の口講が供える竹筒は「ゴンゴ」である。

山行きさんが初山に出かける際に供えていた「ゴンゴ」である。

田原の里の史料によれば柳生よりそれほど遠くない奈良市中之庄町にも「ゴンゴ」が登場するようだ。

山の口講と同じように山行きの際であるが、ゴンゴと呼ぶ竹製のお神酒入れを供えて参ると・・。

事例はもう一つある。桜井市白木・北白木のオトサシの前に出かける山の神参り。

山の道具などとともに供える竹筒作りのお神酒入れである。

当地では「ゴンゴ」でもなく「お神酒どっくり」でもなくお神酒入れである。

見聞きした他にも数件の事例があるが、ここではこの2例だけにしておく。

機会があれば祭事場を案内しましょうと云っていたSさん。

紹介者の許可が出たようでこの日に案内をしてもらう。

その場は集落より近いそうだが、急な坂道。

地元民でなければ彷徨う地。

その地の所有者も存じているSさん。

たまたまの遭遇に許可を得て入山する。

しとしと雨が降るこの日。

傘をさしての山行きに靴が滑りやすい。

あそこがそうだという場。

なるほどと思われる御供場である。

刻印の一部に「神前」と読めた灯籠。

寄進者なのかさっぱり判読できない文字である。

Sさんが聞かれた話しによれば、元々はこの場でなく山の上の方に祭っていたようだ。

理由はわからないが、山の上までの行程が難しくなって里に下ろしたという事例はままある。

吉野町小名の事例は地蔵尊であった。

可能性はあるのかどうか確かめようと山登り。

すぐ傍に大岩が数体もある。



この岩の向こう側かもというが、本日の足場では無理がある。

ところどころに見つかる樹木。

葉を見たとたんに同定したSさん。



これは茶の木。

点々、散々の場に自生していることからかつてはこの山が茶畑だったと推定される。



さて、竹製のお神酒入れである。

5本並べて水平にかました竹止め。

巧い造りに感動する。



なるほどと思った固定の方法。

発想が素晴らしい。

紹介者の話しでは山の神ではなく行事名は「イノコ」だという。

(H30.12.26 EOS7D撮影)