
タオイズム(老荘哲学)を信奉する精神異常者が陪審員を脅して、マフィアのボスの評決を無罪にすることを強要して、なお付きまとってくるというお話。
このタオイズムは、インターネットで調べてみてもすぐ理解できるとは限らない。面倒くさくなるので、無視するのがいい。とにかくわけの分からないことを並べて、ややうんざりする。
ユニークな彫刻家で美人、オリヴァーという子供のシングルマザーのアニーがその標的に選ばれる。ハンサムで教養がありお金持ちの会話の上手な男に扮した異常者は、盗聴器を仕掛けて執拗にプレッシャーを掛け続ける。
11人の陪審員を相手に有罪の色濃い空気を無罪にするのは至難の業。いうなれば、オウム真理教の麻原こと松本を無罪に持っていくようなもの。
結果は無罪の評決になるが、そこまでもっていく過程に説得力が感じられない。
古くはヘンリー・フォンダ主演の映画「12人の怒れる男たち」という名作があるが、論理的に説得していく過程がスリリングだった。この本はそれが欠けている印象が強い。だから270頁目から俄然動きが早まり、アニーがどう難局を切り抜けるかという興味で満たされる。
スコット・トゥロー、ザ・タイムズ、パブリッシャーズ・ウィークリーなどの書評が絶賛の言葉を贈っていて、人によっては満足するかもしれない。
ついでながら、ジョージ・ドーズ・グリーンはアイダホ州生れ。アメリカ各地を転々としながら、俳優、建設労働者、新聞記者などの仕事にたずさわった後、ニューヨークへ出て詩を書き始める。
その後、一旦グアテマラに渡り衣料会社を設立するが小説家を志して帰国。苦心の末書き上げた処女作『ケイヴマン』は、ホームレスが主人公という型破りなミステリで1995年のアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀処女長編賞を受賞した。