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第二次世界大戦が終わったモンテカルロの海岸。一人の男が何かに思いを寄せながらタバコを吹かしていた。その男、サロモン・ソロヴィッチ通称サリー(カール・マルコヴィックス)という。偽造パスポートほか偽札作りの名人と言われている。
パリ・ホテルに部屋を取り散髪と新しいスーツで見違える男に変身。カジノのポーカー・ゲームで大金を巻き上げる。一人の女(ドロレス・チャップリン)と目が合い部屋で一夜を過ごす。翌朝、陽光輝くホテルのテラスで過去に思いをめぐらす。
ザクセンハウゼン強制収容所でポンド札の贋造に従事していた。特別待遇を受けたその道のプロ、印刷や絵描き彫師たち。ナチスは贋札で英国の経済を混乱させようと「ベルンヘルト作戦」を画策し実行していた。そして、英国の銀行での鑑定は本物と保証された。
ヒトラー総統の御意に報いて喜びをあらわにするヘルツフォーク親衛隊少佐(デーヴィト・シュトリーゾフ)は、気前がよかった。仲間の中に贋札製造に批判的な男もいた。
「命を賭して正義を貫くべきだ。この作業が終われば我々は殺されるんだぞ!」
「 いや、生きてこそいずれ正義を貫ける。今の銃殺よりあとのガス殺を選ぶよ」とソロヴィッチが言う。
それぞれの苦悶を抱えながら一日一日をやり過ごす毎日。やがてドル札の贋造に取り掛かる。親しくしている美術学校出の若者が結核にかかった。同房の医師から薬のリストをもらい、呼び出しを受けた親衛隊少佐の家に赴き、そこでドル札製造をせっつかれる。
ソロヴィッチはドル札完成と薬の交換を条件として応諾する。完璧なドル札が完成した。しかし、若者は親衛隊兵士によって射殺される。
その兵士は、「感染を防ぐためにやったんだ。お前たちのためにな!」。畜生あの少佐が口外しやがった! とソロヴィッチは悔しがる。やがて連合軍の砲撃音が身近に感じられるようになった。
そんなある夜、ソロヴィッチはドル札を持ち逃げしようとしたヘルツフォーク少佐を追い詰める。こいつのために若者が殺されたんだ!
そしてモンテカルロのカジノ。ポーカーではプロ級の腕を持つソロヴィッチは負けることがない。しからば、ルーレットはどうか。滅多やたらにチップを置きまわる。それでも金が増える一方だった。あの忌まわしいドル札をすべて使い果たそうとしているがうまく行かない。
ソロヴィッチは席を立った。「換金なさいますか?」ディーラーの言葉に「君たちが取っておけよ」
再び夜の海岸。昨夜会った女が言う「不運な人 大金を……」女を抱き寄せ浜辺でタンゴを踊る。女が未練たらしく「あんな大金を……」「金は造れる」波の音と夜風が頬を撫でる。エンディングのナレーションは、「偽ポンド札は、1億3200万造った。英国外貨準備額の4倍だ。ドルを小額に抑えたのは彼らの手柄だ。ベルンハルト作戦は、史上最大の贋造であった」
多分ソロヴィッチは、その後の生涯で偽札は作らなかっただろう。本作は、2007年アカデミー外国語映画賞を受賞している。
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監督
ステファン・ルッォヴィッキー1961年12月オーストリア、ウィーン生まれ。
キャスト
カール・マルコヴィックス1963年8月オーストリア、ウィーン生まれ。
デーヴィト・シュトリーゾフ1973年10月ドイツ生まれ。
ドロレス・チャップリン、チャールズ・チャップリンの孫娘。