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12年もかけて撮ったとは知らないで観ていた。6才のメイソン(エラー・コルトレーン)、メイソンの姉のサマンサ(ローレライ・リクレイター)が5年経っても小さいころの面影が残っていて「よく似た俳優もいるんだ」と思っていた。さらに18歳の高校生になっても面影が消えない。
ママのオリヴィア(パトリシア・アークエット)も体型が太ってきているし、元夫のメイソン・シニア(イーサン・ホーク)も心なしか老けた気がした。あとで分かったのが12年の歳月をかけて同じ俳優を撮ったということ。面影が残るのは当たり前。それにしても息の長い撮影期間だ。
題名通りメイソンが大学入学までの成長と家族を描いてある。こういう映画からアメリカの白人家庭の様子が分かろうというもの。ママのオリヴィアは、男運の悪い女性だ。元夫のメイソン・シニアはアラスカへ行くと言って家を出るし、付き合っていた男とは喧嘩別れするし、2番目の夫はメイソンやサマンサの年代の子連れで自分の意に沿わないと怒り出す。3番目の夫も思いやりにかけているというわけで離婚。
子供の成長は早いものでまたまたく間にガールフレンドやアルコールやマリファナに手を染める。アメリカの若者はこういうのが普通なのか親も大目に見る感じだ。だからメイソン・シニアが、熱心に娘と息子に性教育をする。
やがてメイソンが大学に旅立つ時が来る。オリヴィアが言う
「私の人生で最悪の日」
メイソン「どうして?」
「覚悟してたんだけど、あなた浮かれすぎよ」
「浮かれていないよ。どうしろっての?」
「さあね。あっけない人生だわ。事件と言えば結婚して出産して離婚した。失語症を心配して自転車の乗り方を教えて、そしてまた離婚した。修士号をとり念願の職に就きサマンサとあなたを大学へ出す。次は何があるの? 私の葬式だけよ」
「先走りすぎだ。あと40年は生きる」
「もっと長いかと思っていた」
子供が巣立って自分の自由時間を満喫する予定も、母の手一つで育てた子供との別離は特別の寂寥感に包まれる。親の心子は知らずというが、子は親になって初めて親の心を知ることになる。
で、こういう映画は親の心の一端を垣間見ることができる。子が観て少しは分かってくれればいいとは思うが。いずれにしてもメイソンは、トヨタの中古ピックアップトラックで砂漠の国道を大学へと向かう。車内は軽快な音楽が流れていた。
165分という長尺ものながら、丁寧に撮ったシーンは飽きることがない。母親役のパトリシア・アークエットは、本作でアカデミー助演女優賞を受賞した。熱演だった。
監督のリチャード・リンクレーターは、’11「バーニー/みんなが愛した殺人者」’13「ビフォア・ミッドナイト」など秀作がある。なお、姉のサマンサを演じたのは、監督の娘ローレライ・リクレイターだ。
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監督
リチャード・リンクレーター1960年7月テキサス州ヒューストン生まれ。
キャスト
パトリシア・アークエット1968年4月イリノイ州シカゴ生まれ。
エラー・コルトレーン1994年8月テキサス州オースティン生まれ。
ローレライ・リクレイター1994年5月メキシコ生まれ。
イーサン・ホーク1970年11月テキサス州オースティン生まれ。