「僕はクズだ。わざとクズになって生きてきた。なぜって、僕は今まで誰一人何一つ愛したことがなかった。みんなそれを受け入れていた。でも、君だけは違っていた。君はそうじゃなかった。初めてだった。ありのままの僕を認めてくれた人は、君だけだ。自分を好きになれた。だから…僕には君が必要なんだ。君には僕が」とジェイミー・ランドール(ジェイク・ギレンホール)が言葉を切った。
マギー・マードック(アン・ハサウェイ)はすかさず「必要ない」と応える。「いや必要だよ」とジェイミーが重ねる。
手の震えを自覚するパーキンソン病ステージ1の段階にあるマギーは、いずれ悲惨な最期があることを理解し自分の境遇をいかにやり過ごせばいいのか。クスリでコントロールしながら多くの男と接してきた。セックスに耽溺するのはその瞬間の恍惚に何とも言えない幸せを感じるからだ。持ち前の美貌は、長い時間を与えずに次の恍惚がやってくる。
そんな中で出会ったのがファイザー社の病院回りのセールスマン、ジェイミーだった。このジェイミー、ハンサムで女たらし。病院の事務員にセックスで取り入り薬の売り込みと医師に接近する。
画期的なED薬「バイアグラ」が発売され、発売権を手に入れたジェイミーはファイザー社でトップ・セールスマンになる。シカゴへ栄転がもたらされる。その時思ったのがマギーのこと。割り切った二人の関係だが、ジェイミーの心はマギーにあって「僕たち二人Two of us」を確信する。マギーは最後まで迷惑がかかると拒み続けた。
シカゴへの栄転を諦めたジェイミーの熱意は、マギーの部屋で「何千人と知り合ってもただそれだけ。なのに1人と出会っただけで人生が変わるんだよ。永遠にね」と言わせた。
ジェイク・ギレンホールとアン・ハサウェイは、2005年のアカデミー監督賞受賞の「ブロークバック・マウンテン」以来になるがベッド・シーンはかなり大胆だ。素っ裸で演じていて本当にセックスしているんじゃないかと思ったくらいだ。アン・ハサウェイのオーガズムの表現は、ビックリするほどリアルだった。
映画の中では、「バイアグラ」は市販されている。調べてみるとアメリカでは市販され日本では事故死の関係で医師の処方箋が必要になる。ネットで診断して郵送してくれるサービスもあるから気恥ずかしさもなく安心。心臓に疾患のある方は要注意。
それにしてもいい世の中だよね。高年になってもセックスを諦めないでいいとはね。こういう映画を見ているともう一度若返りたくなる。そういう意味でこの映画、回春剤的効果もありそう。原題「LOVE&OTHER DRUGS」2010年制作
監督
エドワード・ズウィック1952年10月イリノイ州シカゴ生まれ。
キャスト
ジェイク・ギレンホール1980年12月カリフォルニア州ロサンジェルス生まれ。
アン・ハサウェイ1982年11月ニューヨーク、ブルックリン生まれ。2012年「レ・ミゼラブル」でアカデミー助演女優賞受賞。