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世間では王位を捨てたエドワード8世に注目が集まるが、どうして相手の女性ウォリス・シンプソンの視点はないのか。というわけで最悪の映画を選ぶゴールデンラズベリー賞の常連といわれるマドンナが果敢に挑戦した。結論から言うと全く観るに耐えない映画ではない。
単にウォリス・シンプソン(アンドレア・ライズブロー)とエドワード8世(ジェームズ・ダーシー)の恋物語を追っているわけでもない。この二人の物語に重ねるようにウォリー・ウィンスロップ(アビー・コーニッシュ)の運命も共に語られる。
1936年代と現代という時代は違っていても、身勝手な暴力亭主はいるもので、二つの物語は似たような展開を見せる。この映画は、ウォリス・シンプソンからウォリー・ウィンスロップに贈る人生の真理なのかもしれない。
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ちょっと気になったのは、いつでもどこでも男たちはタバコを吸うことだ。場所を選ばずといったところ。1936年代なら仕方のないことだが、現代の場面でも、コーヒーショップで女性を前にして煙を吐き出すとは……。
エドワード8世もやたらタバコを吸う。タバコに火をつけるのは、恐らく音から推測してジッポーのオイル・ライターではないだろうか。このジッポーは、1933年に1500個の生産が最初で以後量産に入るが、エドワード8世は初期の製品を手に入れていたのだろう。
かつてはタバコは小道具として効果的に使われたが、今では鬱陶しい存在でしかない。マドンナがタバコを吸う場面を多用するのは、現状認識に欠けるのかもしれない。ラズベリー賞常連はうなずける。
監督
マドンナ1958年8月ミシガン州デトロイト生まれ。
キャスト
アビー・コーニッシュ1982年8月オーストラリア生まれ。
アンドレア・ライズブロー1981年10月イギリス生まれ。
ジェームズ・ダーシー1975年8月ロンドン生まれ。
オスカー・アイザック1980年1月グァテマラ生まれ。