都市と楽しみ

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絶景、パリ万国博覧会 サン・シモンの鉄の夢(鹿島茂):万博と関係者、都市政策と波及効果など碩学の名著

2022-02-06 02:00:34 | 都市開発

 有名な著作を今頃読むが、碩学の知識の幅広さと深さに驚く。

 万博を時間軸で切る編年やテーマで切る方法で無く、万博を作った神々(人物と歴史)からの観点が面白い。更に、万博の商業化、エンターテインメント化と社会、都市に与えた影響までマクロ的に広がっており面白い。パリ万博は1855年以降8回( https://en.wikipedia.org/wiki/Paris_Exposition  )11年毎を目安に開催された。

 

 知見は:

・第一回国内博覧会(1798年)以降、展示(expose)により品物を売買なしに見ることができる、回遊性、広告、コンクール(金銀銅などメダル)評価とエコール・ポリティック(理工学校)の威光

・1797年、サン=シモンがエコール・ポリティックを招きサロンを開く→産業は富の源泉:新キリスト教として産業資本家の博愛精神と最大の富の生産が、社会の大多数の無産者に幸福を与える、そのためには、鉄道などインフラ整備、銀行なども宗教活動そのもの。産業者(農業、工業、商業)が第一階級、ブルジョワは寄生階級

弟子:サン=マタン・バザール 社会運動家、理論派、現代の神はあらゆる事物に宿る(のちの万博の展示につながる思想)結婚に男女差別なし→後に離教

弟子:プロスペル・アンファンタン 神と世界は同一の実在の2面、自由恋愛→40人の使徒とともに修道院的生活に

ミッシェル・シュヴァリエ:サン=シモン教会の新聞グローブの編集長→秘密結社として1年の禁固→1834年からアメリカに2年、社会の繁栄は工業、農業、商業の発達と鉄道など公共事業、銀行、教育が3要素と理解する→フランス社会の改造プラン:銀行制度の確立と職業教育充実→機械信仰「鉄」につながる

・1848年 ルイ=ナポレオン( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%9D%E3%83%AC%E3%82%AA%E3%83%B33%E4%B8%96 )大統領(オースマンのパリ改造も行う)の君主制(独裁)によりシュヴァリエの鉄道と銀行の設立が現実化し、次は民衆の支持を固める政策のため大掛かりな博覧会のパリ開催→1952年から70年まで皇帝ナポレオン3世

1851年ロンドン万国博覧会 クリスタル・パレス:鉄とガラスのプレファブに衝撃をシュヴァリエは受ける、製鉄工業が必要、従来の石造りではダメ、更に鉄の巨大機械の展示は「物神」(バザールの発想と同じ)、「事物教育」ともなる

ロンドン博は産業博覧会、パリ博は万有博覧会(この世のすべてを展示)で差異化

・1855年パリ万博はプリンス・ナポレオン(従弟)の無能により工事遅れる→大成功入場者516万人(ロンドン博600万人には及ばず、830万フランの赤字)

万博の意義:シュヴァリエの観点

①展示による産業社会の素晴らしさの実感

②展示のコンクール化による開発の推進と労使協調

③世界を知ることによる自由貿易の促進と万国的協同

④分類法による展示で一般科学(哲学)の必要性の理解

・プリンス・ナポレオン(従弟)がパリ万博帝国委員会委員長、万博の実行委員を任されたシュヴァリエ、彼が推輓した経済学者のフレデリック・ル・プレーとモラン将軍が計画推進

・褒賞は競争原理としてシュヴァリエとル・プレーが帝国委員会を組織、委員を選定し権威付け

・展示は「産業社会の構築」として価格明示、民衆用製品の展示、「競争原理」として低価格・高品質、そして流通へデパート・量販店に波及、「自由貿易」の促進・実践、「労使協同」・「職業教育」も狙い労働者インターナショナルへ、テーマの万有は百科全書的サン=シモン主義につながる

・分類法:シュヴァリエら

①原材料の採取・生産(第一次産業)

②機械力の使用

③物理・化学

④専門的職業

⑤鉱物加工産業

⑥繊維加工産業

⑦家具・装飾品、既製服・小間物、産業デザイン、印刷、音楽

展示:外に(ex)、置いて(poser)、展示した(expose)見ることができる、奥から出して触る当時の店舗と違う→これがデパートの発祥につながる

・1867年パリ万博:画期的

同心(楕)円プラン:放射状は同じ国、同心円状は同じジャンルの製品がエッフェル塔のあるシャン・ド・マルスの広大な敷地にクリスタル・パレス9.6万㎡を越える14.6万㎡(約5万坪)楕円の外周は「食」(各国レストラン、カフェ)のゾーン、さらに周辺にはアミューズメントとして公園(池、川、築山、キオスク、パヴィリオン(各国独立展示)、販売、劇場、カフェ・コンセール、パノラマ、ディオラマ、レストラン、写真館、両替所、更にジャルダン(自然公園 水族館と植物園))→要は見世物

②江戸幕府が参加、将軍の名代として昭武を派遣、「水茶屋(柳橋の芸者 かね、すみ、さと)」、味醂酒のお酌、茶も提供、男もいたが不人気、日本コーナーには甲冑も展示

③フランス・ブランドの成立:宝飾・カバン(ヴィトン)・人形が実演方式、銀食器(クリストフル)・ガラス(バカラ)・香水(ゲラン)、民衆用と美術(一番内側)は疲れ切っていたため不人気

④照明(ガス灯)→夜も、暖房→疲労軽減

⑤アミューズメント:水族・植物・動物園、各国パヴィリオン、モデル・ハウス(労働者向け提案)、48mの灯台、各国民族舞踊、

④エクゾチスムとして万国、例 エジプトとラクダ、オリエント→人種博覧会

万博理念の変質:アミューズメント(祝祭)が蹉跌に、以後の万博の展示が変わる→EPCOT Center ( https://en.wikipedia.org/wiki/Epcot )はディズニーが時間と空間を現した、これがまとめになっていると思う

外国人観光客向け、トマス・クック社の団体旅行が始まる→観光都市パリに

 これ以降のパリ万博の事物編も、あとがきには2000年には刊行予定となっているがまだない。読みたいものだ。


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