みみずのしゃっくり

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映像美の極致

2017-06-23 | おきにいり

久々の映画遅報です。今回は超遅報です
映画関係の遅報については「これから」とそのリンクや「メルヘン王」をご覧ください。

あれこれ考えごとをしていたとき、突然、思い出したのです

それは、私がこれまで見た中で最も美しい映像美の世界でした
アンドレイ・タルコフスキー監督「僕の村は戦場だった」

ロシア語原題は「イワンの少年時代」、他の主要言語も全て「イワンの少年時代」、更に中国語も「伊凡的少年時代」です。
日本で何かの折に1回見て深い印象を受け、ウィーンでソ連およびロシア映画の特集があったとき、もう1度見ました。このとき、映像の美しさに感動して泣いてしまったのですが、一緒に見に行った友達は多分、イワンの悲劇に泣いていると思ったことでしょう。
反戦映画でありながら、ソ連のプロパガンダ映画ではなく、白黒映画でなければ描けない美しさが画面に満ち溢れています。これがソ連映画かなと、ちょっと不思議に思いましたが、やはりタルコフスキーは亡命しました。


画面をクリックすると断り書きが出てきますがYouTubeで見るをクリックすると、夫々のシーンが見られます。


白樺林の中のシーン



従軍看護婦のマーシャにホーリン大尉が強引に接吻するシーンですが、詩情豊かです。

イワンの処刑場面は出てきません。ソ連軍が占領した戦後のベルリンで、ソ連軍将校が捕虜収容所の書類を調べています。「銃殺」「絞首刑」「銃殺」「絞首刑」と読み上げていくうち、イワンの顔写真が出てきます。確か銃殺だったと思うのですが、2回しか見ていないので記憶は不確かです。
この場面で、もうひとつ印象的なのは、これまでビロードのようなロシア語が聞こえてきた中に、突然、硬質なドイツ語が混ざることです。夫々の言語の「色彩」が際立って、聴覚的にも美しいのでした。


そして、イワンが妹や友達と遊ぶシーンが最後を飾ります。「戦争が無ければ、こうだったのに」という訴えだと思います。





戦争に巻き込まれて家族を失い、ドイツ軍を憎み、少年であることを利用して前線の伝令として働き、結局ドイツ軍に処刑されるイワンの運命は、今になってみると、イスラエル軍に親を殺されたパレスチナの少年の姿を重ねることもできます。こうした少年がイスラエル軍兵士に投石したり、あるいは若者になって自爆テロリストになったりするのでしょう。「悲嘆-憎悪-復讐」の連鎖を終わらせることは難しいですが、これしか解決の道は無いだろうと思います。


「イワン」のDVDはアマゾンでも扱っていますが、残り1点となっています。
名画なのであるいはブルーレイになるかもしれません

その後、タルコフスキーの「ノスタルジア」も見ましたが「イワン」よりもっと悲しい映画でした。
ラストシーンからタルコフスキーの孤独感が観客席に溢れ出てくるようでした。

ヴィスコンティの「ヴェニスに死す」や「ルードヴィヒ」などは、むしろ絢爛豪華というべきでしょうか?