ドナウの水草刈りは定期的に行われているそうですが、温暖化の影響と昨年7月の洪水(市街地への被害は無し)で、旧ドナウに繁茂していた水草が新ドナウにまで広がってきたのだそうです。
何が問題かというと、水泳やボート遊びで水草が邪魔になるのです。水草がオールに絡まったり、泳ぐ人が足を取られたり危険です。
それで、草刈りボートの運転ができる人が全て動員され、大規模な草刈り続行中。
治水工事のサクセスストーリー
ウィーンの
ドナウ川には「旧ドナウ」と「新ドナウ」と「ドナウ旧流」があります。
それ以前にはドナウ本流と幾つかの傍流があるだけでしたが、毎年洪水があるため、わざわざ「洪水地域」が設けられていました。下の写真の中央が「洪水地域」です。
ウィーンの南東から北西方向を見たところ
この広大な「河川敷」は洪水のないときには市民によってスポーツ・散策に利用されていました。
洪水問題の最終的解決のため1969年に新水路(新ドナウ)の造成が決定され、1972年から大規模な工事が始まりました。
ドナウの隣に新水路を造成することで、旧ドナウと新ドナウの間に細長い中州(
ドナウインゼル)が生まれました。
ウィーン北側の山から南を見たところ
手前が旧ドナウ、中州(ドナウインゼル)の向こう側が新ドナウです。旧ドナウは内陸河川交通の重要な水路で多くの船舶が航行するため保養&レクリエーション・ゾーンとはなりませんが、新ドナウは水がきれいなので水泳もできます。
南東から見た新旧ドナウ
右側の水が青い水路が新ドナウです。
では、ドナウ旧流はどこかと言うと、ドナウ川が多くの傍流をもっていた頃の傍流のひとつを保存したものです。
左の写真がドナウ旧流の様子。右の略図は左から旧ドナウ、ドナウインゼル、新ドナウ、弧を描いているのがドナウ旧流です。
ドナウの新水路造成については自然破壊・環境破壊だという強い反対意見もあったそうですが、実際に新ドナウとドナウインゼルが出来てから、増水期には新ドナウが余分な水量を受け入れ、ドナウインゼルには180万本の木や灌木が植えられ緑豊かな保養ゾーンとなりました。中央部分は公園として整備されていますが、北側の三分の一、南側の三分の一は自然保護区域で、珍しい鳥、両生類、魚が生息しています。
ヨーロッパで2番目に長いドナウ川は、世界で最も国籍の多い(最も多くの国々を流れる)大河です。