フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

2月13日(火) 晴れ

2007-02-14 04:09:20 | Weblog
  8時起床。朝食をとらずに家を出る。1月中旬に受けた人間ドックでひっかかる項目があったため、午前中に戸塚ロイヤルクリニックで胃カメラの検査を受ける。胃カメラの検査を受けるのはこれで5、6回目になるが、何度やってもなかなか慣れない。飲み込む前から、飲み込むときのことを想像して、「オエッ」となってしまい、医者から「まだ何もしていませんが」と呆れられる。しかし人間というには、単なる現実に反応するのではなくて、想像された現実に反応する動物なのである。この「オエッ」は想像妊娠によるつわりのようなものである。いったん内視鏡の尖端が喉を通過してしまえば、あとはそんなに苦しくない。実質的な検査時間は3分ほどであった。「問題ありませんね」ということでホッとしたが、二次検査は有料で、6500円を支払う。
  空腹だったが、喉の麻酔がちゃんと切れるまで1時間ほど食事はできないので、研究室で雑用をいくつか片づけてから、「志乃原」に野菜天せいろを食べに行く。本日の一番乗りの客だったが、二番目の客は社会学専修の同僚の和田先生だった。ここにはよく来られるらしい。私は蕎麦は「五郎八」で食べることがほとんどだが、今日は食事の後に古本屋を見て回るつもりでいたので、こちらに来たしだい。野菜天せいろは「五郎八」にはないメニューで、「志乃原」に来たときはたいていこれを注文する。茄子、人参、薩摩芋の天ぷらが2個ずつ、計6個ついてくる。本来はおむすび(具は梅干し)も一個ついてくるのだが、いつも「けっこうですから」と断っている。
  安藤書店で『広津和郎全集』全13巻を購入。19,000円也。安藤書店の特色は美本が多いこと。古本は汚れているからイヤだと思っている人がいたら、ぜひ安藤書店に来るとよい。古本のイメージが一変すること間違いない。13冊を7冊と6冊に分けてビニール袋に入れてもらい、もって帰ろうとすると、ご主人が「これから神田に行くところだから」と言って、7冊の方の袋を持って、一緒に馬場下の交差点まで歩いて下さった。道々いろいろ話を伺った。「昔は学生もこういう全集ものを買ってくれたものだが、いまでは先生方しか買ってくれません。全集ものはいま買い時なんですがねえ・・・。でも、大学院の学生さんで一人、たくさん本を買ってくれる女の子がいる。あの子はきっといい研究者になるでしょう。」聞いているこっちまでなんだか嬉しくなってきた。研究室に戻ってテーブルの上に一冊一冊丁寧に包装された『広津和郎全集』を並べみた。包装紙は安藤書店のオリジナルである。

      

  1時から大学院の委員会。始まる前に教員ロビーで西洋史学の小倉先生に声をかけれられる。「先生のブログを拝見しました」と言われて、びっくり。あれこれ感想を述べていただき、どうもほめられているような気がしたが、この3月で御定年(70歳)を迎えられる碩学の目に、50をちょっと越えたばかりの「若僧」が好き勝手なこと書いている文章がどのように映っているのか、考えるだに恐ろしく、身の縮む思いである。「清水幾太郎という人は私にとっても気になる人物なのです」とおっしゃって、清水の文章に鼓舞されて60年安保闘争に学生として参加されたお話をしてくださった。そして「清水さんのあの人目を引く立ち居振る舞いは、私が思うに、東京高校の校風というものと関係があるのではないでしょうか」という仮説を述べられた(清水は伝統ある一高ではなく、新設の東京高等学校に進学し、その一期生となった)。ふむ、ふむ、ノートに書き留めておくことにしよう。
  大学院の委員会は1時間足らずで終わり、シャノアールで読書をしてから、帰る。途中、神楽坂で下車し、坂道を飯田橋まで歩いた。TVドラマ『拝啓、父上様』のテーマソングが流れている。相馬屋で200字詰の原稿用紙(昔は半ペラといった)を購入。

          

          

  丸善丸の内店に寄り、以下の本を購入。

  アイヴァー・グッドソンほか『ライフヒストリーの教育学』(昭和社)
  船津衛編『感情社会学の展開』(北樹出版)
  R.Cohen & P.Kennedy, Global Sociology(second edition), 2007,Palgrave
  A.Giddens, Modernity and Self-Identity,1991,Polity

  本当は本だけでなく、ある文房具も購入したのだが、また文房具の話かと呆れられそうなので(家族はすでに呆れている)、また今度ということで。足が疲れてきたので、店内のカフェでオレンジフロートを飲んで一服。オレンジジュースもソフトクリームも上等で、750円もするだけのことはあると思った。