8時、起床。寒い。この冬の寒さの底らしい。
コンビニにパンを買いに出たときに郵便受けを見たら、メール便で2週間前に受診した人間ドックの結果が届いていた。届くのは明日か明後日あたりだろうと思っていたので、ドキッとする。たぶん何もないだろうとは思ってはいても、それを確認するまでは不安である。封筒から取り出して、レポートの最後の総合所見から先に見る。うん、とくに問題はないようである。もちろんまったく問題がないわけではなくて、胃に軽度の異常(萎縮性胃炎)や、胆嚢ポリープ、胆石、脂肪肝、腎のう胞などが指摘されている。ただし、これらはほぼ毎回指摘されること(要経過観察)である。体脂肪率が去年より2.6ポイント増えている。体重は変らないのに体脂肪率は増えているということは、運動不足で体脂肪が増えて筋肉が落ちているということを意味するだろう。このところずっとジムをさぼっていて、体重コントロールは食事だけでやっている。これから春先にかけて体を動かそうと思う。バタートースト、マカロニサラダ、紅茶の朝食。
11時過ぎに家を出て、鶯谷に墓参りに行く。本当に今日は風が冷たい。墓参りの後に上野辺りを散歩するつもりでいたが、やめた方がよさそうである。こんな日に墓参りに来る人はいないだろうと思っていたが、実際、私だけだった。母が腕を骨折したため今日は来られないことを告げると、大奥さんも「私もです」と言って、左手首の包帯を示した。自転車が転倒しそうになるのを片手で無理して支えたときに折れてしまったのだそうだ。年を取ると本当に骨折がめずらしいことではなくなる。
墓参りを済ませ、昼食を寺の近所の「河金」でとることにした。この店は知る人ぞ知るとんかつの店で、カツカレー(河金丼)が有名である。母を連れては入りにくいが、今日のように一人のときは気楽である。外観だけでなく、店の中もレトロなムードがいっぱいだ。カツカレーは丼に入っている。ご飯の上にキャベツを敷いて、そこに切ったカツを置いて、上からカレーをかけてある。カレーはコクがあってまろやかな和風テイスト。揚げる前にトントン叩かれた肉は柔らかで、衣はサクッと揚がっている。卓上のとんかつソースをかけて食べる。
入谷の駅から地下鉄(日比谷線)に乗って2つ目の仲御徒町で降りて、上野広小路の甘味処「みはし」に行く。デザートを食べるつもりで入ったのだが、メニューを見ていて、おでん茶飯が食べたくなって、注文する。河金丼が思ったほどのボリュームではなかったせいで、お腹に余裕があったのと、数日前に観た『孤独のグルメ』の静岡おでんの印象が頭の中に残っていたからである。甘味処のご飯というのは小腹が空いたときにちょうどよいボリューム(軽く一膳)。でも、おでんはネタの数がしっかりとあって、さすがにお腹いっぱいになった。食後の甘味はこの店名物の小倉アイスをのせたあんみつ。小倉アイスとこしあんの甘さがかぶってしまった感じで、あんみつではなく、みつまめでよかったかもしれない。店内はほぼ満席だったが、近くの席の年配の男女4人客の中の男性が、「こういう店には男ひとりでは入れないからなあ」とはしゃいでいた。そう言われて改めて他のテーブルを見回してみると、男の一人客は私だけだった。いや、それ以前に、一人客は私だけだった。上野千鶴子さんの本のタイトル、『男おひとりさま道』が頭に浮かぶ。「おひとりさま」であることに抵抗がないのは、老後の生活に適応していくためにはよいことである。女性の領域(たとえば甘味)と世間からみなされている場所に足を踏み入れることに抵抗がないことも同じ。よかった、社会学をやっていて。
夜、『大鹿村騒動記』をDVDで観る。原田芳雄の遺作。でも、彼の演技にはそうした悲愴なものは感じられなかった。単純に面白い映画として観た。ラスト、忌野清志郎の歌う「太陽の当たる場所」が流れた。いい曲だ。原田芳雄も忌野清志郎ももういないのだなと思って聞くと、いっそう心に染みた。