フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

8月30日(日) 雨、降ったり止んだり

2015-09-02 02:31:21 | Weblog

7時半、起床。

昨夜は早くに寝たが、途中で二度目が覚めた。一度目は0時前後で、たぶん風邪気味といことで厚着をしすぎて寝たために寝苦しくて目が覚めたのだと思う。直前まで見ていた夢は警察に追われている夢である。どんな犯罪を犯したのは定かでない。殺人かもしれないし、窃盗(教会の銀の燭台を盗んだとか)かもしれない。目覚めのときの気分はひどく悪く、セータを抜いで(セータを来て寝ていたのだ)、毛布を取って(毛布を掛けて寝ていたのだ)、寝直したら気分は徐々に回復した。二度目は3時頃である。安楽亭の柱時計は「ボーン、ボーン」と鳴るタイプのもので、その音で目が覚めたのかもしれない。気分はすっかり回復していた。ロフトに寝ていたので、雨の音がよく聞こえた。しばらく雨の音を聞いていて、次に目が覚めたのが7時過ぎだった。

「まれ」を見ながらの朝食。野菜と果物たっぷりの安楽亭の朝食である。今回もお世話になりました。

Kに車で茅野駅まで送ってもらい、9時8分のあずさ1号に乗って、松本へ向かう。30分ほどで到着。

駅の近くのニュー・ステーション・ホテルに荷物を預けて、街に出る。

女鳥羽川を渡って、大手町と呼ばれる辺りを歩く。城下町で大手町(大手門前の一帯)といえばかつては中心地だったはずだが、商店街(六九通り)はさびれている。でも、この寂れ具合が旅人にはいいのだ。

あの建物はなんだろう?

後で知ったのだが、廃墟になったデパートとのこと。廃墟好きにはたまらないが、安全上問題はないのだろうか。

六九通りを抜けると、観光客で賑わう縄手通りに出る。

賑わうとはいっても雨の午前中であるから観光客はまだ少ない。

縄手通りの途中には四柱神社がある。参拝していこう。

ちょうど結婚式が行われていた。

結婚式といえば、昨日はゼミ一期生のナホさんの結婚式だった。私はビデオで出演し、お祝いを述べた。そのビデオは7月29日にナホさんの結婚相手であるフユキ君が一期のゼミ長だったサオリさんに伴われて研究室にやって来て撮ったものである。私からのビデオレターは新郎が新婦のために考えたサプライズの演出だったので、当日のことはブログには書けなかったが(サオリさんが一人で研究室に遊びに来たように書いた)、ようやく真実を語ることができる。

そのビデオレターにはちょっと芝居がかったもので、フユキ君が私に「ナホのことを覚えていますか?」と質問し、私が「覚えていますかどころではありません。彼女のことを忘れたことはただの一日もありませんよ。その証拠に、ほら」と言いいながら、デスクの上の写真立を示すとそこにはナホさんの写真が入っていて、パソコンデデスクの上の別の写真立てにも彼女の写真が入っていて、さらに本棚のから抜き取ったゼミでテキストに使用した本にも彼女の写真が挟まれれているという仕掛けなのである(笑)。

ナホさんから届いたお礼のメール。

 大久保先生
 こんにちは。昨日、無事に結婚式を挙げることができました。F4の余興や新郎サプライズムービーに、大久保先生がたくさん出てきてくださってすごく嬉しかったです。本当にありがとうございました。天気は曇りでしたが、挙式の後外に出て全員で風船を飛ばしました。曇り空に消えていく風船を眺めていたら、曇りもいい天気だなあ、と思えました。先生のあの詩の通りですね。

「先生のあの詩」とは、ジョン・ラスキンの「雲」という詩で、教え子の結婚式でスピーチを頼まれたときによく朗読する。

  世の中の人は今日はよい天気だ

  また、悪い天気だ、などというが、

  天気によいも悪いもありはしない

  みなよい天気ばかりである

  種類が違うだけなのだ

  晴れた よい天気

  雨の降る よい天気

  風の吹く よい天気

  という違いがあるだけ

2人で仲良く見上げれば、なおのこと、どんな天気もよい天気である。だから仲良くね。

  仲良きことは美しきかな  by 武者小路実篤

四柱神社の女鳥羽川の向かいのレストラン「おきな堂」で一服。 

今日一日の行動スケジュールを考える。

中通りを歩く。ここはクラフトのお店が軒を連ねている。

松本民芸家具のショールーム。明日、放送大学時代の同僚の坂井先生と松本民芸の工房にお邪魔する予定なので、下調べをしておこう。

「キャベ」という遊牧民の絨毯とのコラボの展示会を開催中だ。

松本民芸家具の特徴は、イギリスのウィンザーチェストを手本にして、国産のミズメザクラ(カバ科の落葉樹で別名「梓」)を用いて、手塗りのラッカー仕上げを施したもので、一目でそれとわかる形と色をしている。

私が今日一番惹かれたのは、このサイドテーブル付のアームチェアである。特注品で、20万円ちょっとする。

木工と陶器の店「グレイン・ノート」。

ここの木工作家のご主人にも明日話をうかがいに来る予定であるが、それとは関係なく、私は松本に来たときに必ず立ち寄る店の一つである。

私がこの店で買うのはもっぱら陶器、研究室で使うティーポットやティーカップである。以前買ってお気に入りのティーポットの蓋を落として割ってしまい、しかし、本体は無事なので、使っているのだが、蓋がないとどうにも様にならない(お茶を煎れるときは急須の蓋を代用品として使っている)。女主人にその話をすると、近々作家さん(田中一光氏)が来るので、相談してみましょうといってくださった。作品は一つ一つ手作りだが、もしかしたら、本体が壊れて蓋だけ残っていることもあるかもしれませんからと。よろしくお願いします。

「グレイン・ノート椅子展」は9月19日(土)から27日(日)まで開催される。

ギャラリー「コトコト」に顔を出す。ここも必ず立ち寄る店。

ご主人が見込んだ新人作家の作品を中心に展示している。

入って右手の壁に樋勝棚巳さんのリトグラフが掛かっている。その「フラフープ」という作品が一目見て気に入ったので、購入することにした。大学宛てに送ってもらう。いま、研究室の壁には樋勝さんの「ターザン」という作品を掛けてあるので、これが2作目である。 

ヤンヤンさんは刺繍作家。今日はたまたま在廊されていた。去年の夏に来た時も、たまたま彼女がいらして、そのときはお店の片隅で作品を制作されていた。彼女のお父様も早稲田大学のご出身とか。たぶんご縁があるのだ。

かわいらしい刺繍のほどこされたポーチを2つ購入。青い布の方が「スライディングガール」、生成の布の方が「大切な一杯」という名前が付いている。「スライディングガール」は今夏の甲子園大会を見て、作りたくなったそうである。滑り込みセーフ!という感じだろうか。原稿の執筆もかくありたいものである。

彼女は普段は東京で活動している。毎月一回、幡ヶ谷の「カネタベーカリー」というパンカフェで(そこが休みの日に)作品を展示しているそうだ。具体的には、9月14日、10月19日、11月23日、12月7日の12:00~15:00である。いずれも月曜日だが、11月23日は祭日なので、会社勤めの人もいけるだろう。私の名前を言ってくれれば、素敵な笑顔で迎えてくれるはずである(たぶん)。

中通りの先は朝日通り商店街。

「キッチン南海」。早稲田や神保町にある「キッチン南海」と何らかのつながりがあるのだろう。入ってみたい気がしたが、昼食はこれから「ガルガ」で食べるつもりなので、我慢して通り過ぎる。

「カフラス」の敷地の周りに鉄板が立っている。解体されるのだろか。風情のある建物だったが・・・。

道路を挟んで向かいの土地は空き地になっている。大規模な再開発が計画されているのだろうか。

「ガルガ」を目指して歩く。

深志神社のそばの「ガルガ」も必ず顔を出すギャラリーカフェである。

蔵の一階はカフェ。過去にギャラリーで展示会をやった作家さんたちの作品が売られている。これを眺めるだけでも楽しい。

カレー(中)を注文。「SKIPA」のチキンカレーを彷彿とさせる。

デザートは本日のきまぐれスイーツ(紅茶のチーズケーキ)とコーヒー。スイーツもここではアートである。美しくて、美味しい。

蔵の二階には河西美和さんの作品が展示されている。「vapor trail,『いろんな線』」というタイトルが付いている。

vapor trail とは飛行機雲のことである。

  ひとすじの飛行機雲に夏終わる  たかじ

左側の壁に掛かっているバッグを購入。鞄に丸めて入れておけば、本を何冊も買ったときに便利だろう。

「ガルガ」のご主人作のピンバッジも来店の記念に購入。

松本市立美術館は「ガルガ」とは目と鼻の先である。ここにも松本に来たときはたいてい立ち寄る。

松本出身の草間の作品は常設展示がされている。

彼女の作品を「かわいい」という人が多いが、本当にそう思っているのだろうかといつも疑問に思う。とりあえず、「気持ち悪い」「不気味だ」というのが普通の感覚ではなかろうか。もっとも「気持ち悪い」と「かわいい」を併せた「きもかわいい」という言葉があるから、女子たちにとっては、「かわいい」はいろいろな感情を包み込む上位概念あるいは包括概念なのかもしれない。

う~む、やっぱり気持ち悪いんですけど。

おそらく草間本人だって気持ち悪かったのではないだろうか。しかし、それから逃げるのではなく、それを正視することで、存在論的な不安を克服しようとしていたのではないだろうか。そのとき不安は生や性と表裏一体のものであった。

篠山紀信展「写真力」は彼の初めての本格的な回顧展とのこと。

ジョン・レノンとオノ・ヨーコがキスをしているこの写真は今回の展示会のポスターとして松本の街のあちらこちらに貼られている。まるで、「みんな、キスしよう!」と呼びかけているみたいに。そういう訴求力を写真は持っているというのが今回のテーマの意味である。

有名人のポートレイトが中心だが、私が一番惹かれたのは女優満島ひかりの少女時代の写真だった。

企画展と常設展を観終わって、館内でしばし休憩。

再び朝日通り、そして中通りへ。

「ちきりや工藝店」もお馴染みの場所である。

前回はガラス器を購入したが、今回はテーブルマットを購入。

午後5時。夕食にはまだ早いので、「まるも」で一服。松本で一番有名なカフェだろう。

ここで使われているテーブルとイスはすべて松本民芸家具である。気分が落ち着くはずである。

さて、夕食を食べることにしよう。

今日の夕食は「竹風堂」で食べることに決めていた。

山里定食。栗おこわと山菜と味噌汁のヘルシーな食事である。よく歩き回るせいもあるが、旅をして太って帰って来るということはあまりない。旅先での暴飲暴食は「旅の恥はかきすて」的行為であり、恥ずべきことであると思っている。美味しいものを食べて、かつ太らないこと。それは人生のモットーの1つである。

外に出ると仲通りは夕闇の中である。時刻は午後7時になるとしている。

ホテルに入る。

大浴場で今日一日の疲れをとる。大浴場があることがホテルを決める際の大きな条件である。部屋付の小さなバスタブでは旅行気分に浸れない。

下戸の私は夜の街に飲みに出かけるということはない。コンビニで買ってきたかっぱえびせん、アーモンドチョコレート、そして水が就寝までの友である。そんなものを食べていたら痩せないだろうって? はい、痩せようとは考えていません。太らなければいいんです。

12時、就寝。