フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

9月6日(日) 曇りのち雨

2015-09-07 13:59:06 | Weblog

8時、起床。

ドイツ在住の卒業生のユミさん(論系ゼミ一期生、2011年卒)から メールが届いた。彼女はいまドルトムントのサッカークラブ(香川真司が所属している)で日本からの観戦ツアーのガイドのアルバイトをしているのだが、その写真が添付されていた。この日のお客様は少年サッカーチームのようである。「少年たちのキラキラした瞳は私にいつも力を与えてくれます。」と書かれていた。

日本語ガイド付スタジアムツアーについては→こちら

メールへの対応も彼女の担当とのことである。

今日は2か月に一度の句会の日。句会は12時からだが、9時半に家を出て(朝食はとらず)、10時半に神楽坂に到着。句会の会場である「SKIPA」の隣のカフェ「トンボロ」で卒業生のF君(一文、2007年卒)と会う。先日、彼から面会したいというメールをもらい、句会の前に会うことにしたのである。

F君も朝食はとらずにやってきたそうで、二人ともトーストとコーヒーの朝食。

F君と会うのは卒業以来だから7年半ぶりである。いま公務員をしている。先日もらったメールには拙著『日常生活の探究』(左右社)にサインが欲しいと書いてあったが、もちろんそれだけが面会の目的ではないだろうと思っていたが、やはりそうで、11月に同じ職場の女性と結婚式をあげることになり、その結婚披露宴に出ていただけないでしょうか(乾杯とスピーチ)と言われた。卒業生の結婚式・披露宴に呼ばれることはときどきあるが、ほとんどが女性の卒業生で、男性の卒業生は早稲田大学での一番最初の教え子である高瀬君(弘前大学准教授)以来2人目である。手帳でその日が空いていることを確認し、「わかりました。出ましょう」と答える。F君は卒業以来ブランクのある自分がこういうお願いをして応じてもらえるものだろうかと不安だったようだが、慶事に関する依頼はスケジュールが合えば引き受けるというのが私のスタンスである。卒業後の付き合いの濃淡は問わない。

披露宴には調査実習で同じクラスだったO君も出席するとのこと。彼もF君と同じく公務員である。そのときのクラスには昨年の3月に29歳で亡くなったMさんもいた。Mさんもやはり公務員であった。彼女が亡くなったことは私のブログを通して両君も知っている。若くても人は死ぬのだ。したいことは先延ばしにしない方がいいし、会いたい人がいれば「いつかのそうち」ではなく自分から連絡をとって会った方がいい。F君が私に連絡をしてきたのもいろいろと考えるところがあってのことだろう。

そろそろ句会の時間だ。実は、今日の参加者の一人、書道家の恵美子さんもF君と同じ調査実習のクラスの学生である。しかもF君と同じ「ブログ班」というサブグループでブログを使った自己呈示の在り方について分析していた(彼女自身がいまもブログを続けているのはそのとき参与観察として始めたブログの延長線上にある)。恵美子さんにF君を引き合わせる。彼女は最初、「えっ?」という顔をしていたが、すぐに「F君!」とわかり、びっくりしていた。たぶんF君は学生時代とそれほどイメージは変わっていない。変わったのは恵美子さんの方であるから、F君の方こそびっくりしてもよいはずだが、恵美子さんはしばしば私のブログに登場しているのでその変貌ぶりをF君はすでに知っていたのだろう。あるいは内心はびっくりしていたのかもしれないが、動揺を外に現さないというのがF君らしいところなのかもしれない。

本日の句会は出席者8名の予定であったが、低郎さんが体調不良で欠席となり、7名。ただし、低郎さんの句も選句の対象である24句に入っている。

私は次の3句を選んだ。

 天(5点)  鍵探すポケット多し秋来たる

 地(3点)  折り紙のどんぐり作り方忘れ

 人(1点)  お盆明け通勤途中の向かい風

さて、全員の集計の結果は・・・・

特選(15点)  鍵探すポケット多し秋来たる  あゆみ

私と蚕豆さんが天、恵美子さんが地、小原さん(今日初参加なのでまだ俳号はなし)と京さんが人を付けた。出席者7名中5人が選んだ(本人は自分の句は選べない)文句なしの特選句である。意味は平明にして調べも素直、それでいて初句「鍵探す」の効果で、小さな躍動感がある。おそらくこのまま新聞の俳句蘭に投稿しても入選するのではなかろうか。

2位(13点)  噴水の何心無く止まる五時  あゆみ

これもあゆみさんの句。もうビギナーズラックとは言わせまい。あゆみさんが本領を発揮してきた。噴水が出た瞬間ではなく、止まった瞬間を詠んだところがいい。出た瞬間は誰でもハッとするが、止まった瞬間もやはりハッとするのである。そのとき時計を見たら午後5時。噴水があたかも今日の仕事を定時で止めたかのようである。恵美子さんと小原さんが天、京さんが地を付けた。私がこの句を選ばなかったのは「何心無く」という言葉は推敲不足であると思ったからである。主宰の紀本さんもこの言葉は浮いていると評していた。

3位(6点)  やや家族小さな旅館の里祭り  紀本直美

蚕豆さんと小原さんが地を付けた。「やや家族」の意味をめぐって感想が述べられた。アットホームな旅館で宿泊客たちが家族のような(疑似家族的な)雰囲気を醸し出していたということのようである。面白い表現だが、やや無理があるように私には感じられた。

4位(5点)  初嵐かわし続ける古紙のあり  あゆみ

京さんが天を付けた。京さんは選んだ3句がすべてあゆみさんの作品だった。選ぶ時点では作者は伏せられているから、よほどあゆさんの作風が京さんを魅了してということであろう。「ファンクラブの会長にならせていただきます」と言っていた。感想で面白かったのは、小原さんが「あり」を「蟻」と誤解していたこと。風に飛ばされまいと古紙の表面に必死でしがみついてる蟻を連想したのである。でも、俳句の観賞にあっては、そういう誤読もありかもしれない(笑)。

4位(5点)  紙魚(しみ)ひとり紙背の海を浮き沈み  蚕豆

紀本さんが天を付けた。今回の兼題は「紙」であったが、それが二つ入っている。虫好きで本好きの蚕豆さんならではの句であるが、草間彌生的な気持ち悪さを感じる。

4位(5点)  野外飯いとど飛び乗る紙の皿  低郎

あゆみさんが天を付けた。私は「いとど」がカマドウマの別名とは知らず、古語の「いとど」(はなはだしい様子)だと思って、一体何がたくさん飛び乗るのだろうと首をかしげたが、そうか、カマドウマなのか・・・。これもけっこう気持ち悪いが、実は、天を付けたあゆみさんも「いとど」が虫だとは知らなかったのである。知って、「キャー」と言っていた(笑)。誤解が生んだ天である。

7位(4点)  折り紙のどんぐり作り方忘れ  紀本直美

私が地、蚕豆さんが人を付けた。句会の始まる前に紀本さんが「最近もの忘れがひどくて・・・」とぼやいたので、ああ、これは紀本さんの句だなと思ったが、やはりそうだった(笑)。

8位(3点)  夏が別れの挨拶に来てくれた  たかじ

私の句。あゆみさんが地を付けてくれた。投句の締め切りだった9月2日は久しぶりの夏の青空であった。何の挨拶もなしに去ってしまうのかと思っていたが、やっぱり律儀に別れの挨拶に来てくれたのだという嬉しい気持ちを自由律で詠んだ。

8位(3点)  カステラの紙で占う豊の秋  恵美子

紀本さんが地を付けた。私には意味不明な句であったが、解説を聞くと、子供の頃カステラを食べるとき(いただきものの文明堂のカステラだろうか)、カステラの底の薄紙を剥がすとき、そこにカステラのザラメの部分が付着しているのを食べるのが楽しみで、たくさん付着していると「いいことがある」サインだったらしい。なるほどね(笑)。

以下、1点を獲得した句は、

 ヒグラシと入道雲とリグレット  小原

 風鈴と思いをまるて紙つぶて  小原

 お盆明け通勤途中の向かい風  小原

 眺むれば晩夏光降る九十九里  低郎

初参加の小原さんは1点ながら全部の句が入選したのは立派。あなたの句をいいと思った人がいたということですから。

選評が終わって食事会。

次回は11月15日(日)。兼題は「口」と決まる。

特選と2位を独占したあゆみさん。いまの喜びをポースで表現してください。

「やったー!」

「生きていてよかったー!」

そ、そんなに嬉しいんだ・・・。天を付けた甲斐がありました(笑)。

そこへ現れたのが彼女の夫のポテトさん(もちろん仮名です)。名前からはジャガイモみたいな方なのかと想像していたが、会ってみるとキュウリみたいな方だった。所沢の人間科学部で助教をされている。今日は所沢の自宅で留守番をしていたが、これからフットサルに出かけるので、娘さん(まるちゃん)の世話をあゆみさんにバトンタッチしに来たのである。

愛娘のまるちゃんを抱いたあゆみさん。彼女は短歌もやっていて、そちらではもっぱら子育ての気持ちを詠んでいるようである。

蒲田に戻り、「phono kafe」にちょっと顔を出す。

昨日食べて美味しかったコリンキーとひじきの胡桃ソースと小豆茶を注文。

夕方から、雨の中、妻と娘を連れて「パン日和あをや」へ食事に行く。矢向に付いた頃が一番雨脚が強かった。

お店に着く頃には小降りになっていた。

先日から遅い夏休みをとって12月の公演の脚本書きをしている娘は眉毛がなくなっていた。剃ったのではなく、抜いたのだそうだ。こ、こわいぞ。それは脚本を執筆するため家に閉じこもる(外には恥ずかしくて出られない)ようにするためなのか? いえ、昨日の夜はこれで観劇に出かけたけど。そ、そうか。

さて、何を注文しようか。

まずは冷たい飲み物。私と娘は8月のドリンクだった自家製ジンジャエール。妻は9月のドリンクであるグレープフルーツと紅茶のセパレートティー。

本日のスープはピーナツかぼちゃの暖かなポタージュ。

サーモンのサンドウィッチ。

ロースハムとチーズのホットサンドウィッチ。

ベーコン、レタス、トマト(B.L.T)のサンドウィッチ。

デザートは洋梨のクリームチーズフラン。

私と娘はコーヒー。妻は紅茶。

ごちそうさまでした。

チェスの駒のキングを模ったカエル(?)がこの店のゆるキャラらしい。

9月23日(水)から10月11日(日)まで、店内で中谷日出子さんという作家さんの展示会が開かれる予定。次回はその頃に来ますね。

夜の道を矢向まで歩く。