9時、起床。
トースト、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。
松本旅行の土産の「シェ・モモ」のキウイ&パイナップルのコンフィチュールを使う。
お昼に自宅を出て、早稲田へ。今日は1時から「カフェゴト―」で句会(第35回)がある。
早稲田の駅を出たところのファミマ&吉野家の前で卒業生のトモミさん(論系ゼミ6期生)とバッタリ会う。お互い、びっくりする。
「これからカフェ・ゴトーで句会があるんだ」
「早稲田に住んでいる友達のところへ行くところです」
彼女と会うのは(後からブログで調べたら)2016年の10月末以来だから、およそ3年ぶりである。少しの間の立ち話だったが、彼女の近況を聴いた。へぇ、そうなの(笑)。そろそろ秋学期の授業も始まるので、どうぞ仕事終わりにでも研究室に顔を出して下さい。ゆっくり話をしましょう。
立ち話をしているわれわれの前を「カフェ・ゴト―」へ向かう紀本さんが歩いて行く。
今日の句会(第35回)の出席者は7名。主宰の紀本さん、関西(芦屋)から法事で東京に来られた渺(びょう)さん月白さんご夫妻、出産後10カ月で久しぶりの参加の萬笑(ばんしょう)さん、出産2ヶ月の恵美子さん、私、そして今回が初参加の娘の立夏(敬称略)である。初参加の人がいる場合は全員が自己紹介をする。娘は私より一足先に「カフェゴト―」に到着したが、何もいわなくても私の娘であるとわかったようである。
各自がドリンクとケーキを注文。
私はタルトタタンとアイスアップルティーの林檎コンビ。「リンダ・リンダ」ならぬ「リンゴ・リンゴ」だ。
さて、本日の作品は集まった7名に、投句参加の蚕豆さんとまゆこさんの作品を加えて、27句。まゆこさんは選句にも遠隔参加。 選句は各自が天(5点)1句、地(3点)2句、人(1点)2句の計5句を選ぶ。
私が選んだのは以下の5句。
天 図書館は夕立の底我は魚
地 書初めの大志消えても床の染み
地 台風がさらう憂いや月曜日
人 本日は図書館休館秋刀魚食う
人 青稲穂風の形を示しおり
全員が選句の結果を発表し、点数を集計した結果は以下の通り(作者は講評の後に明かされた)。
15点 現世には用のない蝉だっている 立夏
立夏の句。渺さんと恵美子さんが天、紀本さんが地、月白さんとまゆこさんが人を付けた。ビギナーズラックで今回の特選句となった。蝉が一生の最後の7日間を地中から出て地上で過ごすのは生殖のためだが、そういうつもりはさらさらない蝉だっている、というシニカルな句である。選者の感想を聞いていたら、中には、この句を蝉の側からではなく現世(世間)の側から見て、社会にとって無用な蝉(人間)もいると解釈したものもあった。
11点 図書館は夕立の底我は魚 渺
私とまゆこさんが天、恵美子さんが人を付けた。図書館というのは独特の空間である。知識と静寂。それが夕立ちの中で、まるで海の底に沈んでいるような感じ。恵美子さんはこの魚は動き回っていると見たが、私は深海魚のようにじっとしていると見た。この「我」は傘がないのかもしれない。あるいは調べものが終らないのかもしれない。だから図書館を出られずにいるのだ。
10点 栗ごはんただのひまつぶしからの愛 紀本
立夏が天、萬笑さんが地、渺さんと月白さんが人を付けた。私は「栗ごはん」でいったん切れると見た。ひまつぶしで栗ごはんを作っているわけではない。栗ごはんを作りながら(あるいは食べながら)、この人とはほんの暇つぶしのつもりでつきあいはじめたのだったなぁ、それが・・・という気持ちを詠んだ句である。もしも食べているのが栗ごはんではなく鰻飯であったら、「ひつまぶしひまつぶしからの愛」となるところだった。
9点 書留をどこで出すのか月に聞く 紀本
萬笑さんが天、渺さんが地、立夏が人を付けた。私はこの句を読んで、夜に書留を出すなら本局に行くしかあるまいという感想しかなかった。しかし、いまの若い人は書留というものがどんなものかそもそも知らない人がいるらしいと知って驚く。ノートに書き留めておこう。
8点 靴裏に紅葉ひとひら深夜二時 まゆこ
月白さんが天、萬笑さんが地を付けた。月白さんは「深夜二時」に惹かれたようである。「昼下がり」とかではダメなのだ。ここは「深夜二時」でなくてはならないと。ここには犯罪の匂いがする。たとえば山中に死体を埋めて、深夜に家に帰ったら、靴裏に紅葉の葉が張り付いていて、あとからそれで足が付くのだろう。
7点 秋虹や淡しスマホを下ろしけり まゆこ
月白さんと立夏が地、萬笑さんが人を付けた。「淡し」が秋虹そのものをさすのか、スマホの画面(写真)に写る秋虹をさすのかで解釈が分かれたが、私は前者。理由は「淡し」が終止形だからである。もしスマホ(の画面)の方にかかるなら「淡き」となっていなくてはならないだろう。「秋虹や淡し」だからスマホのカメラではよく撮れないので、撮るのをあきらめたという句である。
6点 書初めの大志消えても床の染み 立夏
月白さんと私が地を付けた(もちろん私はこれが娘の作品であるとは知らなかった。インサイダーではありません)。句の意味はよくわかる。ただし、この句の問題は、「書初め」(「書初」と表記するのが俳句では一般的)が形式上の季語にはなっているものの、そこから時間が経過しているわけでから、この句を読んでいるときの季節が不明で、実質的には無季の句になっている点である。
5点 墓洗う縺(もつ)れる足もご満足 蚕豆
紀本さんが天を付けた。紀本さんの実家は広島の呉で、坂が多く、お墓も坂の上にあって、そこまでいくのが一苦労らしい。そういう実体験がないとなかなか選べない句であろう。ところで「ご満足」しているのは誰なのだろう。墓参りをしている人なのか、墓を洗ってもらっている人(仏)なのか。
4点 思い出し笑いエダマメ一つ剥く 月白
立夏が地、まゆこさんが人を付けた。この感覚は女性独特のものではないかと思う。「エダマメ」は「枝豆」、「一つ」は「ひとつ」と書いた方がよいのではないかという指摘があった。声に出して読めば同じだが、見た目、字面的にはその方がよいと思う。「思い出し笑い枝豆ひとつ剥く」。
4点 本日は図書館休館秋刀魚食う 萬笑
紀本さんが地、私が人を付けた。何と言っても「図書館休館」のリズムがいい。昔、「虫刺されにはキンカン」のCMソングに、「ミカンキンカン酒の燗嫁御(よめご)持たせにゃ働かん」という歌詞があった。語呂がいいので、子ども心にも記憶に残っている。それに倣えば「秋刀魚食う」は「秋刀魚缶」となるだろうか(意味は分かりにくいですが。
4点 日付のみ書きのこされて鰯雲 まゆこ
渺さんが地、立夏が人を付けた。二人とも「意味はよくわからないけど、なんとなく惹かれるものがある」という感想を述べた。私もこの作品には何となく惹かれた。でも、私の場合は、意味のよくわからない作品は採らない。多くの場合、それは推敲不足が原因だと思うからである。
4点 台風がさらう憂いや月曜日 立夏
私が地、萬笑さんが人を付けた。先日の月曜日に関東地方を襲った台風(私は松本にいて体験しなかった)。非日常的な状況がいつもの月曜日の憂鬱(ブルーマンデー)を払拭したということである。ちなみに立夏はその日、出勤途上に池袋で立ち往生して、駅の近くのカフェで2時間を過ごした。これはそのときに作った句である。
4点 夏草のプラットホーム国老いぬ 渺
恵美子さんが地、紀本さんが人を付けた。地方の無人駅の風景である。恵美子さんはこの句から芭蕉の「夏草や兵どもが夢の跡」を連想した。私は杜甫の「国破れて山河在り 城春にして草木深し」を連想した。
4点 青稲穂風の形を示しおり 萬笑
まゆこさんが地、私が人を付けた。風は目には見えない。だから風を詠むときは風になびく事物を詠むことになる。この作品では青い稲穂がそれである。端正で美しい句だと思う。
3点 遠雷や名付けられない気持ち在り 月白
まゆこさんが地を付けた。若い頃、立松和平の小説が原作の『遠雷』(1981)という映画を見たことがある。その中で殺人事件が起こるのであるが、そこからの連想で、この句の「名付けられない気持ち」は「殺意」ではないかと思った。「あり」ではなく「在り」としたところにその思いの重みがある。
3点 定年後書痙の夏を友とする 蚕豆
恵美子さんが地を付けた。作者がわかった後で、「彼はフリーランスの編集者だから定年は経験したことがないよね」と渺さんが言った。実体験ではなくてイマジネーションで作った句であるということ。ちなみに私は定年退職まであと5年半ありますが、この夏は書痙を経験しました。字を書き続けて(キーボードで打ち続けて)いると指が震えたり、痛みが走ったりするのです。
2点 過ぎゆくは書きたきことのありし夏 たかじ
私の句。渺さんと恵美子さんから人をいただいた。個人的な意味は原稿に明け暮れた夏であったということだが、一般に読まれる場合は、書き残しておきたい出来事のあった夏だったというふに解釈されるだろう。それでよい。
1点 雲の峰包囲されたる城下町 たかじ
最後も私の句。紀本さんから人をいただいた。松本旅行のときの句である。こんな感じだった。「写真と俳句」は相性がいい。どちらも「世界を切り取る」ものだから。
次回の句会は11月17日(日)午後1時から「カフェゴト―」で。兼題は「白」(特選句の作者立夏が出題した)。
句会の後、紀本さん、渺さん、月白さん、立夏、私は「タビビトの木」へ。
私と立夏は昼食がまだだったのでカオマンガイを注文。
カオマンガイは海南鶏飯あるいは海南風チキンライスともいう。茹でた鶏とその茹で汁で炊いたご飯である。それだけだとあっさりしているが、お好みでナンプラーやニンニクをかけて食べる。海南とあるとおり、東南アジアの沿岸地域に広まっている料理である。
セットのドリンクはアイスカフェオレをチョイス。
「タビビトの木」には1時間ほど滞在。店を出て紀本さんと話す立夏。今日は楽しかったようである。立夏は短歌の心得はあるが、俳句は初めて作ったそうだ。なので最初は短歌をもっと短くしたものが俳句だと考えたようだが、しかし、それでは表現したいことが表現できない。俳句は短歌(57577)の上の句(575)とは違うもので、短歌を作るときとは心構え(基本原理)が違うのだということに思い至ったようである。
月白さんとのツーショット。
後ろ姿もダンディーな渺さん。
二人はこれから5時の新幹線で芦屋のご自宅に戻る。次にお会いできるのはいつかしら。
蒲田に戻ってきたのは5時半。
夕食は7時半。
妻がどこぞやのパン屋でバケットを買ってきたのでこれを夕食に食べようということになった。
パンには何が合うだろうと考えて、クリームシチューになった。下の句が先に決まって後から上の句ができたようなものである。
クリームシチューだけだと単調かもしれないので、タラコのペーストとツナマヨネーズを添えた。
それとサラダ。
デザートは梨。
さて、原稿書きだ。
4時、就寝。