フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

3月21日(日) 雨

2021-03-22 16:37:25 | Weblog

8時半、起床。

今日は終日雨の予報が出ている。風も吹くらしい。庭先の桜の見ごろは今日で終わりそうである。

桜にばかり目を奪われていたが、海棠も見ごろを迎えている。

下向きに咲いている点は熱川桜と同じだが、こちらは花弁がもっとしっかりしているから、今日の雨風で散ってしまうことはないだろうと思う。

トースト、ソーセージ&エッグ、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。

『桑田佳祐のやさしい夜遊び』をタイムフリーで聴きながら、昨日のブログを書いてアップする。

午後1時から隔月で開催している「いろは句会」(オンライン)。今回は第42回である。単純計算すると年6回であるから、もう丸7年続いていることになる。

今日の参加者(zoom)は7名。

画面の上段左側から、月白さん、私(たかじ)、主宰の紀本さん

中段左から、恵美子さん、さやかさん(選句のみ)、萬笑さん

下段は渺さん

今回の作品は30句。その前半15句。

読みも併記しておくので、わからない言葉があったら(けっこうあると思う)調べられたい。

後半15句。〇や✖が目に付くのは、今回の兼題が「丸・マル・〇」だからである。

読み方。

選句は一人5句。天(5点)1句、地(3点)2句、人(1点)2句である。

私は次の5句を選んだ(今回はかなり悩んだ)。

 天 〇✖をつけず保留の春の恋

 地 雪柳揺れさざめくは侍女の群れ

 地 鬼やらい打ち捨てられし聴診器

 人 なんとなく新生活です春爛漫

 人 風丸く光も丸くミモザ咲く

時節柄、明るく軽い作品を選んだように思う。

全員の選句の結果、以下の通り入選句が決まった。今回は票が分散した。

 10点(特選) 旅立ちの布団袋に春一番 あやこ

今回の特選句はあやこさんの作品。紀本さんとさやかさんが「天」を付けた。難解なところの何一つない句である。あえて一ついえば、この布団袋はすでに布団が入っているのか、いないのかということであるが、たぶん後者であろう。だから春一番に大きくたなびいているのであろう。風をいっぱいに受けて進む船の帆のように。あやこさんはzoomには参加していないが、投句の際の説明によると、娘さんの引っ越しを手伝ったときのことがモチーフになっているそうである。以前、私は「この街を離れんとして春の風」という句を詠んだことがある。大学の近くの「maruharu」というサンドウィッチのお店が閉まるとき店主のはるさんに贈った惜別の句である。新しい生活の始まりと春風というものは相性がよいようだ。

 9点 別人となりし母の手春寒し 月白

萬笑さんが「天」を付けた。「別人となりし母の手」というのは病気をされたのか、もしかして臨終の場面なのかと想像してしまったが、作者が月白さんと知って、施設に入られたお母さまを見舞ったときの句とわかった。季語「春寒し」との取り合わせは近すぎる(そのまま過ぎる)ように感じた。もっと中立的な、あるいは対照的な季語の方がよかったように思う。たとえば「春浅し」とか「春の服」とか。

 8点 辛丑(かのとうし)黄の初蝶に出会いたし 花

渺さんが「天」を付けた。2021年の干支は「辛丑」である。他の干支同様、60年に一度めぐってくる(ゆえに60歳を「還暦」という)。高浜虚子に「初蝶来何色と問ふ黄と答ふ」という句がある。モンシロチョウはなくモンキチョウなのである。たんにリズムからいって「白」よりも「黄」の方がよいというだけでなく、「幸せの黄色いハンカチ」ではないけれども、「白」よりも「黄」の方が気分を明るくしてくれるように思う。

 8点 〇✖をつけず保留の春の恋 月白

私が「天」を付けた。作者の説明によると、最初は「就活」をモチーフに作ろうとしたのだが、「恋活」に変えたという。私はこの句からいま流行の(というよりも広く普及し定着した)マッチングアプリを連想した。アプリに登録するとたくさん連絡が入る。その中からピンと来た相手とメールでのやりとりが始まり、さらにその中から「会ってもいいかな」と思える人と会う、という段取りを踏むわけだが、早々に一人の相手に絞り込むわけではなく、数人はキープ(保留)しておくというのは一種の生存戦戦略である。

 8点 人の子の群れその先に蛙の子 萬笑

蚕豆さんが「天」を付けた。「蛙の子」はオタマジャクシのことだろう。私はこの句を見たときに作者はたぶん萬笑さんだろうと思った(当たっていた)。なぜかというと、「その先に」という言葉で、近景と中景(遠景)を作品の中に取り込んで空間的な奥行きをもたせるという技法を彼女は好むからである。以前の句会のときの「しゃぼん玉ねこの小径の先の先」という彼女の句を私は覚えていた(選句した)のである。

 7点 益荒男のツーブロックや蝶とまる 犬茶房

私は誤解をしていた。「ツーブロック」が髪型(段差が出るような髪型)だということを知らなかったのである。男性がスーツの肩に蝶が止まっているのに気づかずにそのまま銀座通りをツーブロックほど歩いている情景を思い浮かべたのである。それはそれでいいんじゃなかとも思う。

 6点 雪原に五目並べの〇と✖ 蚕豆

蚕豆さんは旭川在住なので、季節感が東京や関西のメンバーとは違うということがわかる。「◯✖」という遊びがある。ノートに井桁「井」を書いてその中に交互に◯と✖を描いて縦横斜めに◯あるいは✖が三つ並んだ方が勝ちというゲームである。先手有利だが、後手がうっかりしない限り、たいてい引き分け(勝負付かず)に終わる。しかし、この句に描かれているのは、「◯✖」ではなく「五目並べ」である。長い戦いになりそうである。

 6点 仙涯の〇は右側春うらら 花

私は誤解をしていた。「仙涯」を中央アルプスにある山「仙涯嶺」のことだと思ったのである。その尾根の片側は傾斜が緩やか(◯)だが左側は危険(✖)という標識が立っている情景を思い浮かべた。しかし、この句の「仙涯」(「仙崖」と表記するのが正しいようである)は江戸時代の禅僧(画家)仙厓義梵のことで、彼の有名な作品にこういうものがあるのである。

 5点 切りかえて背筋伸ばせよ花辛夷(はなこぶし) 月白

 「背筋伸ばせよ」と花咲く辛夷の木にに呼び掛けているわけでない。自分自身に言っているのである。月白さんは物事を引きずって負の連鎖に陥りやすい性格だという(本人談)。ほんとですか! 人は見かけによらないものである。

 5点 曇り日の底に深紅のシクラメン たかじ

私の句。渺さんから「地」、蚕豆さんと萬笑さんから「人」をいただいたい。紀本さんからは「底に」が効いているという評をいただいた。「曇り日」と「深紅のシクラメン」だけでは平面的な色彩の対比にとどまるが、「底に」を加えることで、構図が立体的になる。「深紅」の「深」と共鳴して「深海の底」のようなイメージを生むだろう。曇天の日、玄関先のシクラメンを詠んだ写生句である。

 5点 龍のごと鯉跳ねて澄む春霞 萬笑

月白さんが「天」を付けた。豪華絢爛、錦絵のような作品である。

 4点 丸く盛る炒飯くずす山わらう 恵美子

昔、街の中華屋さんで出てくるチャーハンは大きなプリンの型ようなものを使っていた。いまはピラフのようなものが多いように思う。残念なことである。「山わらう(ふ)」との取り合わせは、「くずす」と反応して「山崩れ」のイメージを生む。

 3点 雪柳揺れさざめくは侍女の群れ 渺

私が選句(地)した。いまの時期、雪柳をよく見かける。たくさんの細い枝が風に揺れ動くさまを「侍女の群れ」とは言いえて妙である。きっとわがままなお姫様に仕えているのだろう。

 3点 丸善の檸檬のような夜のこぶし 萬笑

梶井基次郎の小説「檸檬」をモチーフにした作品。「ボン!」と音がしそうである。

 3点 風丸く光も丸くミモザ咲く 渺

兼題「丸」を使った作品。「丸を使って」と思うからこそ、「風」や「光」を「丸い」と形容することが可能になるのである。そうでなければ「やわらか」あたりで済ますところである。

 3点 紅白の梅のまじってかくれんぼ 紀本直美

背景にもよるけれども、一般に白梅の方が紅梅よりも目立つものである。まして白梅と紅梅が混じっているときはなおさらである。句の意味としては、かくれているのは紅梅の方である。

 3点 東北忌人の時間と原子の時と 渺

俳句では俳人や文人の忌日を季語としている。たとえば太宰治の命日(6月19日)を「桜桃忌」(太宰忌)というように。「東北忌」は個人ではなく東日本大震災(3月11日)で亡くなった人たちの集合的な忌日を季語としたものであるが、これには賛否両論あるようである。

 3点 鬼やらい打ち捨てられし聴診器 蚕豆

私が選句(地)した。「鬼やらい」は節分の豆まき(鬼は外!)の起源となった儀式で平安時代は大みそかにやっていたそうである。それにしても「打ち捨てられし聴診器」はシュールである。どういう状況を詠んだのか作者に問い合わせたところ、「医療崩壊です」との返事あり。

 1点 うららかにゾンビは叫ぶ昼下がり 犬茶房

あまり視聴率はよくないようだが『君と世界が終わる日に』というゾンビもののドラマをやっている。ゾンビはコロナの比喩なのだろうか。

 1点 なんとなく新生活です春爛漫 紀本直美

私が選句(人)した。先日、紀本さんとオンライン句会のURLの件でLINEでやりとりしていたとき、彼女が「4月から新生活です」と言ったので、「えっ?新生活?!」と尋ねたら、「新しいパソコンを買ったのでzoom頑張ります」とのことだった。なんだパソコンか(笑)。

 1点 雛あられ契らじ産まじ吾(あ)もかじり 犬茶房

結婚もしない、出産もしない自分も雛あられを食べているという句。自虐と諧謔がブレンドされている。

 1点 鬱鬱としていたとして百千鳥 恵美子

「鬱々とした気分でいたとしても(人間界とは関係なく)鳥たちは鳴く(自然界は独自の動きをする)」という意味らしい。

 1点 無人バス真冬の街を直進す 蚕豆

私は誤解していた。「無人バス」は「客の乗っていないバス」の意味らしい。私は本当の「無人バス」(運転手も乗っていない自動制御のバス)のことかと思った。「無人トラクター」はすでに実用化されているが、バスもそうなのかと驚いた次第。

次回の句会は5月16日(日)と決まる。

句会を終えて、雨の中、、昼食を食べに「プリミエールカフェ」へ行く。

ミートソースのスパゲティセットを注文する。

コーヒーと、

トーストとサラダが付く。

時刻は3時半。遅い昼食である。

食事を終え、お替りのコーヒーを飲みながら、昨日買った『将棋世界』4月号に目を通す。

「スリック」にも顔を出す。

時間はまだ4時半だったが、「CLOSED」の札が出ている。この雨でお客さんが少なかったのだろう。引き返そうとしたら、私に気づいたマダムが店の外に飛び出してきて、「先生、戻ってきて!」(シェーン、カンバック!)と叫んだ。

今日は全然お客さんが来なくて、テイクアウトが一人だけだったそうだ。つまりイートインの客は私が本日最初。昨日は猛烈に忙しかったそうだから、天候次第でずいぶん違う。キャラメルバナナのシフォンサンドを注文して、お茶はそれに合ったものをお任せで。ディルマ(紅茶会社)のエレガントアールグレーをチョイスして下さった。

キャラメルバナナは三度目だろうか。

支払いのとき、千円札+五百円硬貨を出そうしたら、私の財布をのぞいたマダムが「先生、小銭をたくさんお持ちですね」と言った。

五百円硬貨を引っ込めて、小銭をかき集めて、ぴったりで支払いをする。

雨はまだ降っている。

昨日をもって店仕舞した「ティースプーン」の前を通る。

我が家の桜は今日の雨でだいぶ散ってしまった。

部屋で『山下達郎のサンデーソングブック』をタイムフリーで聴く。

夕食は炒飯、薩摩揚、サラダ、ミョウガとかきたま汁。

デザートはデコポン。

食事をしながら『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』第8話(録画)を観る。あれこれのドラマが今週で最終回を迎える中、あと残り2回ある。始まったのが遅かったのと、地震で一回飛ばされてしまったからである。

9時から『天国と地獄~サイコな2人~』最終回をライブで観る。いつものように録画で翌日見ると、SNSなどで結末がわかってしまうかもしれないからである。最後、そうきましたか。

近所をウォーキング&ジョギング(2.5キロ)。

風呂から出て、『山下達郎のサンデーソングブック』をもう一度聴きながら、今日の日記とブログ(写真)。

2時、就寝。