8時半、起床。
トースト、カレー、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。
10時半に妻と出かける。近所の専門学校の桜はまだ一部咲き程度。
江古田(西武池袋線)に行く。今日は「ソルティー・ロック」という劇団の芝居を観るのだ。「獣の仕業」と親交のある劇団で、立夏と小林龍二が客演で出るのだ。
駅の北口前には浅間神社がある。
江古田市場通りという昔からの商店街がある。
「マザーグース」という名前の手作りパンの店。
なんだか懐かしいものを見かけた。あんこ+バターのつけコッペパンとカレーパンを購入。甘辛の組み合わせだが、買ってから朝食にカレーを食べたことに気づく。つけコッペは街を見物しながら食べた。
会場は「フライング・ティーポット」というカフェ。
地下にある。 今日は貸切だ。
私たちが一番乗りの客だった。
このカウンターとその前のスペースが舞台になる。われわれが座ったテーブルはおそらく特等席だ。
開演前の時間に昼食を食べる。まい泉の「玉手箱」という和洋折衷のお弁当。
珈琲を注文。
アイスジンジャエールも。
12時15分開演。今回の公演のタイトルは「Life's Like a Lovestory」。30分から45分程度の芝居5本立てだ。途中での出入りは自由だが、われわれは5本を通しで観た。
「邂逅」 潤職・演出:松本真菜美 出演:神野剛志・松本真菜美
サン・デグジュベリの『星の王子様』は王子様がいくつもの星を旅して地球にやってくる話だが、「邂逅」は王子様が尋ねた5番目の星の話が元になっている(「潤色」とは原作=犬井ねここの脚色にさらなるアレンジを加えたということだろう)。そこは小さな星で住民は一人しかいない。彼はガス灯の点灯夫、日暮れにガス灯を点け、夜明けにガス灯を消すという作業を毎日繰り返している。一体、何のために、ということは深く考えないようにしているようだ。何しろ彼は点灯夫なのだから。その星に少年がやってくる。少年は自分の星の話を点灯夫にする。少年はガス灯のことを「街灯」と呼ぶ。点灯夫はそれは街灯ではなくガス灯だという。なぜならここには自分の他に住人はいない(街はない)からだという。少年は「でも、いまは僕もいるから街灯だ」と言う。少年との会話は点灯夫の心にポッと火を点した。ハートウォーミングなそういう話。朗読劇で、目を閉じて聞いていると、ラジオドラマのようである。しかし、目を開けると、そこに2人の俳優がテーブルを挟んで向かい合って座って、台本を読んでいる。アニメの録音現場に立ち会っているような感じだ。私の横にいる点灯夫役の神野剛志の表情はわからないが、斜め向かいにいる少年役の松本真菜美の生き生きとした表情はよく見える。彼女は今日はこの他に二本の芝居に出ていたが、この少年役が一番のハマり役に思えた。
「Life's Like a Lovestory」 演出:犬井ねここ 出演:三好康司・小林カナ・伊織夏生・松本真奈美・野崎涼子
今回の公演の表題作に当たる芝居。自殺サイトで知り合った5人の女たち。その1人の結婚式が今日あった。結婚式に出た3人の女たちが、式には仕事の都合で出られなかった女が雇われ店長をしているカフェバーにやってくる。4人には墓場まで持って行くべき秘密があった。それは結婚した女のどうしようもない元カレを4人がチームプレーで殺害したことである(結婚した女はそのことを知らない。元カレはある日を境に自分の前から突然姿を消したのだ)。4人の中の悪酔いした女の言動から、結婚した女はその秘密を知ってしまう。しかし、彼女は元カレが失踪前に自分にくれたメールがあるという。「お前の友だちたちはみんないかれている。もう二度と俺に近づくな」という内容のメールだった。彼は死んではいなかったのだ。殺人という呪縛から解放された女たち。しかし、3人の女が酔いつぶれて寝た後に、雇われ店長の女は結婚した女に言う。あのメールは殺した男のケータイから私が送ったものだと。そういうサスペンスタッチの女の友情物語。「女」の一人を演じていた客演の三好康司(劇団MAHOROBA+α)の演技が光っていた。
「カフェ・石焼芋」 演出:犬井ねここ 出演:あンな邦祐・神野剛志・まついゆか・小林龍二
そこはあまり客の来ないカフェだった。終日、オーナーの「ボス」とマスターの「板長」とメイドの3人が口喧嘩のような無駄話をしている。店の前を通ったサラリーマンがメイドに店内に引っ張り込まれる。彼は彼女の住んでいたアパートのところまで行ってみようと、途中下車をして、商店街を歩いていたところだった。彼女との思い出を語るサラリーマン。実は、彼、ついその先の交差点で車にはねられて病院に運ばれ、いま、生死の境をさまよっているところなのである。そう、このカフェは、この世とあの世の間にあって、ちょと一服しながら、人生を振り返る場所なのである。是枝裕和監督の映画『ワンダフルライフ』を思わせる仕掛けである。あの映画では死者は人生の一番素晴らしい思い出を語り、それだけを記憶にとどめて、あの世へ旅立つのであるが、ここでは、生と死の間をさまよう人がどちらかを選ぶのである。メイドは戻ることを選ばなかった人なのである(ボスと板長もそうなのかもしれない)。しかしサラリーマンは戻ることを選ぶ。「いま来た道をちゃんと戻るんだよ」と彼らはサラリーマンを送り出す。そしてまた口喧嘩のような無駄なばしに興じるのである。そういうファンタジックな物語。サラリーマンを演じた客演の小林龍二(劇団獣の仕業)は、昨年12月の劇団獣の仕業の公演「THE BEAST」でもサラリーマンを演じていたが、すっかりサラリーマン役が板に付いてきた。サラリーマンとは現代の都市生活者の典型である。salty rockの男優たち(ボスと板長)の濃い顔の間で、その頼りなさげな表情が一層際立っていた。
「まなづるとダアリヤ」 原作:宮沢賢治 演出:犬井ねここ 出演:まついゆか
フリーの役者まついっゆかの一人芝居。ひとつ前の芝居でメイドを演じた彼女が、一転して、美貌の衰えに怯える女の心情を熱演していた。スッピンからケバイ化粧まで、いかにも「女優」という感じだった。
「キツネ」 原案・漫画:戸田誠二 演出:立夏 出演:小林カナ・松本真奈美・立夏・野崎涼子
売れない漫画家志望の女を主人公にした原作コミックを、設定を役者志望の女にして、立夏(劇団獣の仕業)が脚本と演出をした作品。彼女は「THE BEAST」で10年の間に自身が主催する劇団を去って行った者たちへのレクイエムのような物語を書いたが、「キツネ」でも演劇をやめようかどうしようかと悩みながら頑張っている役者を主人公にした物語を書いた(エンディングで俳優たちが踊りながら舞台からはける演出はsalty rockの流儀にならったものかしら。ちょっと恥ずかしかった)。主役の小林カナはそのギリギリ感を見事に演じ得ていた。彼女の守護神のようなキツネを演じた野崎涼子はとてもキュートだったが、彼女は終演後、ツイッターでつぶやいていた、「私が「可愛い」のは、もう私は知っているので、そろそろ本気で「可愛い」以外のものを装備したいのです。 「(あざと)可愛い」「可愛い(幼い)」「可愛い(違うとは言わせない)」は持ち玉としてあるのです。それだけになるのはゴメンなのです。 「強い」とか「エグい」とか「やばい」とか何か。」
salty rockという劇団は面白い。また機会が合ったら観てみたい。
写真は小林龍二のツイッターから拝借した。後列左から、伊織夏生(犬井ねここ)、(一人おいて)小林龍二、三好康司、小林カナ、松本真奈美、野崎涼子。前列左から、立夏、あンな邦祐、(一人おいて)神野剛志、まついゆか。
江古田に来たときは必ず立ち寄る「ぐすたふ珈琲」。
午後6時閉店だが、最後の客として立ち寄って行こう。
客はわれわれだけだった。カウンターに座る。
お冷が美味しい。
ロアブレンド(浅炒り)を注文。
私たちの後にもう一組、常連らしい客が入ってきた。
蒲田に戻ってきて、「Zoot」で食事をしてから帰ることにする。
チャーシューと味玉付 とろりとした魚介系のスープ。
8時前に帰宅。近くの外灯でわが家の桜がライトアップされている。
卒業生のサキさん(論系ゼミ3期生)から無事出産の知らせて届いた。20日に出産、今日退院とのこと。一週間くらいは入院するものと思っていたが、すこぶる安産だったようである。女の子で名前は「美桜」(みお)。お誕生おめでとう。
これからしばらく教え子の出産が続く。平成最後の子どもたちであり、新元号最初の子どもたちである。
2時半、就寝。